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腰が砕けて思い出した、母のはじまり


今朝、腰に「ピキッ」と鋭い音が走った。
…やってしまった。
間違いなく、ぎっくり腰だ。

しゃがむのも、咳をするのも、全身が警戒態勢。
勝手に声が漏れてしまう。

息子のオムツすら代えられない。
……もはや私が介護される側では?



原因はわかってる。
昨日の祭り、疲れて寝てしまった息子を30分近く、
腕一本で抱っこして帰った。

途中、腰がミシミシと警告を出していたのに、
気づかないふりをした。

祭りの提灯が灯る中、
眠るほっぺがふわっと赤くて、
「もう少しだけなら」と思った自分を、
今朝の私はちょっと恨んでいた。


湯船でようやく身体が緩んできた頃、
ふとお腹に目をやった。

……ほんと、よくここまで来たよなって、
ひとりごとが出た。

薄くなった10センチほどの線。
少しケロイドっぽくなっていて、触ると硬い。
そこから、あの子は生まれた。
今や息子は87センチ・13キロ。

ここを人間が通ったなんて、信じられる?
思わず笑ってしまった。


その瞬間、記憶がぶわっと蘇った。


たしかに腰は痛い。
でも、あの日の痛みと比べれば、
全然マシだ。

術後の夜、ベッドの端で、動けず泣きながら、
それでもお腹を押さえて立ち上がった
あの瞬間と比べれば。


予定日を大幅に越え、
夫の誕生日に破水、
促進剤も全く効かず、
2日後、これ以上は危険と判断され
緊急帝王切開になったあの夜。

手術室の強い光。麻酔後の強い吐き気。
「ピッ、ピッ」というモニター音だけが、
妙にうるさかったのを覚えてる。

切られた瞬間の記憶はないのに、
術後の冷たいシーツと、自分の手の震えだけは、
頭じゃなく、肌が覚えてる。


生まれるって、本当にすごいことだ。
消えないあの線が、すべてを思い出させる。
私にしかわからない勲章だ。


最近、「抱っこして」と言うことが減ってきた。
自分で歩く時間も増えた。
たぶん…もう何年かしたら、
こうして抱き上げることはなくなる。

だから、今朝のぎっくり腰も……少しだけ愛しい。
いや、ほんとに少しだけね。

帝王切開の傷も、ぎっくり腰も、
全部、母になったわたしの履歴。
ひとつ痛むたび、愛せるものがまた増える。
母って、そんなふうにできてるらしい。


もう一度やれと言われたら──答えは決まってる。


あなたの身体に残ってる記憶、なんですか?




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