『かもめ食堂』のロケ地で逮捕されかけた話
ねとらぼとnoteが共同で投稿コンテストを開始した。今回のお題は「#私だけかもしれないレア体験」である。これに関してはいくつか提供できる話がある。その中でもとっておきの恐ろしい体験がある。
「『かもめ食堂』のロケ地で逮捕されかけた話」だ!
すでに大学時代に一度ブログで書いているが、リメイクということで語り直すことにした。
『かもめ食堂』のロケ地で逮捕されかけた話
あれは大学4年生の時であった。社会人になったら、海外旅行は難しくなるだろうと考えた私は北欧3カ国を巡ることにした。北欧研究会というサークルに所属していたこともあり、在学中に北欧5カ国を制覇したかったのである。既にデンマークとアイスランドは攻略済み。調べたらノルウェー、スウェーデン、フィンランドを巡るツアーを発見、早速申し込んだ。
折角フィンランドへ行くのなら、映画の舞台となった場所を巡りたい!そんな想いで、『かもめ食堂』のロケ地をピックアップすることに。『かもめ食堂』は荻上直子が撮った作品。小林聡美演じるサチエがヘルシンキに小さな食堂を開く。そこに集まる人々との緩いコミュニケーションが魅力的な内容だ。その中で、スイミングプールが出てくる。
ここに行こう!

かくして、私はウルヨンカツ公共プール(Yrjönkatu Swimming Hall)へ向かうことにした。ここにはサウナも併設されている模様。サウナ好きな私に撮って好都合な観光地であった。申し込んだ北欧周遊ツアーでは、数時間の自由が設けられている。短い時間で、楽しむには事前調査が必要不可欠だ。ググると、どうやら男性と女性とでは入れる日が異なるらしい。丁度、フィンランドに滞在するタイミングがメンズデーだと知った。実にラッキーだ。
調査を進めていくと、どうやらフィンランドのプールでは海水パンツを履かないらしいことも分かった。でも、海パン文化に慣れ親しんでいる日本人の私にとってはかなりの抵抗がある。念の為、海パンを持ってウルヨンカツへ。

ウルヨンカツ公共プールは少し分かりにくい場所にあり、迷いながらもなんとか辿りつく。海外でこの手の施設に入るのはアイスランドのブルーラグーンに引き続き2度目であるが、若干の緊張感がある。入り口で恐る恐る訊いてみた。
Can I Use this sauna?(ここのサウナ使えますか?)
間髪入れずに女性店員はこう語る。
Of course!(もちろん)

5.50ユーロを支払い中へと入る。バシリカ型教会を彷彿とさせる三廊式の空間。中央がプール、柱の裏側が通路、更衣場となっている。日本ではあまり見かけないタイプのプールだ。小林聡美が泳いだ場所に自分がいると思うと気分が高まる。ここで、ある異変に気づく。
なぜだ?なんで、ここに女性客がいるんだ?
プールを見渡すと、数名の女性客の存在に気づいた。私は次のように解釈した。
今日は月に1度の混浴デーなのかな?
とりあえずサウナに突入。さすがに気恥ずかしさから海パンは履いた。確かに、現地民は何も履いていなかった。そこに、子どもが入ってくる。だが、彼女は異変に気づき出ていった。確かに、現地民しか入らないプールに怪しい日本人が入っていたら怖いかもしれない。ととのいたい、その一心。サウナに満喫した私はプールに入りたかった。ここで脳裏にある言葉が浮かんだ。
郷に入っては郷に従え
せっかくだから私も裸になって25mプールを泳ぎ切ろう。メガネを取っていたこともあり、ボヤけた姿で力士のような男性客を観測。今日は混浴デーあることが分かったのですっかり安心した私は黄色の海水パンツを脱ぐ。そして入水。結構な深さだった。カナヅチタイプな私は少し狼狽するが、必死にひとかき、ふたかきと手を前に伸ばす。ゴーグルをしていないので、あと何mでゴールか分からない。後ろに気配を感じるので泳ぎ続けるしかない。ここで諦めたら試合終了だ。後ろの客に迷惑をかけてしまう。泳ぎ切るしかない。もうすぐゴールだろう。声も聞こえてきた。あと少しだ。壁の感触が腕に伝わった。私は泳ぎ切った。遠い地、フィンランドのプールを泳ぎ切った。その満足感に浸りながら、ふと顔を水から出す。
私は囲まれていたのだ。
Today, Women Only!(今日は女性限定の日だよ!)
えっ?男性客いるじゃん?戸惑う私。キョロキョロしながら例の客を探した。
女性客だった。
一気に汗がダラっと出る。生きて帰れないかもしれないという不安、走馬灯が脳裏を駆け巡る。出よう、とりあえず出よう。
ソーリー、ソーリーと蜘蛛の子を散らすようにその場を去ることにした。幸いにもプールには爆笑が木霊するのみで警察沙汰にまではならなかった。ここでふと思う。
なぜ、入り口で止められなかったのだろうか。
店員さんは明らかに私のことを見ていたはずである。フィンランドの平均身長は高い。女性でも165cm以上はある。確かに街中では、170cm以上ある女性を多く見かける。自分は160cmしかない。ひょっとしたら女性に間違われたのかもしれない。海パンを履いる状態では私が女か男かわからなかったのであろう。「郷に入っては郷に従え」を実践した結果、悲劇につながったといえる。私は、よく年齢不詳、国籍不詳の人だと言われるが、ここにきて性別不詳の属性が加わってしまった。スパイになれる気がした。
みなさんも、もしウルヨンカツ公共プールへ行くことがあれば、入念にメンズデーなのかレディースデーなのか、確認することをオススメします。
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