⭐︎F伯母様 1385
※身バレ防止のため、伏せ字を多用しています
1/18(日)16時、午後の早い時間に仕事から解放され、のんびりとno+eを読んでいたら、固定電話の呼び出し音が鳴った。
買い取りのセールスか自動音声のアンケートか、それとも詐欺かと思いながら受話器を上げて黙っていたら、F元義伯母(以下F伯母様)からだった。
F伯母様は、H(元夫)の母親の兄の妻。
私とは当然のこと、Hとも血のつながりはない。
いったい何年ぶりだろう?
長身でハキハキ話しテキパキ動く姿しか思い出せないのに、電話の声は知らない老婆のようで、懐かしいというより、「初めまして」という感じだった。
相手がF伯母様だと判って声を出した私に、F伯母様はいきなり用件を切り出した。
「Hと約束していた」
「お墓を見てもらう」
「家の話はどうなってる?」
と言われても、2022年3月にHから離れた私には何が何やら。
それ以前から私はHに無視されていたので、Hの親戚関係のことは皆目わからない。
ところでF伯母様の夫(Hの母の兄=Hの伯父で、私からは元義伯父、以下伯父様)は温厚な人格者で、ある伝統分野の人間国宝。
日本でただひとりの○○○。
日本のみならず、世界中に「(伯父様の)……でなくては」という人が存在する。
F伯母様は結婚依頼、伯父様の仕事を一心に支え続けてきた。
F伯母様と伯父様は子どもに恵まれず、弟子も取らなかった(取っても長続きしなかった)ので、後継者はいない。
一時期、Hを養子に迎えて後継者にと考えていたようだが実現しなかった。
久しぶりに検索してみたら、伯父様はとっくの昔(私がHから離れるより前)に暖簾を下ろしていた。
しかも日本の伝統と伯父様の功績を広く後世に伝えようと、町衆が一丸となって銘菓を完成させていた。
買って食べた人が、思いを馳せてくれるといい。
日本でただ一人の「○○○」○○○さん。
後継人がなく○○○の暖簾を下すこととなりました。
またひとつ。日本の伝統が失われてゆきます。
そんな中で、 「せめて、その技と匠が○○にあったことの <証>を残すことができないか」
○○の町衆は その想いを「名物菓子」に託しカタチを残すことで 末長く語りついでいけるのではないかと考えました。
「自分たちの町を語れるお菓子を作りたい!」
「自分たちが愛する○○の町を世界中に知ってほしい!」
「○○の町衆が集まればできる!」
小さなつぶやきが次第に大きな声となり、町を挙げてのプロジェクトとなっていきました。
○○○文化を物語る「……」をかたどりながらも、これまでにない○○オリジナル名物菓子として、チョコレート、いもあん、昆布、漬物という前代未聞のコラボで創造された、匠の技ならではの新発想のお菓子が完成しました。
閑話休題
F伯母様はHに用事があり、ウチに電話すればHに連絡がつくと思っていて、つまり私がHから離れたことも、ここにHがいないこともご存知なかった。
Hの住所を知らないこと、電話もメールも着拒されているので、私からHへの連絡手段はないことをF伯母に伝えた。
勿論、とっくの昔に離婚していたことも。
H宛てのDMは届かなくなったけど、仕事関係の郵便は届かなくなったけど、お中元(お歳暮)は届かなくなったけど、クレジットカードは届かなくなったけど、連絡を取り合いたいわけではないけど、Hから無視されるのは、こういうときにほんっとーっに困る。
私は赤の他人だけど、子どもたちとも連絡を取る気はないようで、呆れ果ててしまう。
そうだった。
私の新赤い子ちゃん(赤くないiPhone)は通話ができるようになったんだった。
この番号は知られてないから、Hに着拒されてない。
シラーッとかけたら、「新規の仕事依頼か?」とHが出るかもしれない。
いや、やめとこ、私はHと話したいわけじゃない。
私からの電話でなければ出るかもしれないからと、F伯母様にHの携帯番号を伝えた。
本来ならHの同意が要るところだけど、連絡しても向こうが応じないのだから致し方ない。
悪者は私、個人情報保護法違反。
話してるうちにF伯母様の口から「お墓を新しくしたから……」という言葉が漏れ出た。
それってもしかして、伯父様はもういらっしゃらないってこと?
伯父様は○○○の暖簾だけではなく、人生の暖簾も下ろしてしまわれたってこと?
「家の話」って、あの町屋?古民家?をどうにかしてしまうってこと?
「私もすっかり歳をとって、体も弱って、もう歩けなくなってしまって……」と言うF伯母様。
ひとりであの家で暮らしている様子を想像すると、とてもじゃないけどF伯母様に伯父様のことを訊ねることはできなかった。
これから益々寒さが厳しくなるだろうし、ほんとにほんとにお体に気をつけて過ごしていただきたいと繰り返し伝えた。
もうF伯母様がここに電話してくることはないと思う。
F伯母様と私が話すのは、恐らくこれが最後だと思う。
Hを介した繋がりが、又ひとつ途絶える。
F伯母様、お話できてよかったです。
今までありがとうございました。
どうかお元気で。

2026.1.18.日
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