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待ってたんだよ!

わたしは、
自分を犬のように思っていたのだろう。

一一

母が喋る内容は、
楽しいものではなかった。
日本昔話を聞いているような。

抑揚を抑えた語り口で淡々と喋る。
そう、朴訥。

その奥に「不憫だ」「気の毒だ」
という感情が、
沈んでいるのが分かった。

重く暗い世界の中に
いる自分がみえていた。

一一

父が病気で亡くなったのは、
わたしが2歳のときでした。

兄弟とは、年が離れています。

姉や兄たちが学校へ登校すると
母と2人の世界になる。

一一

母は、着物を縫いながら
苦労話。
人のできていない話。
わたし以外の兄弟へのダメだし。
本人にいったらいいじゃない。

わたしは、姉でないよ。
兄でもないよ。 
そう言いたかったが、
あえて本人に言わず
わたしに喋っていることは
分かっていた。

わたしは、いい返さないからだ。 

一一

単純な話
わたしは話す、
伝える術を
まだ学習する前だったからだ。

都合が良かったのだろう。

まだ何もわからない子ども
と思っていたのか。

3.4歳の頃のわたしは、
母の心の奥が見えていた。

一一

ただ、大人が納得できる
伝え方がわからなかった。 

一一

ただ、ただ一方的に喋る母。

抱えていた重さや歪みを、言葉通り
「身を挺して吸い取ることで」
母を支えようとしたのか。
その場を生き抜くための方法だったのか。

どちらともいえるが、

母が好きだから、だなんて思えなかった。

一一

当時飼っていた犬には話かけず
母はわたしに話しかける。
犬より人間。
そりぁ、そうだよね。

反論・批判・説教・余計な
アドバイスが一切ない人間。

わたしはわたしを、
犬と同一化していんだ、と気づいた。

一一

わたしがただじーっとするしか
知らなかったように。

母は、 
抵抗する術をまだ持っていない者に
一方的に喋る方法しか
知らなかった、のだろう。

一一

今母を感じ取ってみると、
嫌味や悪意が感じられない。
ただ思ったまま喋る
幼児の波動がある。

母の母は、どうだろう?
一度も会ったことがない。

母にとっては、
キツく感じられた母だっただろう。

母の母も、そうする以外の
方法を知らなかったのだろう。

一一

気づくことで変わっていくと聞いた。
実際、変わっていく。

わたし自身が、
当時に嫌悪感がなくなった。

母も母の母も、そうだったんだね。
知らなかった。
それ以外を知らなかった。

待ってたんだよ。
母も母の母も。
自分。

待たせちゃったね。

本当に本当に長いこと。


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