🤱あなたの為を思って【バランスボール】 1039
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前話を投稿した夜はなかなか寝付けなかった。
目覚めたら体中が強張り、首や肩が痛いほど凝っていた。
大して酷い内容ではなかったのに。
「この家の主婦は私ですよっ‼︎」。
この言葉からふたつのエピソードを思い出した。
ひとつは家庭科の住居の単元。
家族構成に合わせた間取り•動線•採光•通風•部屋割り•家具の配置•メンテナンス等を学び、家族と相談しながら「家族が居心地良くなる住居の工夫」を実践しレポートを作成(宿題)。
グループワークで1件を選んでブラッシュアップし、皆の前で発表する。
母は早朝に起き、「洗濯機の音が近所迷惑になるから」と盥で洗濯。
午前中から会場(信仰している宗教団体の集会場の通称)へ出かけ、すっかり暗くなってから両手に買い物袋をぶら下げて帰宅する毎日。
「皆んなのために早起きして洗濯している」「皆んなのために毎日会場に通ってる」「こんなに頑張ってるのに(それに引き換え誰々は……)」が口癖。
お世辞にも部屋が片付いてるとも掃除が行き届いてるとも思えない。
家庭科の課題は「家族と相談しながら」だけれど、母には相談できない。
留守中に片付ければ喜ぶんじゃないか。
帰宅してきれいになっていれば嬉しいんじゃないか。
そんなこと、あるわけないのに。
「勝手なことばっかりしてっ‼︎」
「お母さんが使いやすいようにしてるんですっ‼︎」。
部屋の片付けも、動線を考えた模様替えも、キッチングッズの使いやすいレイアウトも、換気扇周りの頑固な汚れ落としも、浴室の石鹸カスやカビ取りも余計なことだった。
私がすることは何でも「勝手なこと」。
「親に認められなければ学校の先生にも認められない」「親のお手伝いをすれば成績が上がる」「子どもは親に感謝すること」。
母は会場の教えを使い、私を服従させる。
試験勉強をしていても、「勉強よりお手伝いをしなさい」と私を洗い物に追い立てる。
「子どもは褒めて育てましょう」という親向けの教えだってあるのに。
高校から帰れば母が会場から帰宅するまでに洗濯物を取り込み、ご飯を炊いておき、母が調理にかかれば手伝い、食後に洗い物をする。
母が望んでいたのは家庭科で習うようなことではなく、「○○ちゃん(私)が良くなる為」という名目の家事の下請け。
結局グループワークで選ばれ、皆の前で発表し、高評価を得てしまった。
母からは罵倒されたのに。
もうひとつ。
父亡き後、認知症独居となった母を定期的に訪ねていた。
元々の性格に認知症が加わり、部屋は足の踏み場もなく、冷蔵庫やキッチンの床には食材が溢れ、座卓には食べきれなかった料理が、コンロの上にはお味噌汁が入ったままのお鍋が置かれていた。
特に夏場は健康被害を防ぐため、保存状態の悪い食品を処分。
勝手に捨てられないようにと目を光らせる母の気が逸れているうちに、手早く捨てていく。
「何を捨ててるのっ‼︎」
突然の大声に、驚いて顔を上げる。
「勝手に捨てないでよ‼︎
頼みもしないのに勝手に来て‼︎
片付けくらい自分でできるわよ‼︎
帰って‼︎
もう来ないでっ‼︎」。
認知症が言わせたのだと黙って我慢。
「え〜っい‼︎」
母は私の顔に向けてバランスボールを投げつけた。
怒りより情けなさより、笑いが込み上げてきた。
ところで、高校生活も会場の友人たちとの「信仰とは関係のない交友」も楽しかった。
私が緊張するのは、ほぼ母の前だけ。
高校を選択するとき、私の希望(父の希望でもあった)を通した私に、「会場の『お答え』に背いた」と母は不満?憎しみ?を隠さなかった。
高校卒業後の進路選択に母が黙っているわけがない。
通っていたのは、教育者•研究者を志望する生徒が多い進学校。
今では珍しくないだろうけれど、3年次授業の2/3が選択、必修は1/3のみ。
私服OKの自由な校風。
ほぼ全員が4年制大学を受験するし、ほぼ全員が今で言う大学入学共通テストを受ける。
前年、国公立大合格者数が大爆増。
私も漠然と「教育関係に」と思っていた。
案の定、母が待ったをかけた。
今度こそ会場でいただく「お答え」通りにしなさい、と。
背くことは承知しない、と。
背けば将来絶対に幸せにはなれない、と。 (1/24)

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