中国輸入Amazon販売は簡易課税と本則課税、どっちが有利?初心者向けにやさしく解説
中国輸入Amazon販売を続けていると、思ったより早く年間売上が1,000万円を超えることがあります。
私自身もAmazon販売を始めてから売上が伸び、消費税の申告方法について考える必要が出てきました。
ところが、消費税について調べると、
簡易課税
本則課税
仕入税額控除
みなし仕入率
輸入消費税
基準期間
特定期間
など、難しい言葉が次々に出てきます。
最初に見たときは、
結局、どちらを選べば税金が安くなるのか?
が非常に分かりにくいと感じました。
この記事では、中国輸入Amazon販売をしている人に向けて、簡易課税と本則課税の違いを、できるだけ簡単な言葉と具体例で解説します。
この記事は一般的な制度の解説です。実際の判定は、過去に提出した届出書、インボイス登録の有無、売上、輸入方法などによって変わります。最終的には税務署または税理士へ確認してください。
結論:実際に払った消費税が「売上税額の80%」を超えるかで考える
中国輸入Amazon販売で、仕入れた商品を一般消費者へほぼそのまま販売している場合、簡易課税では通常、小売業に当たる第2種事業として扱われ、みなし仕入率は80%です。
ただし、卸売、OEM、製造、複数事業を行っている場合などは区分が変わる可能性があるため、個別確認が必要です。
簡単にいうと、判断の目安は次のとおりです。

つまり、
実際に払った消費税が多い年は本則課税、少ない年は簡易課税が有利になりやすい
ということです。
ただし、「商品原価が売上の80%を超えている」という意味ではありません。
比較するのは商品代金ではなく、その中に実際に含まれている控除可能な消費税額です。
ここは中国輸入で特に間違えやすいポイントなので、後ほど詳しく解説します。
まず消費税の基本を小学生向けに説明すると
消費税の基本的な仕組みは、次のように考えると分かりやすいです。
あなたがお店を経営して、商品を税込1,100円で売ったとします。
この1,100円のうち、
商品の本体価格:1,000円
消費税:100円
というイメージです。
この100円は、すべて自分の利益ではありません。
お客さんからいったん預かり、後から国へ納める消費税です。
しかし、商品を仕入れるときにも、あなた自身が消費税を払っています。
例えば、国内の業者から税込660円で商品を仕入れた場合、
商品の本体価格:600円
自分が支払った消費税:60円
となります。
この場合、単純化すると納める消費税は次のようになります。
お客さんから預かった消費税 100円
− 仕入れ時に払った消費税 60円
= 国へ納める消費税 40円この「自分が仕入れや経費で支払った消費税を差し引くこと」を、仕入税額控除といいます。
難しい言葉ですが、
すでに自分が払った分は、二重に払わなくてよい仕組み
と考えると分かりやすいです。
簡易課税と本則課税の違いを一言でいうと
2つの違いは、「自分が払った消費税をどのように計算するか」です。
本則課税
実際に自分が払った消費税を集計する方法
簡易課税
実際にいくら払ったかを細かく計算せず、業種ごとの決められた割合で計算する方法
中国輸入Amazon販売を一般的な小売業として簡易課税で計算する場合は、
売上にかかる消費税の80%を、仕入れで払ったことにしましょう
という扱いになります。
そもそも、いつから消費税を申告するのか
個人事業主は、売上が1,000万円を超えた年から、すぐに消費税を支払うとは限りません。
原則として、今年が課税事業者になるかどうかは、前々年の課税売上高で判断します。
例えば、2027年に消費税の申告が必要かどうかは、原則として2025年の課税売上高を確認します。
2025年の課税売上高が1,000万円を超えていれば、2027年は課税事業者になるという考え方です。
なぜ2年前を見るのか
学校の成績に例えるなら、
今年のクラス分けを、2年前の成績を基準に決める
ような仕組みです。
少し不思議ですが、消費税では原則として2年前の売上を使います。
前年上半期の売上も消費税の判定に関係する
消費税の課税事業者になるかどうかは、原則として前々年の課税売上高だけで判断するわけではありません。
個人事業者の場合、前年の1月1日から6月30日までが「特定期間」とされており、この期間の課税売上高が1,000万円を超えると、前々年の課税売上高が1,000万円以下でも、翌年から課税事業者になる場合があります。
ただし、ここには重要な例外があります。
特定期間の1,000万円判定については、課税売上高の代わりに、その期間中に支払った給与等の金額を使って判定することもできます。
例えば、
2025年の年間売上:800万円
2026年1月〜6月の課税売上高:1,200万円
2026年1月〜6月の給与等支払額:1,000万円以下
だった場合、課税売上高だけを見ると1,000万円を超えていますが、給与等支払額を基準に判定することで、特定期間のルールによって2027年から課税事業者になることを避けられる場合があります。
そのため、「前年上半期の売上が1,000万円を超えたら必ず翌年から消費税を払う」というわけではありません。
中国輸入Amazon販売のように短期間で売上が伸びるビジネスでは、前々年の課税売上高だけでなく、前年上半期の課税売上高や給与等支払額も確認しておくとよいでしょう。
※インボイス登録をしている場合など、ほかの理由によって課税事業者になるケースもあります。
インボイス登録をしている人は売上1,000万円以下でも申告が必要
インボイス発行事業者として登録している場合は、基準期間や特定期間の売上が1,000万円以下でも、原則として課税事業者になります。
つまり、
売上が1,000万円以下だから、絶対に消費税を申告しなくてよい
とは限りません。
最初に確認したいのは次の4点です。
前々年の課税売上高
前年1月〜6月の課税売上高
インボイス登録の有無
自分から課税事業者になる届出を出していないか
簡易課税とは
簡易課税は、名前のとおり、消費税の計算を簡単にする制度です。
実際に仕入れや経費で払った消費税を一件ずつ計算する代わりに、業種ごとに決められた「みなし仕入率」を使います。
基準期間の課税売上高が5,000万円以下で、事前に必要な届出をしている事業者が利用できます。
小売業のみなし仕入率は80%
中国から仕入れた商品を、形をほぼ変えずに一般消費者へ販売する一般的な小売業なら、第2種事業のみなし仕入率は80%です。
例えば、売上にかかる消費税が100万円だったとします。
簡易課税では、
売上にかかる消費税 100万円
× みなし仕入率 80%
= 払ったことにする消費税 80万円と計算します。
国へ納める消費税は、
お客さんから預かった消費税 100万円
− 払ったことにする消費税 80万円
= 納付する消費税 20万円となります。
「みなし」とはどういう意味?
「みなし」は、
実際はどうだったかを細かく確認せず、そうだったことにする
という意味です。
小学生のお小遣いに例えるなら、
毎月のお小遣いの80%は文房具に使ったことにして計算します
というルールです。
実際にはお小遣いの50%しか使っていなくても、90%使っていても、計算上は80%使ったことにします。
これが簡易課税です。
簡易課税のメリット
簡易課税の主なメリットは次のとおりです。
実際に払った消費税を細かく計算しなくてよい
納税額を予測しやすい
実際の課税仕入れが少ない場合は税額が安くなりやすい
経理作業が比較的分かりやすい
例えば、実際に払った控除可能な消費税が60万円しかなくても、簡易課税なら80万円払ったことにして計算できます。
本則課税なら
100万円 − 60万円 = 40万円納付
簡易課税なら
100万円 − 80万円 = 20万円納付この場合は、簡易課税の方が20万円有利です。
簡易課税のデメリット
簡易課税では、実際に多額の消費税を払っていても、原則として決められた割合までしか使えません。
例えば、実際には120万円の控除対象消費税を払っていたとします。
それでも簡易課税では、80万円払ったものとして計算します。
売上にかかる消費税 100万円
− みなし仕入税額 80万円
= 20万円納付実際に120万円払っていたことは、簡易課税の計算には反映されません。
そのため、仕入れや設備投資が大きい年は、簡易課税が不利になることがあります。
本則課税とは
本則課税は、「実際の数字」を使って計算する方法です。
商品を輸入したときに税関へ払った輸入消費税
Amazon関連手数料に含まれる消費税
国内送料に含まれる消費税
国内の広告費や外注費に含まれる消費税
など、控除の条件を満たす消費税を集計します。
そして、お客さんから預かった消費税から差し引きます。
基本的な考え方は次のとおりです。
お客さんから預かった消費税
− 自分が実際に払った控除可能な消費税
= 納付額または還付額本則課税では、実際の課税仕入れ等にかかる消費税をもとに仕入税額控除を計算します。
本則課税のメリット
実際に払った消費税を計算に反映できる
仕入れや広告費が大きい年に有利になりやすい
払った消費税が売上の消費税を超えれば還付の可能性がある
大量仕入れや設備投資を行う年に有利になる場合がある
本則課税のデメリット
取引ごとに消費税の区分を確認する必要がある
帳簿や請求書などの管理が複雑になりやすい
輸入許可書などの書類保存が重要になる
実際の課税仕入れが少ないと簡易課税より納税額が増える
特に輸入許可書の保存は必須で、例えば船便の海源であれば以下の公式サイトから追跡番号を番号を検索して輸入許可書をダウンロードする必要があります。

これを保存しておかないと、仕入れ控除の対象として認められないです。
ただ、デメリットを記載しましたが、今はAIがあるので、本則課税でもスムーズに数字をまとめて申告できますね。
数字で比べると違いが分かりやすい
説明を簡単にするため、売上にかかる消費税を100万円とします。
実際の申告では、返品、値引き、税率区分、地方消費税なども関係するため、以下は考え方を理解するための例です。
ケース1:仕入れや広告が多い年
実際に控除できる消費税が120万円だったとします。
本則課税
お客さんから預かった消費税 100万円
− 実際に払った消費税 120万円
= 20万円の還付となる可能性簡易課税
お客さんから預かった消費税 100万円
− みなし仕入税額 80万円
= 20万円納付結果は次のとおりです。

同じ年でも、選んでいる制度によって40万円の差が出る可能性があります。
ケース2:仕入れや経費が少ない年
実際に控除できる消費税が65万円だったとします。
本則課税
100万円 − 65万円
= 35万円納付簡易課税
100万円 − 80万円
= 20万円納付この場合は、簡易課税の方が15万円有利です。
ケース3:実際に払った消費税が80万円
本則課税 100万円 − 80万円 = 20万円
簡易課税 100万円 − 80万円 = 20万円この場合はほぼ同じです。
だからこそ、
実際の仕入税額控除が80%を超えるか
が分かりやすい判断基準になります。
中国輸入で一番勘違いしやすいポイント
中国の商品代金すべてが仕入税額控除になるわけではない
中国輸入では、商品代金が大きいため、
中国の工場へ500万円払ったなら、その10%の50万円を控除できるのでは?
と思うかもしれません。
しかし、通常、中国の工場へ支払った商品代金には、日本の消費税は含まれていません。
つまり、中国の工場へ500万円払っても、
日本の消費税を50万円払った
という扱いにはなりません。
中国から商品を輸入した場合は、商品を日本へ入れるときに、税関で輸入消費税を支払います。
本則課税で重要になるのは、主にこの税関で実際に支払った輸入消費税です。
消費税は、輸入品を保税地域から引き取る際にも課税されます。
スーパーの買い物に例えると
国内のお店で税込1,100円の商品を買った場合、代金の中に100円の日本の消費税が含まれています。
しかし、中国のお店へ1,000円払った場合、その1,000円の中に日本の消費税は含まれていません。
その代わり、日本へ輸入するときに税関から、
日本で受け取るなら、ここで輸入消費税を払ってください
と言われます。
その税関で払った金額が、本則課税で重要になります。
輸入申告者の名義にも注意
輸入消費税を控除するには、誰が輸入したことになっているかが重要です。
例えば、あなたが商品を購入していても、輸入書類上の輸入申告者が代行業者になっている場合、自分側で輸入消費税を控除できない可能性があります。
そのため、代行業者を利用するときは、次の点を確認した方がよいでしょう。
輸入申告者の名前は誰か
輸入許可書に自分や自社の名前があるか
輸入消費税の金額が分かるか
輸入許可書を受け取れるか
書類を保存できているか
分かりやすくいうと、
自分が税金を払った証拠となる書類を持っているか
が重要です。
中国輸入で控除対象になり得る費用
要件を満たす場合、一般的には次のような支出に含まれる消費税が控除対象になり得ます。
税関へ支払った輸入消費税
国内のAmazon関連手数料
FBA関連費用
国内配送費
国内事業者へ支払う撮影費
国内事業者へ支払うデザイン費
国内の課税対象広告費
国内事業者への外注費
パソコンや事務用品などの課税対象購入費
一方、次のような支出は、金額が大きくても仕入税額控除を増やさないことがあります。
中国工場へ支払った商品代金そのもの
給与・役員報酬
借入金の元本返済
事業主の生活費
消費税が課されない支出
必要な書類を保存できていない支出
なぜ給与は控除できないのか
従業員へ30万円の給与を払っても、その給与の中に消費税は含まれていません。
スーパーで商品を買うと消費税を払いますが、従業員へ給料を払うときに、
給料30万円+消費税3万円
とはなりません。
そのため、給与は経費にはなりますが、仕入税額控除を増やす支出ではありません。
これが、
赤字なのに消費税を払うことがある
理由の一つです。
「赤字なら必ず還付」は間違い
会計上赤字だからといって、必ず消費税が還付されるわけではありません。
例えば、次のような状態を考えます。
売上 1,000万円
仕入れ・経費 1,100万円
会計上の赤字 100万円一見すると、赤字なので消費税も返ってきそうに感じます。
しかし、赤字の主な原因が、
給与
借入金返済
生活費に近い支出
消費税がかからない支出
だった場合、控除可能な消費税はそれほど増えません。
逆に、会計上は黒字でも、年末に商品を大量輸入して多額の輸入消費税を払った場合、本則課税では還付が発生する可能性があります。
消費税で見るべきなのは、
利益が赤字か黒字かではなく、
お客さんから預かった消費税
と
自分が実際に払った控除可能な消費税のどちらが多いかです。
売れ残った在庫の消費税はどうなる?
ここも所得税と消費税の違いが分かりにくいポイントです。
例えば、12月に商品を100個輸入したとします。
その年に売れたのは10個で、残り90個は在庫として残りました。
所得税・会計の考え方
残った90個は、まだ売れていないため、その年の売上原価へ全額入らないことがあります。
消費税の考え方
本則課税では、原則として、その商品を仕入れたり輸入した課税期間に、輸入消費税等を仕入税額控除へ反映します。
つまり、
まだ売れていないから、輸入消費税も90個分は翌年へ持ち越す
とは限りません。
消費税では、仕入れを行った時期を基準に考えるのが原則です。
ただし、免税事業者から課税事業者へ変わる場合などには、在庫の調整に関する特別なルールがあります。
免税事業者から課税事業者になるときの「在庫調整」とは?
免税事業者だった期間に仕入れた商品は、その時点では仕入れにかかった消費税を差し引けません。
しかし、課税事業者になった日の前日に、その商品がまだ売れずに在庫として残っている場合は、その在庫に対応する消費税を、課税事業者になった年の仕入税額控除へ加えられる場合があります。
例えば、2026年12月31日までは免税事業者で、2027年1月1日から課税事業者になるケースを考えます。
2026年中に仕入れた商品100個のうち、年末に40個が売れ残っていたとします。
この40個は、免税事業者だった2026年に仕入れた商品なので、仕入れた時点では消費税を控除できません。
しかし、2027年から課税事業者になる場合は、年末に残っていた40個分について、一定の方法で計算した消費税額を2027年の仕入税額控除へ含められる可能性があります。
つまり、
課税事業者になる前に仕入れた商品でも、課税事業者になった時点で売れ残っていれば、消費税を差し引けるように調整する仕組み
です。
反対に、課税事業者から免税事業者へ変わる場合には、免税事業者になった後に販売する在庫について、直前の年に仕入税額控除を受けられないよう逆方向の調整が必要になることがあります。
この調整を受けるには、課税事業者へ変わる直前に残っていた商品の数量、仕入金額、仕入時期などを記録した在庫明細を作成し、原則として7年間保存する必要があります。
本則課税が有利になりやすいケース
1.Amazon販売を始めたばかりの時期
立ち上げ期には、売上が少ない一方で、
商品仕入れ
輸入消費税
広告
撮影
デザイン
パソコンや機材
などの支払いが多くなります。
このように売上より先に投資が増える時期は、実際の仕入税額控除が80%を超え、本則課税が有利になる可能性があります。
2.新商品を大量に投入する年
新商品を増やすと、
仕入れ数量
輸入回数
広告費
撮影・カタログ作成費
が増えます。
その結果、控除できる消費税が増え、本則課税が有利になることがあります。
3.年末に在庫を大きく積む年
春節前の仕入れなどで、年末までに大量の商品を輸入する場合です。
商品がまだ売れていなくても、その課税期間に支払った輸入消費税が、本則課税の仕入税額控除へ反映される可能性があります。
4.設備投資が多い年
高額なパソコン
撮影機材
倉庫設備
システム開発
国内事業者への外注
など、消費税がかかる投資が大きい年です。
簡易課税が有利になりやすいケース
1.既存商品だけで売上が安定している
新商品をあまり増やさず、過去に作った商品ページから安定して売上が立っている場合です。
売上は大きい一方で、新たな輸入や広告費が少なければ、実際の仕入税額控除は80%を下回る可能性があります。
2.利益率の高い商品を販売している
販売価格に比べて、
輸入消費税
広告費
国内外注費
が少ない商品です。
ただし、会計上の利益率だけでなく、実際に控除できる消費税の割合を確認する必要があります。
3.給与の割合が高い
給与は経費になりますが、消費税の仕入税額控除にはなりません。
そのため、経費の多くが給与である事業は、本則課税より簡易課税が有利になる場合があります。
4.経理作業を簡単にしたい
本則課税では、取引ごとに、
課税
非課税
不課税
税率10%
軽減税率8%
などを分ける必要があります。
簡易課税は、売上と業種区分を中心に計算できるため、経理負担を抑えやすいメリットがあります。
2割特例を使える可能性も確認する
インボイス制度をきっかけに、免税事業者からインボイス発行事業者になった一定の人には、「2割特例」があります。
2割特例では、納付税額を売上にかかる消費税額の2割として計算できます。
例えば、売上にかかる消費税が100万円なら、
100万円 × 20%
= 20万円納付という計算です。
個人事業主の場合、要件を満たせば令和8年分まで対象となり得ます。
ただし、次のような場合は対象外になる可能性があります。
前々年の売上が1,000万円を超えて自然に課税事業者になった
特定期間の条件で課税事業者になった
2割特例の対象要件を満たしていない
重要なのは、
なぜ自分が課税事業者になったのか
を確認することです。
「個人事業主は令和8年分まで2割特例を使える」とは?
2割特例とは、インボイス制度をきっかけに、免税事業者からインボイス発行事業者になった人の消費税負担を軽くする制度です。
通常の本則課税のように、仕入れや経費に含まれる消費税を細かく計算せず、
売上にかかる消費税 × 20%
= 納付する消費税として計算できます。
例えば、売上にかかる消費税が100万円なら、納付額は原則20万円というイメージです。
2割特例を利用できるのは、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日を含む課税期間です。
個人事業主は通常、1月1日から12月31日までを一つの課税期間としているため、要件を満たせば次の申告が対象になります。
令和5年分:2023年10月から12月分
令和6年分:2024年分
令和7年分:2025年分
令和8年分:2026年分
つまり、「令和8年分まで対象」とは、
2026年1月1日から12月31日までの取引について、2027年に行う消費税申告まで2割特例を使える可能性がある
という意味です。
ただし、すべての個人事業主が使えるわけではありません。
主な対象は、もともと売上1,000万円以下の免税事業者だったものの、インボイス登録をしたことで課税事業者になった人です。
前々年の課税売上高が1,000万円を超えたことで、インボイス登録とは関係なく課税事業者になった人などは、原則として2割特例を利用できません。
そのため、
自分が課税事業者になった理由が「インボイス登録」なのか、「売上1,000万円超え」なのか
を最初に確認する必要があります。
届出は申告するときではなく、前もって必要
簡易課税と本則課税は、確定申告の直前に計算して、安い方を自由に選べるわけではありません。
簡易課税をやめて本則課税へ戻す場合は、原則として、変更したい課税期間が始まる前日までに「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を提出する必要があります。
個人事業主が翌年1月1日から本則課税へ戻したいなら、原則として前年中の提出が必要になります。
また、簡易課税を適用すると、原則として2年間はやめられません。
翌年だけでなく2年分を考える
例えば、次の予定だったとします。
2027年
新商品をほとんど出さない
広告費も少ない
簡易課税が有利
2028年
大規模なOEMを開始
大量輸入を予定
本則課税が有利
2027年だけを見ると簡易課税が得でも、原則2年間やめられないため、2028年に本則課税へ変更できない可能性があります。
そのため、最低でも翌年と翌々年の投資予定を見て判断する必要があります。
過去の簡易課税届出書は自動的に消えないことがある
私自身、以前に「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出していました。
平成時代の24歳くらいの時です。
ここで注意したいのは、簡易課税の届出書は、一度出した後にしばらく簡易課税を使っていなかったとしても、自動的に無効になるとは限らないことです。
不適用届出書を提出していなければ、後から再び条件を満たした年に、簡易課税が適用される可能性があります。
過去に提出した記憶がある人は、税務署へ次の点を確認した方がよいでしょう。
簡易課税制度選択届出書をいつ出したか
不適用届出書を提出しているか
現在も効力が残っているか
2年間の継続期間が終わっているか
小学生でも分かる最終判断の方法
難しい計算を抜きにすると、次の3段階で考えます。
ステップ1:お客さんから預かった消費税はいくらか
例:
売上にかかる消費税 100万円ステップ2:実際に控除できる消費税はいくらか
例:
輸入消費税 50万円
Amazon関連費用 15万円
国内送料 5万円
広告・外注費 20万円
合計 90万円ステップ3:80万円と比べる
簡易課税では、100万円の80%である80万円を払ったことにします。
実際に払った消費税 90万円
みなし仕入税額 80万円実際の方が10万円多いため、本則課税の方が有利になりやすい、という考え方です。
反対に、実際の消費税が60万円なら、80万円払ったことにしてもらえる簡易課税の方が有利になりやすくなります。
判断前に集める数字
翌年の課税方式を決める前に、次の数字を集めます。
売上関係
Amazonの年間売上予測
返品・値引きの予測
Amazon以外の課税売上
事業用資産の売却予定
輸入関係
年間の商品輸入予定額
輸入消費税
関税
輸入回数
輸入申告者名義
国内経費
Amazon関連手数料
FBA費用
国内送料
広告費
撮影・デザイン費
国内外注費
パソコンや設備の購入予定
控除できない可能性がある支出
中国工場への商品代金
給与・役員報酬
借入金の元本返済
生活費
非課税支出
書類を保存できていない支出
中国輸入Amazon販売者向けチェックリスト
自分がなぜ課税事業者になるのか確認した
前々年の課税売上高を確認した
前年1月〜6月の課税売上高を確認した
インボイス登録の有無を確認した
過去の簡易課税届出が残っていないか確認した
売上にかかる消費税を予測した
年間の輸入消費税を集計した
輸入申告者名義を確認した
輸入許可書を保存している
Amazon関連費用の税区分を確認した
中国工場への支払額をそのまま消費税控除に入れていない
給与など控除対象外の支出を分けた
翌年の在庫仕入れ予定を反映した
翌々年のOEM・設備投資予定も考えた
届出書の提出期限を確認した
よくある質問
中国輸入なら本則課税にした方がよいですか?
一律には決められません。
仕入れ、輸入消費税、広告、外注などが多く、実際の仕入税額控除が売上税額の80%を超えるなら、本則課税が有利になりやすいです。
実際の控除額が80%未満なら、簡易課税が有利になる可能性があります。
ただ、中国輸入Amazon販売を始めた年は仕入れ額が大きくなりやすくて、ビジネスモデル的にも利益率が低いので多くの方は本則課税の方が有利になると思います。
赤字なら必ず還付されますか?
必ずではありません。
会計上赤字でも、赤字の原因が給与や借入金返済などであれば、仕入税額控除はあまり増えません。
消費税の還付は、実際に控除できる消費税が売上にかかる消費税を超えるかで決まります。
中国の商品代は全額控除できますか?
できません。
中国の工場へ支払った代金には、通常、日本の消費税は含まれていません。
主に対象になるのは、税関で支払った輸入消費税と、国内の課税対象経費に含まれる消費税です。
輸入代行業者を使っていても控除できますか?
輸入申告者の名義や、輸入許可書などの書類によって変わります。
自分または自社が輸入申告者になっているか、輸入消費税の金額を確認できるかを代行業者へ確認した方がよいでしょう。
確定申告のときに安い方を選べますか?
原則として選べません。
簡易課税を選ぶ場合も、やめる場合も、事前に届出が必要です。
年末近くになってからでは間に合わない可能性があるため、早めの試算が必要です。
まとめ:中国輸入では「原価率」ではなく「実際に払った消費税」を見る
中国輸入Amazon販売では、商品の原価率が高くなりやすいため、
本則課税にすれば、仕入れ代金の消費税をたくさん控除できる
と思いやすいです。
しかし、中国の工場へ支払った商品代金には、通常、日本の消費税は含まれていません。
大切なのは、次の金額です。
税関で支払った輸入消費税
国内のAmazon関連費用に含まれる消費税
国内送料や広告、外注費に含まれる消費税
売上にかかる消費税
小売業の簡易課税では、売上税額の80%を仕入税額とみなします。
そのため、分かりやすい判断基準は次のとおりです。
実際に控除できる消費税が、売上にかかる消費税の80%を超えるか
80%を超えるなら、本則課税が有利になりやすい
80%より少ないなら、簡易課税が有利になりやすい
売上税額そのものを超えるなら、本則課税で還付の可能性がある
私自身、過去に簡易課税の届出を出していたため、中国輸入Amazon販売のように先行投資が多い事業では、早い段階で課税方式を確認することが重要だと感じました。
消費税は、申告するときに初めて考えても手遅れになる場合があります。
翌年の売上だけでなく、
どのくらい商品を輸入するのか
どのくらい輸入消費税を払うのか
新商品やOEMへ投資するのか
広告や設備投資を増やすのか
まで予測し、年が変わる前に簡易課税と本則課税を比較する。
これが、中国輸入Amazon販売の利益とキャッシュを守るために重要だと思います。
