第2章 ㉕ 主人の決断を受け入れた日
「肺の手術はしないことにした。」
お見舞いに行って、数分後のことだった。
私は、すぐに受け入れた。
何日も答えが出せないほど
主人が一人で真剣に考えたことが分かっていたから。
主人も、シングルマザーの片親で育った。
その母も、私と出会う前に亡くなっている。
だから、心から話せる相手は私しかいなかった。
きっと病院のベッドの上で
何日も何日も考え続けていたんだと思う。
早く答えを出さなきゃ。
そう思いながら、孤独に耐えていたんだと思う。
「色々考えたんだ。酸素をつけながら、不便な生活をする自分を想像できないんだ。」
「その生活になったら、自分が自分じゃなくなる気がして……。」
「うん。分かった。」
「私も全然想像できないよ。」
「だから、パパが決めた答えに反対はしないよ。」
この日、私たちは一大決心をした。
怖かった。
本当に、怖かった。
「誰か、教えて。」
「何が正しいの?」
心の中で何度も叫んだ。
でも、答えはどこにもなかった。
そして私は、まだ何も分からない幼い娘に向かって話しかけた。
「あなたはどうしたらいいと思う?」
「ママに教えて。」
もちろん、娘から答えが返ってくることはなかった。
それでも私は
この小さな命を守りながら、主人の人生を決めるという大きすぎる選択の前に立っていた。
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