ティモシー・シャラメは『マーティ・シュプリーム』でオスカーを獲れるか?
(ネタバレなし。)
アカデミー主演男優賞の高齢化しがち問題、ニューヨークタイムズのカイル・ブキャナン記者が記事にしていた。
NYT記事の言う「ガールフレンド・ギャップ」とは。
この記事は、アカデミー賞主演男優賞は「若い男性に極端に不利」という歴史的傾向があり、ティモシー・シャラメ(Timothée Chalamet、30歳)が新作『マーティ・シュプリーム(Marty Supreme)』でその「呪い」を破れるかを論じている。
歴史的事実
主演男優賞を20代で受賞したのは、過去にひとりA.ブロディだけ。
同時代で見ると、若い女優は受賞しやすいが、若い男優は評価が遅れる傾向が顕著。
なぜ若い男優は不利か、著者の推論
恋愛映画でブレイクした男優は「アイドル俳優(Heartthrob)」扱いされやすく、年長の男性投票者の抵抗に遭う。
筆者はこれを、女性に人気な男優を男性が過小評価する心理、「ガールフレンド・ギャップ」と呼んでいる。男性アカデミー会員が人気若手男性俳優に投票したがらないから、男優賞は高齢化しがちというわけだ。
著者による問題提起
アカデミーは近年、若年層(特に若い男性視聴者)を取り込みたいとしている。
なのに、若い男優を表彰しない慣行は、自己矛盾。
もし若者に訴求したいなら、「授与」も本気で行うべきだ、という提言で締めくくっている。
個人的には、男性視聴者を取り込むのに男性アイドル俳優に授与しても効果は薄いと思うのだが…それよりは、アニメやB級映画の部門を拡充した方が効くのでは? と自分は考える。
ともあれ実際に、
男女のギャップは統計でも露骨に出ている。



具体例を挙げてみよう。
若手男性俳優の苦戦。
トム・クルーズは、27歳の『7月4日に生まれて』で初ノミネート。役作りのため車いすで1年過ごしての名演技だった。その後主演賞などで計3度ノミネートされたが受賞できず、63歳で功労賞を得た。
ジョニー・デップも、40歳の『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』でやっと初ノミニー、同じく3度ノミネートで未受賞。離婚騒動もあり、62歳でいまだにオスカー受賞歴がない。
レオナルド・ディカプリオは、18歳の『ギルバート・グレイプ』で早くもノミネートされるが、22年後、40歳の『レヴェナント: 蘇えりし者』で5回目のノミネートで、初の主演男優賞を得るまで苦しみ続けた。とくに『タイタニック』で主演男優賞だけノミネートなかったのは残酷だった。受賞まで、さんざん擦られ「王子様にかけられた呪い」なんて揶揄された。
ブラッド・ピットは、32歳の『12モンキーズ』で初ノミネート、24年後、56歳の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』で、4回目にしてようやく初の助演男優賞を得た。
作品賞としての受賞の方が早いとか、どうなっとんねん。
なお、主演男優賞の歴代最年少受賞は、エイドリアン・ブロディ。『戦場のピアニスト』で、当時29歳。ブロディは昨年『ブルータリスト』で51歳にして再受賞。
これが史上唯一の20代男性による主演男優賞獲得だ。『戦場のピアニスト』が恋愛映画ではなかったことに注目しよう。

最近20代の主演男優賞ノミニーでは、二度選ばれたシャラメ以外、『ゲット・アウト』のダニエル・カルーヤ、『aftersun/アフターサン』のポール・メスカルだけ。この2作とも、恋愛映画ではない。
そして20代男性の主演男優賞受賞は、20年以上絶えている。
一度そうやって恋愛映画で嫌われると、未受賞期間が長くなる。
ブラピはいまだに主演男優賞を獲れていないし、ジョニー・デップ(62歳)、ライアン・ゴスリング(45歳)、ロバート・パティンソン(39歳)、マイケル・B・ジョーダン(38歳)、ジェイコブ・エロルディ(28歳)はいずれもオスカー未受賞だ。
ジョーダンなど、今年の『罪人たち』で候補に上がるまで、ノミネート経験すらなかった。
比較対象としての女性俳優。
一方で、30歳未満で主演女優賞を受賞した女優は、過去27人もいる。
最近では、
『アノーラ』の マイキー・マディソン
などが思いつく。
さすがに差が極端すぎるよね。
ジェンダーギャップにうるさいハリウッドで、このようなあからさまな慣行が生き残っているのは驚くべきことだ。
3月の『マーティ』公開と授賞式が待ち遠しい。
シャラメの新作『マーティ・シュプリーム』は、3月13日に日本公開。
アカデミー賞授賞式はその2日後だ。
シャラメが演じるマーティ・マウザーは実在の卓球選手マーティ・リーズマンをモデルにしており、卓球人気の低いアメリカであがく卓球の天才である。
だがこの男のクズっぷりが何とも引き込まれる不思議な魅力を持っている。

共演にはグウィネス・パルトロー。スクリーン復帰は『アベンジャーズ・エンドゲーム』以来6年ぶりとなる。
なお、ライバルの日本人選手エンドウ役は、東京2025デフリンピック卓球の銅メダリスト、川口功人が演じる。
監督は『アンカット・ダイヤモンド』のジョシュ・サフディ(サフディ兄弟の、兄の方)。
