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◆「消費税を守り抜く」森山自民党幹事長 & どうみる日本国債の格付け◆

(MCレポート250707-b)

財務省・国税庁(筆者撮影)

 最近の国内政治を見ていると、消費税減税が(この先いずれかの時点で)現実になるかどうかは、20日の参院選で自公が過半数を維持できるかどうか次第だと考えざるを得ません。
 特に、この選挙を経て自民党の森山裕幹事長が続投できるかどうかが非常に大きなポイントだとみています。以下がそれに関するコメントです。

森山幹事長「何としても消費税を守り抜く」

 消費税減税に強く反対している与党政治家の筆頭格である森山幹事長は、5月17日の講演で、地元である鹿児島県の先輩であり、消費税という新たな税金の導入を主導した故山中貞則元税調会長を引き合いに出したうえで、「先輩方の思いが踏みにじられてはいけない」「政治生命をかけて、この問題に対応したい」と発言。野党に加えて与党内でも主張する向きが増えてきた消費税減税への強い反対姿勢を、自身は今後も堅持する姿勢を示した。
 翌5月18日の講演でも、消費税減税に反対する考えを森山幹事長は強調。「ポピュリズムの政治をしてしまっては、国は持たない。つけは全て国民に返っていく」「赤字国債を出せるほど日本は余裕がない。財源の伴わない減税には、本当に慎重でなければならない」とした。
 さらに、6月1日の講演で森山幹事長は、「赤字国債をこれ以上発行することがあれば、国際的な信認を失うのでは、と心配している。日本の国債の評価は、ぎりぎりのところまで落ちている」と発言。
 6月28日には、「何としても消費税を守り抜く」との力強い発言が、森山幹事長からあった。

 これらは、与党の大物政治家が国政選挙を意識して主張を展開する中での発言なので、「ファクトチェック」にはなじまない面がある。
 それでも、市場関係者を含め、少なからぬ人々が抱いたかもしれない疑問について、ここで説明しておきたい。

 まず、赤字国債をこれ以上発行できないという主張は、説得力を欠く。国の25年度予算では、赤字国債(特例公債)を21兆8561億円発行することになっている。政府・与党の方針として、今秋に編成が見込まれる25年度補正予算案では赤字国債の増発が見送られるとしても、そのあとの26年度当初予算案には、大きな金額の赤字国債発行が盛り込まれる可能性が高い。

日本国債の格付け引き下げの可能性をどうみるか

 また、海外の大手格付会社3社による日本国債の格付けは、投資適格の下限にはなっていない。S&PはA+、ムーディーズはA1、フィッチはAであり、いずれも「シングルA格」である。トリプルBマイナスまでが投資適格とされているので、下にはまだ数段階ある。
 しかも、日本国債の格付けのアウトルック(見通し)は3社とも「安定的」であり、「ネガティブ(引き下げ方向)」にはなっていない。

 1月23日に日本国債の格付けおよび見通しの据え置きを発表したフィッチは、「先進的で豊かな経済、相応に堅固なガバナンス水準及び強固な公的機関という強みと、中期的な成長見通しが低調であること及び非常に高水準の公的債務が均衡している」「中央銀行の金融戦略と広範な国内投資家基盤が、徐々に金融政策の引き締めへと向かう動きにもかかわらず、引き続き低い債券利回りと政府の資金調達能力を支えている」「格付は、継続的な経常黒字、多額の対外純債権ポジション及び円の準備通貨としての地位にも支えられている」と、発表資料で説明した。

 また、ロイターが7月4日に配信したインタビューで、ムーディーズで日本のソブリン格付けを担当するクリスチャン・ド・グズマン氏は、「当社では格付け変更の判断に際し、短期的な経済や財政の状況ではなく、ヒストリカルな基調や経済・財政状況の中長期的な見通しを重視する」「世界の経済およびソブリン信用力に関しては、足元では地政学的な動向やトランプ米政権の政策による影響から悪化傾向にあるが、日本の場合は見通し安定的としている通り、現時点ではリスクが均衡している」と説明した。
 グズマン氏はさらに、「中国の景気減速は日本経済にとって逆風だが、日本経済は底堅さを維持している」「名目国内総生産(GDP)は上昇基調にあり、当社が財政状況の判断に使うGDP比での財政赤字や債務残高も改善傾向だ」「賃金上昇、また政府歳入についてもポジティブなモメンタムがある」「これらがネガティブな側面を打ち消す形でバランスがとれ、見通しは安定的というわけだ」と述べた。

 この間、日本の経常収支は、黒字基調を維持している。足元は3か月連続で黒字になっており、6月9日に発表された4月分は+2兆2580億円(前年同月比+3.2%)である。
 基本的には物価高騰の影響ではあるものの、日本の名目GDPは相応に高いプラスの伸びを維持している。24年度は前年度比+3.7%で、4年連続のプラス。これと連動する形で、国の税収は当初予算の見積もり対比の上振れ傾向が明確である。
 24年度の国の一般会計の税収は決算概要で75兆2320億円になり、5年連続で過去最高を更新した。25年度はそれをさらに上回る見込みである。
 このような日本の経常黒字額の大きさや、名目GDPの(日本としては)高い伸びを背景とする税収の上振れ傾向は、日本国債の格付け引き下げ論とはかみ合わない。

消費税減税が実現する場合、債券市場は「負け具合」に注目

 話を7月20日投開票の参院選に戻したい。
 消費税減税というテーマとの絡みで大いに問題になるのは、この選挙の結果が衆院に続いて参院でも「与党過半数割れ」となる場合である。「自民内からも『過半数割れすれば首相は退陣だ。連立組み替えで、新首相は野党党首だろう』との声が上がる」(5月20日 毎日新聞)と報じられた。
 この国政選挙で与党が明確に敗北すれば、その責任を取る形での森山自民党幹事長の退任は、おそらく避けられないだろう。
 財務省では、「消費税の減税は認められないという省のスタンスは絶対に変わらない」と、ある幹部が強調したという(5月12日 時事通信)。だが、政治の意向に逆らうことはできない。

 仮に、参院選の結果、森山幹事長ら「消費税減税反対派」が退任を余儀なくされ、この減税が何らかの形で近い将来に実現する可能性が高まる場合には、債券をはじめとする金融市場の側としては、「負け具合」をよく見きわめる必要があるだろう。
 たとえば、1年間限定で食料品の消費税率を8%から5%に引き下げるだけなら、必要な財源は2兆円台にとどまるとみられる。見積もり対比での税収上振れ(自然増収)が続くなら、それを財源にあてることがおそらく可能。大きな金額の赤字国債増発が必要だという話にはならないだろう。
 また、厳格に1~2年程度以内に実施期間を限定しての消費減税なら、それをあてにした赤字国債を「つなぎ国債」という名目で発行し、かつ、発行年限を短中期ゾーンに限ることにより、債券相場への影響をできるだけ小さくする工夫がなされ得る。
 一方、消費税率を恒久的に引き下げる、あるいは廃止するといったドラスティックな減税が行われる見込みになる場合、金融市場全体に及ぶマグニチュードは当然大きくなる。
 もっとも、社会保障財源を十分確保する必要性を少なからぬ有権者が認識しているだけに、そこまで大胆な消費税減税が実現する可能性はきわめて小さいと、筆者はみている。
 いずれにせよ、20日の参院選は財政の行方を左右する「大一番」になる。

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