昭和53年ママの貸出カード #3 ぽっぺん先生と帰らずの沼
あの頃、どんな本を読んでたっけ?昭和53年生まれの“ママ”が、子どもに聞かれて思い出す読書の記憶。忘れてしまいそうだけど忘れたくない本のことを書いてみます。
子どもだった私に、命の循環を教えてくれた本
読書が好きだった子ども時代。
なかでも、面白いシリーズに出会えたときのよろこびは格別でした。
1冊気に入ると、同じ作家や登場人物、似た世界観の本へと“数珠つなぎ”のように次に読む物語が広がっていく。
そんな連鎖が始まると、「しばらくは楽しい時間が続くぞ」とうれしくなったのを覚えています。
……と、なんだか大発見のように語っていますが、今思えばこれは完全に読書あるあるですね。
でも当時は、今のようにネットもなく、次の1冊に出会えるのはほぼ「運」頼み。
だからこそ、ぴったりの本を見つけたときの喜びは、ひとしおでした。
今日は、そんな数珠つなぎ読書の中でもとくに心に残っている1冊――舟崎克彦さんの**『ぽっぺん先生と帰らずの沼』(1975年初版)**について書いてみます。
表紙からは想像できなかった面白さ
この本、小学生のころよく推薦図書として並んでいました。
でも、なんとなく手が伸びなかった。
虫モチーフとか…(興味なかった…)。
たぶん、女子心にはあまり響かなかったんですよね。
主人公が「男性」「おじさん」「助教授」という、女子小学生の自分からはちょっと遠い存在だったのもあるかもしれません。
それでも、あるときふと手に取ってみたら――びっくりするほど面白かった。
止まらなくて、夢中で読んだのを今でも覚えています。
生き物になって“命の循環”を体験する物語
主人公は「うど大学」の生物学助教授・ぽっぺん先生。大学構内にある“帰らずの沼”の生態を研究中に、珍しいウスバカゲロウを追いかけているうち、なんと自分がそのカゲロウに変身してしまうんです。
そこからは、姿を変えながら次々と別の生き物に転生し、沼の中で「食う・食われる」という生態系の中を旅していくという、不思議なファンタジー冒険譚。
ぽっぺん先生がどの生き物にも真剣に向き合い、ちょっとおとぼけた語り口で命の営みを綴っていく姿に、気づけばすっかり夢中になっていました。
命のサイクルに飛び込んでみると
大人になった今思い返すと、この物語のすごさは、「知識としての命のサイクル」を、“自分がその中に入ることで実感させてくれる”ところにあると思います。
たとえば学校の理科の授業では、**「食物連鎖」「生態系」「命の循環」**という言葉を習います。
でも、それはあくまで図で見たり暗記したりするもの。でもこの本では、「体験としての命」が描かれている。
実際、2021年の文部科学省「全国学力・学習状況調査」でも、**「本を通じて考える力をつけている子どもほど、教科横断的な理解力が高い」**というデータが出ています。
つまり、物語を読むことで“自分以外の視点に立つ力”が鍛えられている、ということ。
ぽっぺん先生の旅は、そのことをまさに体現してくれた気がします。
長女にはうまく伝えられなかったけれど
実は以前、長女にもこの本を勧めてみました。でも、「うーん…」という顔。
やっぱりプレゼンが弱かったのか、
おじさんに感情移入するのは難しいと思ったのか、まだ彼女の琴線には触れなかったみたいです。
だけど、私はこの本の中にある「命のつながり」や「自然界へのまなざし」を、いつか娘にも感じ取ってほしいと思っています。
読書って、誰かに強制されるものじゃないけれど、何かのきっかけでスイッチが入ることがある。
その“きっかけの種”くらいは、蒔いておきたいなと思うのです。
「昭和53年ママの貸出カード」シリーズ、今回も冒険譚でした
こうして振り返ると、このnoteで紹介してきた本――『霧のむこうのふしぎな町』『ジム・ボタンの機関車大冒険』、そして今回の『ぽっぺん先生と帰らずの沼』――は、どれも“冒険の話”でした。
不思議なことに、私は映像の中のファンタジーにはあまり惹かれません。
ドラマやアニメだと「何でもアリじゃん…」と醒めてしまって、物語に入り込めない。でも、小説になると夢中になれる。
不思議と、すっと物語の中に入り込めてしまうんです。
小説には“自分で想像する余白”があるから、冒険やファンタジーが現実と地続きで感じられるのかもしれません。
だから私は、いつも冒険の話を選んでいたんだなと、今さらながら思います。
そして今、自分の子どもたちにも、「想像で旅に出る楽しさ」を、本を通して味わってほしいと願っています。
📚情報メモ
タイトル:『ぽっぺん先生と帰らずの沼』
著者:舟崎克彦(青い鳥文庫ほか)
シリーズ:全4作(ぽっぺん先生シリーズ)
対象年齢:小学校中学年~高学年(ただし大人の再読にもおすすめ)
キーワード:食物連鎖/命の循環/生態系/変身/ファンタジー
✉️あとがき
本を読むということは、誰かの体験を疑似的に生きること。だからこそ、ひとつの物語に出会うたび、自分の中の“理解できる世界”が少しずつ広がっていく。
私にとって『ぽっぺん先生』は、そんな1冊でした。
みなさんにも、「あの頃読んで世界が変わった」と思える本、ありますか?
あったら、ぜひ教えてくださいね。
#読書エッセイ #親子のこと #ぽっぺん先生と帰らずの沼 #子どもの本 #ママの貸出カード
