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鏡の向こうに潜む悪魔【創作大賞2024】

私には4人の娘がいた。
12歳、10歳、7歳、5歳の女の子たち。
その子たちが、ある日突然病床にふけった。
それも一日のうちに、順番に倒れていった。

私は、ただただ子どもたちを看ていた。

何もすることが出来ない。
ただ寝ている子どもたちの横に座っているだけ。

タオルを変えたり、飲みものを与えたりしているだけ。

そんな時、家の周りを異様な雰囲気を醸した、痩せた初老の男がうろついていることに気づいた。

なぜか、子どもたちの病気に関係がある気がした。

毎日弱っていく子どもたちが、1人ずつ息絶えていった。
それも1〜2日のうちに。
死亡届けを出したりしなくてはいけないことを分かりながらも、一番下の娘がまだ生きていて、目が離せないくらい衰弱しているから、自分も動けずに、弱りゆく末娘と、死んでしまった他の娘たちが横たわっている部屋の中に、ただただ悲嘆に暮れて座っていた。
なぜこんな事になっているのか、、、と。

あの男は悪魔なのだろうか?
なぜ、あの男と娘たちの死が関係してると思っているのか?と自問自答しながら、、

そんな考えを巡らして何も出来ずに座っている時に、ついには一番末娘が息を引き取った。

「うそ!!??こんなことはあり得ない!!どうして、この子たちが死ななきゃいけないの?もういい!!夢なら覚めて!!」
しばらく泣き叫んだ後は、自分自身もぐったりとして、何度も繰り返し、「こんなことはあってはいけない。全部嘘の出来事よ、、もうすぐ夢から覚めるわ、、」ぶつぶつとつぶやきながら、半日が経った。
子どもたちは、美しい顔で気持ちよさそうに昼寝でもしているようにしか見えない。
けれど、その頬には血の気がなく、氷のように冷たくなっている。
ボーゼンとしながらも、
母に知らせなければと電話をとったその瞬間に、
何と末娘が息を吹き返した!!
そして、一言、「もう大丈夫よ、、わたしたちの戦いが終わるから、、、」

そうしたら、次々に他の娘たちが、目覚めた。

「神様、ありがとうございます。
これからは、もう大丈夫ですね、、」
私は、思わずそう呟いた。
けれど、その後すぐに自分の言葉を心の中で否定した。
「これは夢、ただの希望、そんな奇跡は起こるはずがない!」と、、、

すると目の前に、さっき見かけた初老の男が何処からともなく姿を現した。
真近で見れば見るほどその姿は醜悪だ。
痩せこけて艶のない、灰色に近い肌を纏った顔は、その頭蓋骨さえ透けているように、ギスギスしている。
異様なほど額と頭が大きく、申し訳ない程度に生えている髪の毛は、縮れた白髪と茶色の髪が混じっていて、その額に張り付いている。
耳は外に大きく張り出し、それが収音マイクの役割をはたしてるのではないかと思うほどに色々な音を拾いそうに開いている。
体は、ガリガリなのに下腹だけがポッコリと突き出て、背骨は曲がり、首を前に突き出してバランスを取り、ようやく立っている感じだ。
何よりもその目が男の外観を最悪なものにする主役だった。曇り、濁り、目を見開いているのに、何も見えていないのではないかと思われるほど虚ろだ。

私は震えながら男に向かって叫んだ。
「あなたは誰ですか?近寄らないで!!あなたのせいで、また子どもたちが死んでしまう!!」
男は薄気味悪い笑みを唇にたたえた。
そして、私に人差し指を向けて、顎で娘たちの方を見ろと言わんばかりに促した。
娘たちは、横たわり、血の気のない顔で目を閉じている。
私は娘たちの頬に触れた。冷たい。顔を近づけて、息をしているか確認した。
娘たちは、やはり息を引き取っていた。
私は怒りに満ちて、男を怒鳴りつけた。
「お前のせいだ!!お前のせいで娘たちは死んだんだ!!」
男は無表情なまま、何処を見ているのかわからない虚ろな目で、私をじっと見て動かない。
腹が立って胸ぐらを掴もうと近づいた。

「えっ!!??」

男は透明な板の向こうにいるようで、その体に触れることは出来ない。

その透明の板の向こうにいる男が初めて口を開いた。
「これは鏡だ。私はお前だ。」
「嘘よ!!何言ってるのよ!!あんたなんか消えて!!」
横にあった大きめの花瓶を男に向かって投げつけた。
鏡はひび割れ、男の顔がバラバラになりながらも、その断片の一部が、自分の顔のようにも見えた。
私は、洗面所の鏡目指して動いた。
その鏡にも醜悪な男の顔が映っている。信じられない気持ちで男に向かって叫んだ!
「なんで、お前が私なんだ??!お前は悪魔だろ?」
「いいや、私はお前そのものだ。お前はいつも、人の噂ばかり気にして、どうでもいい思考に頭を支配され、見るべき真実も見ず、虚ろな目で生きている。全ては、誰かのせいで、何かのせいだと言いはりながら、自分は何もせずに生きてきた。
ありもしない現実を心配という名の美徳に変えて、呪いの現実として目の前に繰り広げていった。
お前の正体は目の前にお前が見ている醜悪な姿だ。
目を逸らさずに見ろ!」
私の頭に血が上った。自分の声とは思えないぐらいのギャーという奇声をあげてその場にうずくまった。

自分の声が耳を劈き、その瞬間ずっとゴミダメのように何かが溜まったみぞうちが、スッとした。
その時に、さっきの男の言葉が頭の中でリフレインされた。
確かに私は人にどう思われるかばかりを気にして、誰かが私の悪口を言っていないか、不当なことを言っていないかと耳をそばだてて周りのことばかりを気にしていた。
そしてありもしない憶測の不幸な出来事を頭の中で悶々と考え、心配ばかりするからどんなことも勇気を持ってやってみるということが出来なかった。
娘たちが、何か新しい私の知らないことにチャレンジしたいと言っても、
「お母さんはあなたたちを守る義務がある。悪い事は言わないから、そんな無謀なチャレンジはやめなさい。」と阻止してきた。
私の悪い予感は当たるからと自慢げに語り、その予感通りことが動くと、「ほらね。悪い予感は当たるでしょ。」と、自慢話にもならないことを言って、まるで自分が超能力者でもあるかのような自分のアイデンティティを固めていった。
私の想いや言葉は、そのまま私の世界の現実となって私自身を取り巻いた。
そして、嘆き、人を羨み、自分と同じように人も不幸になればいいと呪いのような想いを持ち続けて生きてきた。
娘たちが死に、せっかく奇跡的に生き返った時でさえ、その奇跡を信じずに、元のネガティブなエゴに支配されたから、また娘たちは逝ってしまった。
全ては私が創り出した現実だ。
全ては、私の醜さがそのまま反映されただけだった。

そうだ。
そんな醜い私をちゃんとこの目で見ないといけない。
それが出来なければ何も変わらない。
私は勇気を振り絞って立ち上がり、鏡を見据えた。
そこには、究極に醜い悪魔のような姿が映っている。その目を見据えた。
「そうよ。認めるわ。この醜悪な姿は、今までの私そのもの!そんなことにすら気づかず生きてきた。でも、もういい!やめる。私はこの姿を捨てるから見てなさい!」
「お前には無理だ!今まで通り生きる方が自分らしいと思ってるからな。」鏡の中の醜い自分が答えた。
「いいえ、変わってみせるわ。だって、わたしは愛のもとにこの世に生まれ出て、愛する家族もいて、全てが完璧なのに、それを見ていなかっただけだから。これからは、強い私になる。大切なものだけを見て生きる覚悟をしたから!」
その瞬間目の前の鏡が一瞬割れたように見えた。けれど、割れたのはその醜い男の姿だった。
醜い男は消え去り、代わりに映っているのは、色白の女性だった。それは、私だっだ。
「あら、私、今気づいたわ。案外美人ね。どうして今まで気づかなかったのかしら。」
私は、鏡の中の自分に微笑みかけた。
「お母さん!」「ママ!」
「鏡見て何ニヤニヤしているの?」
娘たちが、満面の笑顔で、私のところに集まってきた。
「えっ、なんでもないのよ。さっき怖い夢を見て、、、顔を洗いに来たんだけど、なかなかお母さんって美人だなって思って笑ってたの。
ほら、あなたたちもみんな鏡に映ってる自分を見て。本当にみんな美人でチャーミングだわ。」
私と4人の娘たちは、鏡に映る自分たちに向かって満面の笑顔だった。

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鏡を覗き込むと向こう側に違う世界が広がっている。
美しい室内には、たくさんの絵が飾られているのが見える。
こっちに向かって元気な女の子が走ってきた。
「お母さん!こっち来て!怖い絵と物凄く綺麗な絵が並んでるよ」
「へえ、、【自分の中の悪魔と女神】だって。この絵を描いた人は、こんな風に言ってるわ。【誰の中にも悪魔と神が住んでいる。どちらに従って生きるかはあなた次第。】だって、、、、。」
女の子は泣きそうな顔になって、お母さんに聞いた。
「わたしの中にもお母さんの中にも、この隣の怖い悪魔が本当に住んでるの?」
「リリー、あなたはこの4人の美しい天使みたいね。だからそんな悪魔がもし来ても追い出しちゃえるわ。だから、大丈夫よ。」
「うん。お母さんはこの女神様みたいだよ。お母さんも絵の中の女神様も綺麗ね。きっとお母さんの中の悪魔は、とっくの昔に追い払ったんだね。」

「あっ!!見て、今女神様がうなづいてウインクしたよ!!」

「本当に?すごいわね。リリーあなたは奇跡を起こせる素晴らしい自慢の娘よ。」






























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風乃音羽 Kazeno Otoha よろしくお願いします。いただいたサポート費用はクリエイターとして、レベルアップするための活動に役立てるようにいたします。ありがとうございます🥰