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私の推し歌💖4 歌心を宿す魅惑の哀愁ボイス🎤八代亜紀さんを偲んで

本日も拙記事をご覧くださり、ありがとうございます。

2026年最初の歌曲紹介記事といたしまして、今回は2023年12月30日にお亡くなりになった、八代亜紀さんの作品(オリジナル&カバー曲)をお届けしようと思います。

◆ ◆ ◆

私が生まれて間もない頃、昭和のカラオケブームが起こりました。

今は亡き母方の祖父は演歌・歌謡曲が大好きな人で、家庭用のカラオケ機器を購入し、親戚・知り合いを集めては、当時の流行歌を数多く歌っていました(祖父が所持していたレコードの中にはかなりマイナーな曲もあったと記憶しています)。

そんな歌好きな祖父に感化され、2歳ぐらいから歌うことも聴くことも大好きになった私にとって、もっとも覚えやすく、印象に残ったのが八代亜紀さんの歌でした。

これまでnote記事でも何度かご紹介させていただいてきましたが、ある意味私にとって、八代亜紀さんの歌は自分の細胞の一部になっていると感じるぐらい、今なお心と身体に沁みる作品ばかりです。

そんなわけで、昭和歌謡・懐メロファンの皆様も、そうでない方々も、ぜひ最後までお付き合いただけたら幸いです♪

ラインナップは以下の通りです🌟



①なみだ恋 

作詞:悠木 圭子 
作曲:鈴木 淳 
編曲:小谷 充 

八代亜紀さんの代表曲の中でも、とりわけ彼女の声の魅力が際立つ一曲として、まずこの歌を推したい。

1973年2月5日発売、4枚目シングル。
大ヒットとなり、同年の暮れにはNHK『紅白歌合戦』初出場を果たした。

「なみだ恋」という言葉は歌詞の中にも描かれている通り、「人目を避けて逢瀬を重ねる恋」。

せつなく、悲哀漂う恋のムードいっぱいの歌詞だが、メロディはどこかほのぼのと、淡々としている。
歌詞と曲とで「せつなさの塩梅」を調整している、と言っても過言ではないだろう。

そして、八代亜紀さん特有の優しい温もりが感じられる声は、儚げでありながら芯の強さも感じさせる、絶妙な「侘び寂びボイス」。

言葉運び・間の取り方にも彼女ならではの色気や情緒が漂う。

それが、この歌のムードをいっそう美しい形に完成させている。

八代さんのほうが「なみだ恋」の世界・物語に合わせるのではなく、この歌のムードが八代さんの雰囲気に寄り添っている、とも言える。

私が生まれる前のリリースではあるが、2~3歳ごろ、カセットテープが擦り切れるほど聴いていた記憶が残っている。

新宿がどこにあるのか知らない、
「しのび逢う恋」ってなんなのかも知らない……

そんな2歳児の私は、八代さんの侘び寂びボイスで語り歌われる、「なみだ恋」の ”もののあはれ” に静かに嵌っていた。

もちろん、今改めて聴いてもやはり「沁みる一曲」だ。


②おんな港町 

作詞:二条 冬詩夫 
作曲・編曲:伊藤 雪彦 

これまた、幼い日の私にとっての「珠玉の一曲」。

この歌は、南有二とフルセイルズの歌唱作品である「おんなみなと町」が原曲。
八代亜紀さんのシングルとしてリリースされたこの作品は、さらなるドラマ性が加わった(1977年2月5日発売、19枚目シングル)。

イントロ部分からすでに、潮風に乗って海猫の鳴き声が聞こえてくるような「仕掛け」が施されていて、港町の匂い・景色が脳裏に浮かび上がる。

歌唱に関しては、ラ行で少し巻き舌気味になる、八代さんの発音がとてもカッコいい。

歌詞の女性はやりきれない別れに沈んでいるのだが、八代さんの発音・歌声はどこか達観した強さをまとい、悲恋を軽く笑い飛ばすかのような凛々しさを漂わせている。

八代さんといえば、「独特な温もり・湿度を感じさせる低音が魅力的」との印象が残っている人も多いかもしれない。

しかしこの歌を通して特に知ってほしいのは、彼女は高音域も薄いヴェールをかけたような、「ハスキーでありつつも柔らかい美声の持ち主」だったということ。

この曲を聴くたびに、八代亜紀さんという歌手の奥深さに改めて気づかされる。


③恋歌 

作詞:池田 充男 
作曲・編曲:伊藤 雪彦 

この歌は、八代亜紀さんならではの繊細かつ自然なビブラートが、ひときわ繊細かつ魅力的に伝わってくる一曲(1977年5月25日リリース、20枚目シングル)。

彼女の声の揺れ(ビブラート)は、主に以下のようなイメージを聴き手に想起させる。

  • か弱い女性の涙

  • 悲恋に翻弄される心

  • 逆境に堪え忍ぶ時、発せられる心的エネルギー

  • 一途に誰かを想う愛情深さ

  • 時には愚痴や涙をこぼしながらも、前を向こうとする力強さ

  • ため息交じりに呷るお酒

いわば、さまざまな歌詞の情景・心理を自由自在に乗せる“器”のようなもの。
彼女のビブラートは、ただ声を揺らすための技法ではなく、感情そのものを受け止め、より豊かに魅せる器のように機能しているのだ。

この彼女ならではの器があるからこそ、せつない別れ歌や悲壮感漂う世界観の歌でも、ほのぼのとした明るさや健気さが醸し出され、歌全体に奥深い情緒を生み出している。

静かに波打つようなメロディに、八代さんの声がそっと寄り添う。
そんな八代さんの情緒豊かなビブラートに触れると、私は自然と前を向きたくなる。


④おんなの夢 

作詞:悠木 圭子 
作曲:鈴木 淳 
編曲:馬場 良 

自らを「日陰の花」と認識しながらも、愛にすべてを捧げる女性の物語。
せつなくも一途な愛が綴られた、昭和ムード満載の一曲(1975年1月25日発売、10枚目シングル)。

本来「夢」というのは明るい光を連想させる、希望が詰まった言葉だが、この歌の主人公のそれは、むしろ悲愴感や諦めに裏打ちされていて、聴くと胸がギュッと締め付けられるような感覚が走る。

しかし、メロディにはどこか遠くに小さな灯りがともるような、そんな未来志向的な明るさが宿っている。

諦めや悲愴感漂う恋に生きる女性を単なる「不幸なヒロイン」に終わらせない、力強さを味付けすることに成功しているのだ。

そのネガティブとポジティブが入り混じる難しい世界を美しくまとめ上げる役割を果たしているのが、これまた八代さんの「侘び寂びボイス」であり、優しいヴェールに包まれたような、ほのぼのと明るい高音だ。

彼女の声は、歌詞の陰影をそのまま映し出しながら、同時に温かい光を差し込む鏡のようであり、そして彩り豊かに盛り付ける器のようでもある。

八代さんの曲を多く手掛けた音楽プロデューサー・鈴木淳さんは、曲のイメージに八代さんを引き寄せるのではなく、彼女の声の特質・魅力が最大限に発揮されるような曲作りを行ったことで知られる。

この歌もまた、鈴木氏の妻である悠木圭子さん(作詞)とのタッグで、聴く人の胸にほのぼのとした灯りをともす、そんな八代さんの歌唱力・声の魅力が引き出された作品に仕上がっている。

彼女の声に宿る、ほのかな灯り。
それは歌を聴き終えても残り続ける優しい余韻であり、八代亜紀さんの歌声が持つ“救い”や”癒し”なのだと思う。


⑤浜昼顔 

作詞:寺山 修司 
作曲:古賀 政男 
編曲:伊藤 雪彦 

2003年12月17日発売、アルバム『八代亜紀 古賀メロディーを歌う』に収録された、カバー作品(1974年6月、五木ひろしさんのシングルとしてリリースされた曲)。

五木ひろしさんは、八代亜紀さんのことをデビュー前から妹のように慈しみ、彼女の歌の才能を高く評価していたことも知られている。
また、八代さんも五木さんを兄のように慕っていた。

この「浜昼顔」は童謡・唱歌のような素朴さを宿しつつ、添えない運命の恋に泣く男女を「瀬戸の赤とんぼ」「空行くちぎれ雲」というふうに、哀愁漂う比喩で表現している。
歌人・寺山修司氏の感性が光る、珠玉の作品だ。

私は五木さんの歌唱作品のファンでもあるが、八代さん独特の柔らかな「侘び寂びボイス」で語られると、また違った陰影のある風景・情感が脳裏に広がる。

ちなみにこの歌は男性主人公の恋愛心理を描いた歌だが、八代さんは「男歌」の名手でもある。

「忘れたくない愛の記憶」を意味する「浜昼顔」を、八代さんは女性らしく儚げに歌うのではなく、パワフルに発声・発音することにより、「僕」の心を描き上げているのだ。

男性主人公の心情を借りながら歌うのではなく、自分の声の中に自然に溶かし込んでしまう……そんな高度な歌唱力を持つ女性歌手はそう多くない。

ただし、すべてが男らしくなるかというと、そうではない。

八代さんの声に乗ると、浜昼顔の花びらが風に揺れるような(女心の揺れ)、儚げな情景が浮かんできたりもする。

こうしたさまざまな映像・イメージが浮かんでくるのも、八代さんの歌唱・声質が多面的な魅力に富んでいるからだ。


⑥愛の執念 

作詞:川内 康範 
作曲:北原 じゅん 
編曲:伊藤 雪彦 

八代亜紀さん特有の湿度を含んだ低音、生活の匂いがする温度感……
そうした声の特徴・魅力が凝縮しているのがこの曲(1974年9月25日発売、9枚目シングル)。

作詞の川内康範さんといえば、「おふくろさん」(森進一)「誰よりも君を愛す」(和田弘とマヒナスターズ)「骨まで愛して」(城卓矢)など、非常に情熱的な心象風景を描くことが得意だった人物。

この作品は特に、タイトルからして非常に情熱的であり、陰影が濃い。

そして歌詞を紐解いてみると、”束縛的な重たい愛”に生きる女性主人公の独白が全体通して続き、ある種、強迫観念に近い心理に貫かれている。
愛するがゆえに逃れられない執着。
その息苦しさが行間に滲んでいる。

このような難しい作品は歌手の力量に委ねられる部分が大きく、物語が白々しく聴こえたり、逆にドロドロした雰囲気を強調しすぎて、聴き手をドン引きさせてしまいかねないリスキーさがある。

八代さんの声・歌唱技術はその辺の塩梅がやはり、見事だ。

繊細なビブラートに切実な女心・歌心を込めながらも、どこか突き放したような間の取り方や、荒々しい息遣いが感じられる多彩な表現力。
それらが、物語の重さを(そっと風を通すように)中和させている。

「泥沼的な愛情物語」であっても、声に宿る温もりや優しさ、そして訥々とした低音によって味わい深い、人情豊かな世界へと昇華させていく……

そんな八代さんの多面的な魅力に、改めて驚かされる。


⑦Fly Me To The Moon 

作詞・作曲:Bart Howard 
日本語詞:池 すすむ 

夜の静けさにそっと寄り添うような、柔らかいジャズナンバー(2012年10月10日発売のカバーアルバムCD『夜のアルバム』収録作品)。

生前、ジャズにも力を入れていた八代さん。
この歌はひときわ、彼女の声の温かさがノスタルジックに伝わってくる。

日本語詞の発音・発声は、彼女の演歌・歌謡曲系の持ち歌とは技巧的に少し異なる。
マ行の響き(鼻腔共鳴)がふっと甘く漂い、夜の空気に溶けていくようなムードが生まれている。

あまり技巧に走ることなく、内からあふれ出る豊かな感性や自然な声の魅力で「八代亜紀ならではの世界」を築き上げてきた、天才肌の人。

しかし本作品のように、少し遊び心的な技法を取り入れることによって、新たな創作・表現の幅を広げようとする冒険心・心意気も持ち合わせていたわけで、「表現者・八代亜紀」の懐の深さに感銘を受けるばかりだ。


⑧舟歌 

作詞:阿久 悠 
作曲:浜 圭介 
編曲:竜崎 孝路 

最後はやはり、八代亜紀さんの「人情宿る声の力」が遺憾なく発揮された、この曲で締め括りたい。

1979年5月25日リリース、第21回レコード大賞『金賞』はじめ、数々の賞に輝いた八代亜紀さんの大ヒットシングル(同名のアルバムも発売された)。

イントロから既に、港町特有の潮風の匂いや、ひっそりとした酒場の風景が感じられる、侘び寂びムード満点の抒情演歌。

歌詞に目を落とせば、阿久悠さんならではの言葉遣いのセンスが発揮されていて、とりわけ特殊なオノマトペの使い方に、この歌の哀愁・寂寥感といったものが凝縮されている。

3歳当時の私がこの歌に魅了されたのも、「ぽつぽつ飲む」「ほろほろ飲む」といった不思議な表現が気になって仕方なかったからだ。

民謡の一節も取り入れた、非常に節回しの難しい作品だが、八代さんは「メロディに合わせて歌う」というより、「語りかける」という表現が相応しい歌い方で、この作品をよりドラマチックに魅せている。

彼女の語りかけるような歌い方は、主に以下のような効果を作品に宿すことに成功している。

  • 余白を感じさせる(押しつけがましさがない)

  • 人生の哀歓を包み込むような包容力

  • 言葉の間(ま)が美しい

  • 語尾の余韻(ビブラート)が繊細

  • 聴き手が自分の物語を重ねられるような説得力

  • 温もり・湿度を与え、悲愴・孤独なストーリーを強調しすぎない

  • 彼女の声そのものが情景を映す鏡・器となっている(お酒の匂い、雨粒、夜の静けさ……など)

この歌は「女は無口なひとがいい」という歌詞でわかる通り、男性主人公の心情が描かれた「男歌」。
だからこそ、ゆっくりとした間の取り方や、多少粗削りでも語りかけるように歌うこと、これが女性歌手がうまく歌唱する上での「難しい課題」とも言えるわけだが、八代さんはこれを難なくこなしている。

ここまで彼女の歌声の魅力を一つ一つ言葉にしながら、国民的愛唱歌となった「舟唄」の歌詞に目をやると、ある解に辿り着く。

八代さんの歌の魅力と言うのは、まさにこの歌に出てくる「炙ったイカ」のようなものだと。

聴けば聴くほど、ほろ苦い涙や、ぼんやりともる酒場の灯りや、烈しい雨音、なにかを失ってもなお愛に生きようとする人の芯の強さ……

そんな様々な心象風景が浮かんできて、まったく聴き飽きることがない。
それだけ深い味わいを歌唱作品に与える、類まれな歌手だったということ。

このことを再確認しながら、これからも八代さんの作品を愛聴していきたい。


🐥本日の記事は以上です🍀
ここまでお読みいただき、ありがとうございました m(__)m

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