#14_下水道管路に係る調査の人手とは
前回の記事では、「人手不足」という言葉が一人歩きしている状況を指摘し、次に必要なのは「どこでどれだけ不足しているのか」を定量的に把握することだ、と書いた。ニュース報道では抽象的に語られることが多いテーマだが、ここでは一歩踏み込んで「人手」を見える化したいと思う。今回は、横浜市が公開している「下水道管路施設管理指針(2019年版)」をもとに、調査現場にどんな人手が必要とされているのかを整理してみる。
調査方法の基本:潜行目視調査とテレビカメラ調査
中~大口径の下水道管渠の調査は、まず「机上スクリーニング」によってリスクの高い箇所を絞り込んだ上で実施される。その際の基本的な手法とされているのが、潜行目視調査とテレビカメラ調査。展開図化テレビカメラや浮流式テレビカメラといった新しい調査方法も開発されているが、現在の主流はこの2つ。一般の人たちがよく目にする調査のイメージ図も、この二つを描いたものが多いと思う。

潜行目視調査
まず潜行目視調査。これは調査員が管路に直接入り、内部を歩きながら異常を確認する方法。一見すると「人が入って見るだけ」に思えるが、実際には多くの人員が関わる。監視人、調査作業員、調査技師、調査助手、そして現場によっては交通整理員まで。安全を確保しつつ調査を進めるためには、多数の役割が必要になる。あくまで例ではあるが、この図では計8名、交通整理員が2名必要だとすれば計10名が必要となる。

https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/machizukuri-kankyo/kasen-gesuido/gesuido/torikumi/kanrokanminrenkei/kanrisisin.files/0001_20201215.pdf
テレビカメラ調査
テレビカメラ調査とは、調査員が下水道管内に入る代わりに、カメラを管内に挿入して異常を確認する方法。図だけで比べると、潜行目視調査より関わる人員は1名少なくなり計9名となる。しかしこれは「省人化」のためというより、管路内の歩行が難しい場合や有害ガスのリスクがある場合に安全確保の観点から選択される手法とされている。つまり「人を減らせるから」という単純な話ではなく、「安全に作業できる環境かどうか」によって選ばれる調査方法だということ。

「人手不足」を考える時に必要な視点
ここで示したのはあくまで一例にすぎない。しかし、「人手不足」という表現が使われるときには、こうした現場の実際をイメージする必要がある。また、その際に重要なのが以下のようなパラメータによって必要な人数は変わるということ。
・管径(大口径か小口径か)
・環境(雨水管か汚水管か、流入水があるかどうか)
・調査手法(目視、テレビカメラ、ロボット、打音、空洞調査など)
・安全体制(酸素濃度測定、換気、立会い要員の有無)
・発注単位(自治体ごと、業者ごとの契約条件)
これらの条件が組み合わさるため、「1班は何人で、1日何kmできる」という一律の標準値を全国的に決めるのは難しい。だからこそ、国交省の公表は「730kmを調査した」という成果にとどまり、裏側の投入人員については触れていないのだと思う。
ただし、これは「定量化できない」という意味ではない。実際には、班の標準編成や1日の調査距離の目安をモデル化し、条件ごとに補正係数を設ければ、必要人員のレンジを推計することは可能。むしろ、そうしたモデルを設計して可視化することが、これからの議論に必要なのだと思う。
おわりに
「人手不足」という言葉は便利だが、その背後にはこうした現場の複雑さがある。単純に「人が足りない」と言うのではなく、どの調査手法に、どの条件で、どれだけの人が必要なのかをモデル化して定量化すること。それができて初めて、「人手不足」の実態を正しく議論できるようになると考えている。
