見出し画像

#51 レゾナック誕生に向けた1兆円の大勝負

かねまる(@chem_fac)と申します。化学メーカーで生産技術の仕事をしながらプラントの技術者向けの技術解説ブログ化学や工場に関するトピックを紹介するPodcastで発信しています。

今回は、更新したPodcastの紹介です。

約1兆円という大きなリスクを伴いながら昭和電工が日立化成を買収した話をしています。

noteでは文章バージョンを載せていますので、音声・文字好きな方を目次から選んでください


音声配信

LISTEN (host)

Spotify

Amazon Music

Apple Podcast

YouTube

文章バージョン

レゾナックの誕生と背景

まずは、今回の主役であるレゾナックという会社について紹介します。

「レゾナック」という社名を聞いてピンと来ない方も、「昭和電工」と言われると「ああ、あの会社か」とイメージが湧くかもしれません。レゾナックは、この昭和電工が大規模な統合を経て生まれ変わった新しい社名です。

昭和電工は、1939年に「日本電気工業」と「昭和肥料」という2社が合併して誕生した老舗の化学メーカーです。その昭和電工が、令和の時代にもう一度大きな統合を行いました。

ことの始まりは2019年末。昭和電工は日立化成を買収します。日立化成は、日立製作所グループの一員として成長してきた会社です。

買収金額は約8.8億ドル。日本円に換算すると、約1兆円近い規模になります。約1兆円というのは、企業にとって非常に大きなリスクを伴う投資です。それでも昭和電工がこの決断に踏み切った背景には、日立化成がリチウムイオン電池材料や半導体材料といった先端材料分野に強みを持っていた、という事情があります。

この買収によって、昭和電工は一気に先端材料分野を強化し、グローバルな競争に対抗しようとしました。

2020年には、日立化成の社名が「昭和電工マテリアルズ」に変更され、昭和電工の連結子会社という位置付けになります。そして2023年1月、昭和電工と昭和電工マテリアルズが正式に合併し、新しい社名「レゾナック」が誕生しました。

昭和の時代から続いてきた「昭和電工」という社名が消え、新しいブランドとしてレゾナックが生まれたわけです。このニュースは、日本の化学業界でも大きな話題になりました。

レゾナックという社名には、「共鳴する・響き渡る」を意味する “Resonate” と “Chemistry” を組み合わせた意味が込められているとされています。

「化学の力で世の中に共鳴を起こす」という想いが社名に反映されていて、ユニークで前向きな名前だと感じています。私自身、最初にこの名前を見たときは「ケミストリー要素、Cだけなんだ!」と思ったりもしましたが、今ではすっかり馴染んできました。


機能性化学品への移行と事業再編

レゾナック誕生の背景には、国内外の激しい競争環境があります。特に半導体や電池材料といった先端分野では、研究開発や設備投資の規模が非常に大きく、開発競争が熾烈になっています。

こうした分野で勝ち残るには、研究開発費や設備投資を継続的に投じるだけの体力、つまり「スケールメリット」が必要です。企業の統合は、そのスケールメリットを確保するための強力な手段の一つです。

昭和電工が日立化成を取り込んだのも、まさにこのスケールメリットを求めての決断だったと言えます。

ただし、レゾナックの戦略で注目すべきなのは、買収して終わりではなく、その後の事業再編まで踏み込んでいる点です。

統合後、レゾナックは伝統的な石油化学部門を一部、分社化して切り離しました。具体的には、「クラサスケミカル」という会社を設立し、レゾナックの石油化学部門の事業を移管しています。

これは、これまで国内の産業を支えてきた基礎化学品、つまり石油化学品の事業を切り出し、高付加価値な電子材料や先端材料に経営資源を集中させる、という思い切った動きを意味します。

長年の「大黒柱」とも言える基礎化学品を手放してでも、新しい分野に賭ける。その覚悟がレゾナックの事業構造の変化から感じられます。

この決断に至った背景として分かりやすい指標が、「エチレンプラントの稼働率」です。エチレンは石油化学の起点となる基礎原料で、この稼働率が悪いということは、その川下にあるさまざまな化学製品の需要も弱い、つまり化学産業全体が下振れしているサインになります。

石油化学工業協会などの資料を見ると、エチレンプラントの稼働率は、良いときには90%程度で推移していました。しかし近年は90%を下回る状況が常態化し、最近では80%を割り込んで70%台で推移するような、かなり厳しい状態も見られます。

こうした環境では、汎用の石油化学品だけで戦うのは難しくなってきます。そこでレゾナックは、汎用品の価格競争が中心となる市場ではなく、製品の「機能」で勝負する市場、つまり機能性化学品の分野に軸足を移そうとしています。

昭和から令和へと大きく舵を切った化学メーカー、レゾナック。先端材料に集中することで、どのような技術革新を生み出していくのか、今後の動きが非常に楽しみです。

お便りフォーム

番組へのお便りは概要欄にあるお便りフォームから投稿ください。

(宣伝)プラント技術ブログ「ケムファク」

プラントの技術者向けに技術解説記事を書いています。化学工学、配管、機械、電気計装、データサイエンスなど幅広いジャンルに対応しています。

過去の放送はこちらから

いいなと思ったら応援しよう!

この記事は noteマネー にピックアップされました

noteマネーのバナー