『ハラハラするんですけど』 〜アマノ文筆クラブ〜
甘野さんの企画に参加させていただきます☺️。
●今回のタイトル「ハラハラするんですけど」
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私はマナミ。
小さな保育所で保育士をしている。
子どもたちは、みんな可愛い。
毎日胸がキュンキュンする。
でも、保育士は……仕事外が大変だ。
宿題という名の持ち帰り仕事は当たり前。
それがなくても……買い物に行くにも、デートに行くにも、気を使う。
私の警戒心は、少し強いのだろうか。
ちなみに……。
私には結婚秒読みの彼がいる。
よく、運命の人に出会った時、鐘が鳴り響くと言うけれど。
初めて彼を見た時……警告音が鳴った。
ーー絶対、ない。
現れた車は、少し古い……エアロのついた、いわゆるヤン車。
フルスモーク。
出てきた彼は、明るい茶髪のロン毛にサングラス……。
瞬間。脳裏に、赤いパトライトが点滅してた。
そんな彼とは、とあるサイトで知り合った。
趣味が同じということから意気投合して。
その日は、彼の車で一緒に買い物に行く予定だったのだけど……。
ーーえ。ってことは、コレに私も乗るの?今から?ちょっとハラハラするんですけど……。
無事に帰れるのだろうかと……冷や汗を感じた。
そんな出会い。
……なのに、今に至る。
とりあえず怖い人ではなくて。
見た目と中身は、全く違っていたということだ。
そして。
彼と久しぶりに、仕事終わりに食事をすることになった。
結婚式に向けていろいろ話もしたくて。
ヤン車の中で笑い合いながら、幸せを噛みしめつつ、隣町のお店に向かった。
……と、その時。
お店に着き、車を止めようとすると……何やら嫌な視線を感じたのだ。
見てみると……Aちゃんママが、目の上に手をかざしてこちらをガン見している。
ーーしまった……。
「ごめん!このお店はもうダメ。違うところに変更させて!」
私は笑顔でAちゃんママに手を振りながら、彼に慌ててそう言った。
だって、人の噂は怖い。
ママネットワークなんて、さらにすごい。
でも。
「マナミ先生、見たよ〜。彼、めちゃくちゃかっこいじゃん!彼氏だよね?」
案の定、私は翌朝Aママに声をかけられたのだった。
「見られちゃいましたね。でもかっこよくないですよ。Aパパの方が全然素敵です」
「えー、すごくお似合いだったよ?もしかしてこのままゴールイン?」
笑顔が引きつる。
そもそもAちゃんは、受け持ちのクラスの子でもなければ、違う学年なのだ。
ほうっておいてくれ。
それに……これは探りか?
結婚のことは、まだ誰にも話していない。
そろそろ園長先生に声をかけるつもりだったのに……。
「そうだといいですが、どうでしょうね……」
遊びで付き合ってるとは言えないし。
あんな車の男友達がいるとも言えない。
……そもそも、後々のことを考えると、嘘は怖い。
もう、笑って誤魔化すしかなく……その場を逃げた。
世間話にマニュアルはない。
なのに、私は壊滅的に口下手だ。
人間関係が苦手だと、こういうときの対応は本当に困る。
壊してはいけない先生像がある気がしてならないから、買い物も……隣町まで行くしかない。
カゴの中をのぞかれるのは、怖いから。
ーー見ても、知らんぷりしてくれればいいのになぁ。
そう思った時だ。
「あ、マナミ先生おはようございます」
Bくんママにばったり会った。
「おはようございます。Bくん、もう教室ですか?」
Bくんはやんちゃ。
ママは大変そうだけど、かまってほしいが前面に出てて、それはそれでかわいい子。
「そうだけど……先生、大丈夫?」
眉間にシワを寄せた不安げな顔で、Bママがそう言った。
ーー相談?Bくんに何かあったのかな……。
不穏な空気を感じ、何だかハラハラしそうになりながら、その先を待った。
……のだが。
「Aママに聞いたよ。『マナミ先生、悪い男に騙されてる』って心配してて……」
「……は?」
「ほら、いろんな詐欺とか流行ってるし……気をつけてくださいね?」
「……」
思わぬ言葉に、声も出ない。
Aママは、いったい何をどう話したのだろう。
気をつけるのは……私のため?それとも園のため?Bくんのため?
そして……これは、どこまで広がっているのか……。
ーーちょっとぉ……ハラハラするんですけど。
ひきつり笑いのまま、私はしばらくそこから動くことができないでいた。
甘野さん、ありがとうございます😊
