【短編物語】 雨を待ち、天に願う #3つのお題に空想のひらめきを
みかんさんの企画に参加させていただきます🥰。(画像は、企画のchatGPTのイラストを使用させていただきました)
🎈お題①:「百年桜」
🐾お題②:「天女の羽衣」
⏳お題③:「雨を待つ龍」
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「わぁ……仁ちゃん見て!今年も桜の花が満開!」
村外れの神社にある桜の様子を見に来た桜夜が、感嘆の声を上げた。
「そりゃあ、春なんだから花は咲くだろぅ」
そう言いつつ、仁太はあくびをかみしめる。
今日も朝からやることはいっぱいだ。
温かくなった途端に、草が元気に伸び出したから……最近は田んぼや畑の作業の駆り出される日々。
疲れて帰っても、山のような手伝いが待っている。
ーーだからって、まさか早朝にたたき起こされるとは思わなかったな。
でも。
桜夜の頼み事だ。なんだかんだ言いつつ、全然嫌じゃなかった。
朝日を浴びたばかりの空には、まだ夜の片鱗があって。
朝焼けにぼんやり浮かぶ桜は、キラキラ輝いて見えた。
……あくびの涙のせいかもだけど。
「百年桜、最後に見れて良かった……」
桜夜がつぶやいたのだが。
桜に見とれていたから……うっかり聞き逃してしまった。
「ねぇ、仁ちゃんは知ってる?百年桜のいわれ」
「いわれ?」
「昔、おばばさまに聞いたんだ……」
そう言って、朝露が光る中……桜夜は昔話をはじめた。

むかしむかし……月が青く輝く美しい夜のこと。
天女が空から舞い降りて、不思議な池を見つけた。
その池の水は、昼間でも青く青く澄み渡っていることで有名だった。
あまりの清らかさに、水につかった倒木すら、何年もの間、朽ちずに水底で横たわっていて。
それが、息を潜める龍にも見え……村人たちに神域だと恐れられていた。
天女が地に降り立ったその時。
清らかに月の光を浴びるその池は、青白い光をそのまま、鏡のように空に跳ね返していたのだった。
天女は身体を清めようと思い立った。
だが。
羽衣が濡れてしまったら、もう天には戻れない。
天女は、羽衣を木にそっとかけた。
そして、その池の水でつま先を湿らせた……その時だ。
池の中にあった倒木が光りはじめ……一匹の龍に姿を変えた。
輝く銀の鱗に、青く澄んだ石の瞳。
天女は驚き、茂みの中に姿を隠したのだが……。
龍は、静かに池を出ると、そっと池に背を向けた。
まるで、羽衣を守り天女の水浴びの番人をするかのように。
それから……天女は水浴びをしに鏡の池を訪れるようになった。
言葉は交わさない、一年に一度の静かな逢瀬。
その青い満月の日だけが、龍の楽しみだった。

だが。
少しずつ、少しずつ雨が減り。
ひどい日照りが何年も続いた。
田畑はひび割れ、川の水は消えた。
鏡池の水も日に日に小さくなっていき……神域と呼ばれていたその土地すら、人々が踏みにじるようになった。
龍は、一人静かに空を見た。
人の行いに怒りがわくが……怒りに身を任せたら最後、空はそれに応えこの地を跡形もなく消し去るのだろう。
だが……雨は遠い。
雨雲を呼ぶのは容易いが……それは己の姿が消えること。
かの人が愛した、この土地を守る術を……龍は一人静かに思案した。
*
「それでね……ここに、この桜の木があるんですって。ねぇ仁ちゃん、ちゃんと聞いてた?」
ふいに桜夜の声が響いて、はっと目を開いた。
ーー桜が、なんだって?
肝心なところが、すっぽり聞こえていない気がする。
うたた寝でもしたのだろうか……切ない龍の夢を見た気がした。
一人で空を見上げ、天女を待つ龍の気持ちが己のことのように思えて……涙が溢れていて。
慌てて、袖で乱暴に顔をぬぐう。
「もう、仁ちゃんてば……寝てたんでしょ?もしや、今よだれを拭いたなぁ?」
そう言われても。正直に話すには気恥ずかしい。
「そんなことねぇし!もういいから帰ろうぜ。桜なんて、またいつでも見に連れてきてやるって」
何も知らずにそう言うと……桜夜は少し驚いたような顔をした。
「私が、ここに来れなかったら?」
まだ世界はとても狭くて。
日常は同じことの繰り返しだと思っていたから……それを、冗談だと思った。
「追いかけて声かけるから、心配すんな。また一緒にここに来ようぜ」
小さな頃の、そんな口約束。
それが、自分をどんな未来に連れて行くのか……。
その時はまだ、仁太は何も知らなかった。
***
こちらも、書けていない本編のスピンオフみたいになりました……💦。
