【おはなし】 わら半紙のラブレター#3つのお題に空想のひらめきを
企画の、昭和ノスタルジーも参加させていただきます🥰。
(イラストは、企画のchatGPTのものを使わせていただきました)

「ねぇジロちゃん、いいものあげる!」
そう言って、次郎に一通の紙を差し出したのは……隣の家の、あみだった。
家が隣なのに、席も隣。
とんだ悪縁だなと、次郎は思っていたりする。
「えー。何?」
しぶしぶ受け取ってみたものの……それは、くしゃくしゃのわら半紙。
こんな紙切れで『いいもの』なんて、何も思い浮かばない。
「いいから早く中を見てよ。ラブレターなんだよ!見ないなら私が変わりに読むよ?声に出して読み上げるよ?」
「ちょっと、バカ!やめろって!」
本当に、あみには迷惑をしている。
そんな風に言われたら……嫌な気しかしない。
周りもなんだかこちらを見てクスクス笑っているように思えてきた。
慌てて中を開くと……。
そこには、とてもきれいな字が並んでいた。
『次郎さんへ
いつも となりで わらってくれると
うれしくなります。 だいすきです。
くみより』
ーーええぇっ!くみちゃんから?
『だいすき』につられて、一気にほほが熱くなる。
くみというのは、あみの妹だ。
とたんに……わら半紙が、急に上等な紙でできた賞状のように見えてきた。
「なんか最近、くみちゃんの様子がおかしくてね。それでどうしたのかなって思って部屋に行ったら、チリかごの中のこれを見つけちゃったのよ。大事にしなよ?くみちゃんから奪い取るの、大変だったんだからね!」
そんな風に語られた経緯に……あみのような姉を持ってしまったくみちゃんを、心から不憫に思ってしまった。
そしてぼくも……十分巻き込まれ事故だ。
くみちゃんの気持ちを知りたかったような、知りたくなかったような……複雑な心境だった。

先日、ぼくは虫取りに出かけた。
が……家を出てすぐに、くみちゃんに声をかけられた。
それは、いつもの……よくあることだった。
「次郎さん、今日はどこへ行くの?」
くみちゃんは、いつも窓のところにいて、必ず話しかけてくれる。
「学校の裏山で、虫取りをするんだよ」
「すごい!次郎さんって、どんな虫を捕まえるの?」
「クワガタとか、カブトムシとか……見つけられたらタマムシとか?」
「ふーん。どれもわからないや。くみは、あまりお外に出られないから」
「じゃあ帰りに見せてあげるよ」
「……ほんと?でも、虫って怖くない?」
「虫が悪さをしないように、かごに入れておくから大丈夫。虫かごの虫なら、くみちゃんも怖くないだろ?」
「うん。じゃあ、楽しみに待ってるね」
出かけるたびにそんな話をして。
帰ってくる時……くみちゃんは、そこに居たりいなかったり。
ーーそういえば、あの時も赤いほっぺたをしてたっけ……。
くみちゃんはすぐに熱を出してしまうらしい。
そんな風だから……次郎にとって、くみちゃんは気になる存在ではあった。

『こんな手紙を書いてくれてたんだよ?ラブレターだよ?あんたも男なら、くみちゃんに何か買ってプレゼントしてあげてね!』
そう、あみに言われたからというのもある。
帰り道に、山田商店という駄菓子屋さんに行ってみた。
ーーラブレターをもらうって、そういうものなのか……。
何だか違和感を覚えつつも……店先から商品をのぞく。
くみちゃんへ、嬉しい手紙のお返しがしたいと思ったのは確かだ。
だが……今月のお小遣いは10円。
お店のものは、だいたい10円。そして、どれもこれもくみちゃんにあげたいものばかりで悩んでしまう。
ーーどうせなら一番喜んでくれるものを贈りたいなぁ……。
何を買ったら、くみちゃんが一等喜んでくれるのだろう……。
次郎は、お店の前で散々悩み……結局、その日は何も買わずに帰ることにした。
その足は、とても軽やかだった。
「帰りに、くみちゃんの家に寄ろう。それで、何が好きなのか聞けばいいじゃないか!」
そんな名案を思いついたからだ。
いつも、くみちゃんから声をかけてくれる。
だから……今から、トントンと窓をノックしたら、くみちゃんはどんな顔を見せてくれるのだろう。
何が好きと言うのだろう。
自分が『だいすき』と言ってもらえるに値する男なのか、どうかわからないけれど。
だいすきって言われても、どうしたらいいのかわからないけれど……。
ーー早く、くみちゃんと話がしたいなぁ。
隣で笑うくみちゃんが、見たいと思って。
次郎の軽やかな足は、その気持ちの分だけ、はやくなっていた。
