【おはなし】 雨の季節の夜物語 #3つのお題に空想のひらめきを
みかんさんの企画に参加します🥰。
●3つのお題(ファンタジー)
※イラストは企画のChatGPTのものを使わせていただきました。

ガタタン…ガタタン…
夜の7時。
独特な声のアナウンスと共に、紫陽花駅に眩しい光が差し込みました。
2番線ホームに入ってきたのは、夢見が丘駅からやってきた最終電車。
それも、7年に一度だけ到着する、特別電車です。
プシューという音ともに、電車のドアがゆっくり開くと。
ざわざわ揺らめく車内から、たくさんの光の粒が飛び出しました。
それは、今年生まれたホタルたち。
『わぁ……紫陽花がいっぱい!』
『とても綺麗だねぇ』
『ボク達、来れて良かったね』
ホタルたちは小さな声でささやき合いながら。
思い思いの場所に向かって、細い光の尾を描きながら飛んでいきました。
今宵は、星空の下。紫陽花の花々にも小さな灯りが灯るのでしょう。

紫陽花の咲き乱れる遊歩道に、虹色の長ぐつがポツリとありました。
誰か落としたのか。
それとも忘れたのか。
誰にも気づかれないように、ひっそりと。
長靴は、背筋をしゃんとしたまま静かにそこに立っていました。
雨が降って、夜が来て……。
それでも、何日も、何日も。
ある夜、月の光を浴びながら、それでもじっとしていると。
長靴は、からだがキラキラ輝きだしていることに気づきました。
悲しくて、切なくて、淋しくて。
でも流すことのできなかった涙を、月が見つけてくれたのでしょう。
その翌朝のことでした。
日が昇り、涙が朝露になって空に舞い上がっていくと。
だんだんからだも透き通りはじめました。
透明になった長ぐつは、空に自分と同じ色合いの虹がかかるのを見つけました。
長靴は、透明になってしまったので……もう誰にも見つけてもらえません。
でも。
長靴がまだそこにいることを、てるてる坊主だけは知っています。
みなさん。
紫陽花の咲く遊歩道を通ったら、どうか、てるてる坊主を探してください。
長靴はきっと、まだそこにいて。
誰かが来るのを、じっと、待っているかもしれません。

『今日は絶好の開店びよりだなぁ……』
黒猫マスターが空を見上げてそう言うと。
それを合図に『雨宿り喫茶しずく』がオープンします。
ここは、じわりと染み込むような、雨の夜にだけ開く喫茶店です。
マスターの淹れてくれる香り高い『しずくブレンド』の薄さは絶妙で。
寝入る前に飲んでも、安らかな眠りに誘ってくれます。
コーヒーが苦手な方は『雲のクリームソーダ』なんていかがでしょうか。
気持ちがパチパチはじけ、ふわふわ空に舞い上がるような後味が楽しめます。
ちなみに私のおすすめは『雨あがりのケーキ』になります。
食べると少しだけ切なくて。
悲しさや、苦しさ等の辛い涙をこぼした後のような……ほんのりあたたかな気持ちになりますよ。
鼻に抜けるような、湿った夜風のような風味も最高です。
え?私?
私は、今日は焼き菓子を求めて参りました。
挫けそうな時、やるせない時などにそっと口に放り込むと……抑え込んでしまった涙をとかしてくれるのです。
どれもほんの少しだけ塩味がきいておりますよ。
プレゼントや手土産にも最適です。
あ、やっぱり今日はオープン日。
お店に明かりが灯り、黒猫マスターが姿を現しました。
私はね、このお店の常連なのですよ。
みかんさん、ありがとうございました😊。
