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【短編物語】『嘘をつきたいわけじゃない』 #青ブラ文学部


山根さんの企画に参加させていただきます。
●お題「黙っているのは嘘つきと同じよ」
◯裏テーマ
「口は災いの元」「言わぬが花」「沈黙は金」

        ***

口は災の元。言わぬが花。

そう思わざるを得ない環境で育ったせいか……僕は無口なほうだ。

あまり話さないから、表情も乏しい。


「まぁ、沈黙は金とも言うけどね……」
僕の専任指導係だった聖子さんは、ため息をつきながらそう言った。

「苦手なら、無理に雑談しなくてもいいわ。でも聞くに徹するなら、とにかく笑顔!
第一印象は大切よ。余裕のある笑みを見せて……その間に頭をフル回転させなさい。
乙川くん、言うことは的確だと思うの」

聖子さんはそんな言い方で、僕を肯定してくれた。

ーーあれ。なんでこんなことを考えているんだっけ……?

頭が痛む中、ぼんやり考えていた。
体が熱くて……だるい。

ーーあぁ、やばいやつだ。

聖子さんのお見舞いに行って……土産なのかお礼なのか、もらってしまったようだ。

「何やってんだよ……」

こんなざまを知られたら、聖子さんの方が落ち込んでしまう。


そんな矢先……スマホが鳴った。
その聖子さんからの電話だった。

仕事のことか、私用の用事か……。

でも。
声が聞きたい気がして、つい通話ボタンを押してしまう。

……きっと、熱のせいだ。


「あ。乙川くん?聞きたいことがあるんだけど……いま、大丈夫」

電話口の聖子さんは、なぜかお怒り気味の声に聞こえた。

「はい……」
「変なこと聞くけど……あなた、金曜日に私の家に来てたりする?」
何があったのかと思ったのだが……まさかの問いかけに絶句する。

「黙っているのは嘘つきと同じよ。教えて」
聖子さんが問い詰めてきた。

口は、嘘をつく。
でも……黙っていても、嘘つきになれてしまうらしい。


あの時。
お見舞いに行って、いろいろ会話もしたはずなのに、まさか覚えていないのか……。

それとも、あれは盛大な寝言だったのか。

ーーいや、あり得そうだ。

だって、聖子さんだから。
大方、夢か現実か……と、今更パニックになって、冷静沈着なふりをしているのだろう。

ーーそれでも。僕に連絡をくれたんだ……。
思わず笑みが浮かんでしまう。

「覚えてないんですか?あんなに、いろいろ話したのに」
そっと囁いてみたら、声がかすれた。

ーーあ、やば……。

そして、見逃してくれる聖子さんではない。

「乙川くん?その声どうしたの?もしかして、風邪?」

……ならばいっそと、ほくそ笑む。

「ちょうどよかった。置いてきた薬、まだ残っていたら僕にください。……お見舞いに行ったせいで、何だかもらい風邪です」

「え、そうなの?大丈夫?えっと……他に欲しいものとかない?」

仮面の外れた聖子さんが慌てるのが目に浮かぶ。

ーー来てください。……欲しいから。

口には出せず、そんな風に思っている僕は……どちらにしても嘘つきなのだろう。

「住所、言いますね……」
僕はかすれる声で、そっとささやいた。

山根さん、ありがとうございます😊

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