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【短編物語】祖父の家 #3つのお題に空想のひらめきを


3つのお題(昭和ノスタルジー)に参加します。みかんさん、よろしくお願いします。
🎈お題①:「夕暮れの空き地」
🐾お題②:「祖父のラジオ」
⏳お題③:「兄のお下がり」
※イラストは、企画のChatGPTのものをお借りしました。
        ***

引っ越しをした。
めでたくもなんともない……親都合の引っ越しだ。
僕は、いつだって否応なしに……その波に揉まれるしかない。

だいたい……母さんも母さんだ。
「明日から、おじいちゃんの家で生活するから」
そう伝えられるまで、僕は、自分におじいちゃんという存在がいるなんて知らなかった。

ーーそんなんだから、父さんとも……。

いろいろ思うことも、言いたいこともあったけど……何の言葉も出てこなかった。

そんなわけで、僕の家は商店街にあるアパートの2階から、田舎町の祖父宅に変わったのだった。

一度も会ったことのない、存在していたことも知らない人と同じ屋根の下で暮らす……。
心配したって仕方がないのは分かっているのに『おじいちゃんって、どんな人だろう』と、思わずにはいられなかった。

「祖父のラジオ」

その家に着くと……母さんは当たり前のようにあちこちのドアを開け、棚をのぞき。
来るときに買ってきたお酒とかを、さっそく冷蔵庫に詰め込み始めていた。

思わずギョッとしてしまったけど……改めて、母さんの生まれ育った家なのだなと。
なんだか不思議な実感をしてしまった。


おじいちゃんという人は……自分の部屋にいて、見たこともない大きな機械に向かっていた。

小さなダイヤルを、あちこち少しずつ回しながら何やらブツブツ言っている背中は、難しそうな雰囲気しか漂っていなくて。

なんだか……開かずの金庫をこじ開けようとしているようにも見えて。
少しだけ嫌な感じがしてしまった。

挨拶はまた後にしようと思い……とりあえず、自分の部屋だと言われた場所に行ってみることにした。

「兄のお下がり」

……その部屋はすでに、僕のものではない段ボールやらに占拠されていた。

「あんたの部屋の荷物、近所のみっこちゃんがくれたやつよ。大切に使いなさいね!」

母さんの声が後から僕を追いかけてきたけど……ため息しか出ない。

どうやら僕は上山田小というところに行くらしい。
小学校なのに、まだ制服も帽子も残っているところ……ということだろうか。

……まぁ、なんだっていいけど。


それにしても。
部屋は誰のものだったのだろう……漫画もおもちゃもボードゲームもそのまんま置いてある。
おかげで……どう見ても、他人の部屋だ。

ひどく居心地が悪かった。

「夕暮れの空き地」

「今、空いてる?ちょっと、その辺を散歩するわよ」
母さんに言われて……渋々、靴を履いて表に出た。

まだ馴染めない家にいたいわけじゃない。
でも、母さんとどこかに出かけるなんて……恥ずかしいしかない。

だから。
少し距離をとって、あとに続く。
なんだかとても……惨めだった。


ふと、母さんの足が止まった。
何事かと顔を上げると……そこには公園らしきものがあった。
らしきものだと思ったのは……看板が立っていたからだ。

『危険です。入ってはいけません』

取り壊す予定の、公園なのだろうか。
なにのためにこんなところに来たのかと……そう思ったとき。

ようやく母さんが声を上げた。
「どう?」
……いや、どうもこうもない。
気分はずっと、最悪だ。

だが、お構いなしに母さんは言葉を続ける。
「ここね、あの人がずっと前に買ったのよ」

……あの人というのは、父さんのことなのか。
それとも、おじいさんのことなのか。
何も言えないでいると……母さんは振り返って、僕の顔を見た。

「今まで、いっぱい我慢させてごめんね。もう大丈夫だから。もうすぐ、ここにお家が建つの。あの人も一緒。ゆっくりでいいから……ここで、みんなで新しくやり直そう」

夕日を浴びて赤く染まる母さんの顔は……お酒のせいではなく赤らんでいて。
目は潤んでいて。

……僕も、涙が溢れそうになった。

父さんは単身赴任が長くて……ずっと別々に暮らしていた。
それを面白がる奴らもいて。
変に騒がれ、気づいたら……学校で誰とも話せなくなっていた。
最後に声を出したのは、いつだろう。
僕は……別れを告げるような子もいないまま、田舎に転校をしたのだった。

引っ越しは親の都合。
……でも、それは僕の事をいろいろ考えて、二人で出した答えだったらしい。

「あんたの部屋ね、昔あの人が使っていた部屋なんだって。お義父さんってば、淋しくてそのまんまにしてたみたい。
あの人が好きだったからって、古いラジオなんか引っ張り出して、張り切って修理しちゃってさ……。あんなに結婚に反対していたっていうのに、丸くなったもんだわ」

母さんがそう言って笑うから。
今もラジオと格闘しているだろうおじいちゃんは、なぜか微笑んでいるような気がした。

「まぁ、新しい家が建つまでの仮住まいにしては、申し分ないし。もうすぐあの人も帰ってくるし。
ここに来て、良かったって……そう思える生活を送りましょ」

……母さんは、何というかやっぱり母さんだ。
迷惑に思える時もあるけど……どこに行っても、羨ましいくらい自分勝手。

夕焼けで赤く染まる景色は、まるで夢でも見ているみたいに美しくて。

そんな中で、僕は、そっと頷いた。
今にも溢れそうな涙で、あたりはゆらゆらと揺れていた。

ーーあの家に帰ったら……おじいちゃんのラジオでも聞きながら、父さんの思い出探しをしてみよう。

そっと、思った。

        ***

長くなっちゃって、ごめんなさい💦
読んでくださりありがとうございました😊

*こちらに収録していただきました✨️

みかんさん、ありがとうございました☺️。


宵空♂さん、ありがとうございました😊。

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