#18_水循環の全体像 - 「水利用→水処理」から見える課題の地図

前回は、沖縄県が流域下水道にウォーターPPPを導入する動きを取り上げた。人口減少や人手不足といった構造的な制約に対して、県がどのように現実的な打ち手を講じているのかを見てきた。

一方で、こうした個別の事例を追いながら感じるのは、「自分たちが見ているのは、水の循環のほんの一部にすぎない」ということ。山に降った雨がダムや地下に蓄えられ、浄水場を経て私たちの生活を支え、やがて下水道を通じて再び自然へ還っていく。個別の課題を考えるときこそ、こうしたマクロな視点を持つことを忘れないようにしたい。

今回は、この大きな流れを「水循環基本法」で示されたマクロな視点から見直し、その中でも 「水利用 → 水処理」 に焦点をあてて、これまで注目してきた論点がどこに位置しているのかを整理してみたい。


マクロなサイクルで見る「水循環基本法」の語る世界

これまでのブログでは、八潮市の道路陥没事故を起点に、下水管路や人材不足、PPPの導入など「現場の課題」を掘り下げてきた。今回は一度、空から全体を見渡してみたい。

日本には2014年に制定された「水循環基本法」がある。この法律は、降った雨が山にしみこみ、河川を流れ、私たちの生活で使われ、再び下水として戻っていくという「水の循環全体を一体的に守り、活かしていこう」という理念を定めたもの。

背景にあるのは、水を「資源」ではなく「循環する命」としてとらえ直そうという発想。これまでバラバラに管理されてきた水道・下水道・農業用水・河川・地下水を、国として俯瞰し、連携させていくための「基本ルール」として位置づけられている。

出典:内閣官房水循環政策本部事務局HP
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/mizu_junkan/about/basic_law.html

その全体サイクルの中で、私がこれまで注目してきたのは「水利用 → 水処理」の領域となる。

マクロなサイクルと「水利用→水処理」の位置づけ

水のサイクルをあらためて整理するとこうなる。

降水 → 貯水(ダム・地下水) → 浸透 → 河川流出 →水利用(上水・産業利用・農業利用など) →水処理(下水・生活排水処理) → 河川へ還流 → 蒸発 → 雲 → 降雨

国土交通省が公開している水資源開発基本計画に関係する資料の中でこの図が上手く表現されているので紹介したい(小さいけど、、、)。

出典:リスク管理型の水の安定供給に向けた 水資源開発基本計画のあり方について 平成29年5月 国土審議会

この中で「水利用 → 水処理」は、まさに人間社会の活動のど真ん中に位置している。ダムや地下水から取水された水は、都道府県や市町村の水道事業を通じて浄水され、家庭や産業で使われたあと、下水道事業によって整備された下水管や処理場を経て水処理され、再び自然へと戻される。

私のブログは、まさにこの区間、「“取水から利用・処理・放流までのプロセス」の中で生じる課題と挑戦について書いてきた。もし先ほどの国交省の図で示すなら(いくつかの要素は省略されているが)、それは赤い点線で囲われた部分にあたる。

これまで論じてきた問題の所在

これまで取り上げてきたのは、八潮市で発生した陥没事故や、そこから全国に広がった管路重点調査、さらに国交省の第2次提言で示された更新・維持管理の方向性。

その流れの中で浮かび上がってきたのが、「現状と将来を見据えながら、インフラ投資と維持管理費を最適化する必要性」。そして、「その調整役となる計画・設計を統括できる人材が最も早く不足する」という構造的な課題。

「水循環基本法」や「水資源計画」をはじめ、国のマクロなコンセプトは優れていると思う。しかし、それを現場で具現化する「実行部隊」の不足がボトルネックとなり、更新は滞り、仮に更新できたとしても、思慮の浅い「旧来設計の再生産」にとどまってしまう。

経済成長と人口増加を前提に設計された時代のインフラを、そのままの形で更新していく。それは「安心・安全のためには仕方ない」という理屈で正当化されることも多いが、結果的に過大な支出を伴う非効率な構造を生み出している。

首相候補・高市早苗氏が掲げる「wise spending(賢い支出)」という言葉を借りるなら、今のインフラ更新はその理念とはほど遠い現実にあるように思う。

論じてきていない問題もたくさんある

もちろん、「水利用→水処理」の領域には、まだ語れていない問題も多い。
PFOS/PFOAなど化学物質による水質リスク、水源地の保全、そして汚泥の最終処理・再利用など、課題は多層的。

こうした課題を解決するため、国や県、市町村では多くの計画が立てられている。しかし現場の人手が追いつかず、「計画だけが先に立ち、実装が遅れる」という構図が生まれているのが現実だと思う。

マクロでは美しい構想が描かれても、ミクロの現場を支える「設計人材」が減少すれば、循環そのものが滞ってしまう。

おわりに

今回は、「水循環基本法」で描かれた全体像を起点に、これまで自分が注目してきた「水利用→水処理」の位置づけを整理した。水は循環している。だからこそ、個別の課題もまた循環の中にある。そのマクロな視点を忘れずに、現場の問題を直視していきたいと思う。

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