〈サンタの遠い足音〉
ここへ来て
そう言われてここに来たけれど
荒れ果てた荒野に、渇いた池
なにもないじゃないか
僕は、幼馴染の大地と鈴子に誘われて、この荒れ果てた空き地に来た。
ここへ来ればなにかが
見つかると思っていたのに
少年は落胆の顔を見せたがすぐに切り替えた。
サンタさんなんて
絶対やってこないって大地が言ってた。
大地は僕の悪友で、いつも大人びたことを言うやつだ。去年のクリスマスも、「サンタは親の仕業だよ」って、にやにやしながら教えてくれた。
鈴子はいつも人形の家で遊んでいて、サンタさんが本当に来るって信じている。でも僕は、もう少し違うものが欲しかった。
でもなんだか、今はもみの木が色付きはじめた
頃を想像するとワクワクする。
深緑の葉っぱに、丸太のような太い幹が
どっしりと構えるその出立ちに、
蒼空は必ずサンタが来るって信じられる気がした。
学童で置いた毛糸の靴下には
お菓子の詰め合わせが沢山入っていたけれど、
僕はもっと特別ななにかが欲しかった。
例えば、地中海を走れる列車の切符とか
空を走れる自動車の作り方とか
会社の社長になれるチケットとか
そういうものが欲しかったんだ。
毛糸がパンパンに伸びるまで詰められた
靴下は、子供はこういうものが好きだろうと
'大人'ってやつになんだか
言い聞かされているみたいで
腑に落ちない。
この場所はなにもない、
お菓子の入った靴下も、
幼馴染の鈴子が好きな夢みがちな人形の家も
でも、なんだかものすごくほっとする。
渇いた池には水をやって
荒れた荒野は1日ずつ耕し方をじいさんに教わればいい。
今はなにもなくていい。
もみの木にサンタがやってくることを創造すれば
それだけで蒼空の世界が広がった。
明日の朝、もしリビングのもみの木の下に
四角い箱がなにもなくても
僕は自分で稼いでやる。
昨日までの僕は、サンタさんが来れば望みが
すべて叶うと思っていた。
でもいまは大地の言う意味がほんのりと沁みる。
僕の夢はまだ叶わないけれど、
もみの木とサンタさんがそれを知っている気がする。
海を走る列車も
未来自動車も社長の椅子だって
どんなものかこの目で見たい。
僕にはまだまだ無限の可能性ってやつがあるんだ
このひとつのもみの木と
サンタさんの足音がそう言っている気がする
おわり.
「サンタが来なくても、僕は自分で稼いでやる」お菓子より大きな夢を追う、少年の物語。 #note
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