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⭐︎アナタからは買いません 1317


自分の足の形が人とは違うと知ったのは、小学5年生のとき。
プールサイドでクラスごとに体育座りをしていて、どの子の足の形とも似ていないことに気づいた。
誰かに親にも指摘されたことはないし、マジマジと誰かの足と見比べる機会もなかったからこれが普通だと思っていたけれど、両足の親指が外側(小指側)に曲がり、曲がり角のところがポコンととび出ている。

自分が子どもの親になったとき、良くも悪くも「子どもの心身の状況が気になって仕方ない」「つい他のお子さんと比べたくなる」という時期があった。
子ども時代の私は母と一緒に入浴していたし、上靴を買うときも運動靴を買うときも大抵母と一緒だったけれど、母は私の足の形に気づいてなかった。
私に興味がなかったんだろう。
大抵、大きめの靴を履かされていたし。

外反拇趾という名前を知ったのはずっと後。
足に良くないと解っていても、若い頃は見た目を優先して、履きたい靴に足を合わせていた。
馬鹿だよねぇ、まるで纏足。

TPOに合わせてパンプスもブーツもサンダルも履くけれど、スニーカーの出番が多い。
もう随分と前から、ジャケット×スニーカーもワンピース×スニーカーもファッションとして認知されているし、何より楽だし外反拇趾にも優しい。

「お気に入りに出会ったら買っちゃう」みたいな時期がほんの少しだけあって、私にしては珍しくReebok×2足、converse×4足、new balance×5足を所持していた。
どれもちゃんと履いて、寿命が来たものからお別れし、手元(足元?)にはnew balance×3足が現役で残っている。

買った時期はバラバラ、履く頻度もバラバラ。
のべ着用回数を考えると、3足とも丁度同じ頃に寿命を迎えそう。
そろそろ新しいお気に入りに出会っておきたい。

所用のついでに、ターミナル駅付近の靴屋さんを巡る。
同じ屋号の靴屋さんでも、立地によって客層も品揃えも違う。
急ぐ用もないからハシゴも厭わない。
最後に入ったのは、外国人観光客も大勢立ち寄る大店舗。

もう少し待てばBlack Friday、その先はクリスマスや年末のセール。
残念だけど今はセールの端境期。
気に入れば買う、そうでなきゃ買わない。
混んでなくて良かったってことで。

新着なのにお値頃(といっても高い)な1足を試着。
「履き心地にこだわった一品」
「今までのラインより格段に履き心地が良い」
「使用素材によって価格が変わり、安いのはメッシュを多用しているから」と立板に水の店員男子。

外反拇趾の私が履いて、こんなにゆとりを感じるのは珍しい。
爪先にも随分と余裕があるし、靴の中で足がゴソゴソしそう。
「ひとつ小さいサイズも試着させてください」と頼んだ途端に、店員男子の口調が早くなる。

「このサイズが丁度です。
スニーカーは大きく作ってあるんです。
はっきり言って、これより小さいサイズはお勧めしません。
ここ(出っ張った箇所)にぴったり合ってますから。
爪先が余っているように感じるでしょうが、それはデザインです。
爪の長さによって、(靴への)当たり具合は変わりますから。
座ってるのと立つのと歩くのとでも履き心地は変わるし、今より夜の方が窮屈になります。
紐で調節すればいいんです。
このサイズの履き心地が一番です」
キッパリ‼︎

余談だけれど、「外反拇趾には幅広靴が良い」は誤り。
先細で窮屈だったり痛かったりするのは論外だけど、出っ張った箇所には余裕は要らない。
しっかりとジャストフィットするのが良い。

この靴に関するアナタの知識は解りました。
この靴を推すアナタの気持ちも解りました。
メッシュを多用してるから、履いてるうちに伸びて緩くなり易いですよね?
アナタに私の履き心地が解りますか?
小さいサイズも試してみたい私の気持ちは解りませんか?
足の爪なんか伸ばさないよ。
自分の足との付き合いは、アナタより長いんです。
もう帰っちゃおうか?

そうだ、他にも良いなぁと思ったのがあったんだ。
ちょっとお値段が張るから躊躇していたけれど、ついでに試着だけしておこう。
私、お客様なんだし。

お、何だこのフィット感は‼︎
良い‼︎良い‼︎
シンデレラフィット‼︎
と思ったら、素材も色も違うけれど、今日履いてきたのと同じ型番だった。
高いけど、買っちゃう?

「ああ、この靴はそれ(私が履いてきた靴)と同じクラシックラインです。
履き心地に関しては、さっきの靴の方が断然上です。
履き心地を重視して作られてますからね」
キッパリ‼︎

気に入った靴を気に入ったと言ってはいけませんか?
アナタに私の履き心地が解りますか?
高い靴が売れた方が、アナタにとってもいいんじゃないですか?
解りました。
アナタからは買いません。

やっぱりこの靴を買いたい、と思うかもしれない。
別のお店には置いてないかもしれない。
思い返してこのお店を再訪したら、既に品切れになっているかもしれない。
それでもこの店員から買いたいとは思わない。
お気に入りの靴を履く度に、「キッパリ‼︎」が蘇ってきそうなんだもの。

「物を買う」って、「物」だけを買うんじゃない。
買うに至った状況やそれを選んだときの気持ちも込み込みのパッケージ。
翻って売る方だって、「物が売れればそれでいい」と思わない方がいい。
「アナタから買いたい」「アナタだから買いたい」「アナタに会いたい」そう思わせられたら儲けもの。
逆に、「アナタが嫌だ」と思ったら、お店に行くのも嫌になる。

ネットショッピングだって同じこと。
いくら安くても速くても、例えば梱包や送り伝票が杜撰なら、嬉しさが目減りする。
たとえ不良品でもその後の対応が素晴らしければ、機会があればこのショップから買ってみようと思うし、レビューでも書こうかと思う。
ネットで靴は買わないけれど(実は後日、初注文してしまった‼︎11/12追記)。

さてさて、どこで出会えるやら?
いつになったら出会えるやら?
今の子たちが寿命を迎えるまでに出会えますように。
とりあえず、ドラえもんみたいに3mm浮いとくことにする。








全記事をマガジンに収録しています 2025.11.7

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