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映画と美術#22『映画史特別編 選ばれた瞬間』時間の立体視としての映画

▷キーワード:メディアアート、現代美術、エドゥアール・マネ

20世紀の終わりにジャン=リュック・ゴダールは4時間半に及ぶ『映画史』を放った。製作会社のゴーモンは劇場公開用に短縮版を作ってくれとゴダールに要請し、『映画史特別編 選ばれた瞬間』が作られた。結局のところ映画館で一般公開されることなく、ある意味幻の作品となった。日本では、早稲田松竹で『ゴダール・ソシアリスム』と共に上映された形跡があるが、それでも長年、鑑賞が困難だった作品であるには変わりない。2025年にIVCが突如、本作のブルーレイを発売し話題となった。ゴダール研究者である堀潤之による渾身の解説リーフレットが付いたことで、本作が単なる『映画史』の切り抜き動画ではないことが明瞭となった。

『ゴダールの映画史』と『映画史特別編 選ばれた瞬間』

『映画史特別編 選ばれた瞬間』は8章に分かれた『映画史』を約10分ずつ切り抜いた作品ではない。「1B ただ一つの歴史」はほとんどカットされ、一部はタイトルと対応しない構成に並び替えられているのである。それにより、よりシャープにゴダールが考える「映画とは何か?」が見えてくる構成となっている。本作では「2A 映画だけが」を「すべての歴史」と置き換え提示する。映画評論家であるセルジュ・ダネーとの対話が捉えられている。

「大きな歴史と自分の歴史の関係を文化的遺産を黙って継ぐのではなく自分の先駆者を見つけようとした」

「私には大きな歴史とは映画史だ」

と映画と歴史の関係性を示すポイントについて語り合う中で、画は「SEUL LE CINÉMA(映画だけが)」と大きくテロップが表示され、音声もエコーがかかったノイズとなっていく。映画における編集可能な側面を文字、加工された音の側面で提示し、その編集可能性がいかに映画と歴史を繋いでいくのかを紐解こうとしている。

まず、ゴダールがやってみせるのは映画と映画の対比である。文庫版の「ゴダールの映画史」では、複数の作品を観ることによって映画を論じるアプローチが採用されている。同様に、映画でも並べることが映画を語る上で最も重要なことだと示す。

『ゴダールのリア王』でジュリー・デルピーがボードレール「旅」を朗読する画と『狩人の夜』における小舟で川面を進む画が並べられる。カラー/モノクロ、静/動、能動的に動く(読む)/受動的に動く(川の流れに身を任せ小舟に揺られる)といった複数の対比構造が浮かび上がっていく。

対比によって連想していく経験を膨大な引用によって映画を抽象概念に落とし込もうとしている。ゴダールの実験映画は常に、膨大な具象を通じて抽象化を図ろうとしている。本作では、その過程で映画に流れる時間を立体視するアプローチが採用されている。

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