見出し画像

💼旅行記⑰〜ドイツの学校3時間目🕙名前と誕生日〜

ドイツ旅行中、現地で学校の先生をしている友だちの勤務先の学校の授業に参加させてもらう機会がありました。

今回は、そのときに体験した3時間目の授業について書いていきます。

ドイツの学校を訪問したときの、3時間目の授業。前日に友だちから、同僚のクラスで子どもたちに漢数字を教えてほしいという話は聞いていました。

一、二、三……といった漢数字を子どもたちに紹介する。

そのくらいのイメージでいたのですが、教室に入ってみると、そこには30人ほどの子どもたちがいました。

そして

「最初に、全員に日本語と英語で自己紹介して」

と言われました。

……あ、みんなの前で話すんだ💦

一気に緊張しました。

私はもともと、人前で話すのが得意ではありません。

昔、学校で同じくらいの人数の前で話したとき、先生から「声が小さい」と注意されたことがあります。みんなの前で指摘されたことが、当時の私にはとても怖かった記憶があります。

だから30人ほどの子どもたちを前にした瞬間

「ちゃんと声を張って、全員に聞こえるように話さなきゃ」

と思いました。

このクラスは、学校の中でもかなり静かなクラスだということは事前に聞いてはいました。それなのに、いざみんなの視線がこちらに向くと、「静かなクラスだから大丈夫」よりも「ちゃんとしなきゃ」が先に出てくる。

しかも、ここはドイツの学校なので

「日本人代表みたいなものだし、粗相のないようにしなきゃ」

という気持ちが再び出てきました。

そして、その奥にはやっぱり、嫌われたくない気持ちがあります。

30人の前に立ちながら

「ああ、こういうときにも嫌われたくないが出てくるんだ。私らしいな」

と思いました。

そんなことを考えながら、自分なりにしっかり声を張って、日本語と英語で自己紹介しました。緊張していたので、早口だったと思います。なんとか自己紹介を終えると、今度は担任の先生が子どもたちに話し始めました。

そこで気づきました。

……あれ?

そんなに大きな声じゃない。先生は声を張り上げるわけでもなく、穏やかな声で丁寧に話していました。それを聞いて

「あ、私、そんなに頑張って声を張らなくてもよかったのかも」

と思いました。

実際、子どもたちは事前に聞いていた通り穏やかで、どちらかというと恥ずかしがり屋な子が多い印象でした。

「ちゃんと全員に聞こえるようにしなきゃ」

と一人で力んでいたのも、なんだか私らしいなと思います。

自己紹介が終わると、いよいよ授業が始まりました。先生がホワイトボードに1、2、3、4……と数字を書き、
その隣に私が、一、二、三、四、五、六、七、八、九、十と書きました。

さらに、

百、千。

と、漢数字を書いていきました。

そして今度は、

「私の名前は〇〇です」

という日本語も書いてほしいと言われました。

そこでホワイトボードに

「わたしのなまえは〇〇です」

と日本語で書きます。

書いたあとは、「私」はどういう意味なのか、「は」はどんな意味なのか先生から聞かれたので、一つひとつ説明していきました。

私はドイツ語がほとんど分からないので、必要なところは教員である友だちが英語で通訳してくれます。

普段何気なく使っている日本語も、初めて日本語を見る子どもたちに説明しようとすると、なんだか不思議な感じがしました。

先生は事前に、一人一枚ずつ色のついた紙を用意してくれていました。

そこに生徒が自分の生年月日を漢数字で書いていきます。

そして、ひらがなで

「私の名前は〇〇です」

と書くことになりました。

子どもたちが書き始めたところで、先生が、

「質問がある人?」

と声をかけました。

すると――。

ほぼ全員の手が挙がりました。

そりゃそうだよね。自分の名前をカタカナでどう書くか知らないよね。

「これは一人ひとり回ることになるな」

と思いながら、順番に子どもたちの席へ向かいました。カタカナの50音表が用意されているわけではないので、一人ずつ名前を聞いて、私がカタカナで一人ひとりの名前を紙に書いていきます。

ドイツ語では、英語でも見かける名前でも発音が少し違うことがあります。たとえば「David」も「ダービッド」と発音します。ただでさえ外国の名前をカタカナにするのは迷うのに、聞き慣れていないドイツ語の発音となるとさらに複雑です。

子どものそばまで行って、膝を曲げて同じくらいの目線になり、

「お名前は?」と聞く。

名前を聞き取って

「〇〇(って発音)で合ってる?」

と、もう一度本人に発音を確認する。

そんなやり取りを繰り返しました。

このクラスには、恥ずかしがり屋な子も多くいました。

「これで合ってる?」

と聞いても、恥ずかしそうにして、何も言えない子もいます。

そんな姿を見て

「ああ、私も子どもの頃、こんな感じだったな」

と思いました。

すると、本人がなかなか答えられないのを見て、隣にいた子が

「そうだよ」

という感じでアシストしてくれることもありました。この子はちょっと恥ずかしがり屋なんだな。この子は隣の子を助けてあげるんだな。

そんなことを感じながら、一人ひとりの名前をカタカナで書いて回りました。授業の最初は30人という集団を前にして、あんなに緊張していたのに、一人の子のところへ行って膝を曲げて、同じ目線になって話してみると、もう「30人」ではありませんでした。

一人ひとりに名前があって、一人ひとり反応が違う。

ほんの少しずつではあったけれど、全員と言葉を交わせたことが私には嬉しかったです。私は大勢の人に向かって何かを話すよりも、こうやって一人ひとりとじっくり関わる方が好きなのかもしれません。

そして授業が終わってから、さらに驚いたことがありました。

子どもたちが自分の名前と誕生日を書いたあの紙。

どうやら、ラミネートして取っておくらしいと言われました。

……え。

ちょっと待って。それ、先に言っといて。

もちろん、一人ひとりの名前を丁寧に書きました。

字も比較的読みやすいと言ってもらえることがありますが心の準備ってものが……。

でも嬉しく感じました。

ドイツの子どもたちが、自分の名前と誕生日を日本語で書いた紙を持って帰って、それをラミネートして取っておいてくれる。

その中に、私が一人ひとりの名前を聞きながら書いたカタカナも残ります。

そして、その日最後に残っていたのは、
一人ひとりと関われてよかったな。
という気持ちでした。

大勢の前で話すのは、やっぱり苦手です。でも、一人の子のそばへ行って、同じ目線になって、名前を聞いて、少しだけ言葉を交わす。

それを改めて感じたことも、ドイツの学校で過ごした時間の中で、嬉しかったことの一つでした。

……でもやっぱり、
ラミネートするのは、先に教えてほしかったです😅

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集