偏差値50の壁。「理解しているのに解けない」の正体
こんにちは。現役教員です。
「うちの子、授業の内容はわかっているみたいなのに、テストになると全然点が取れないんです」
面談のたびに、何度聞いたかわからないこの相談。
保護者の方の戸惑いも、お子さんの悔しさも、教員として痛いほど理解できます。
今日は、この「理解しているのに解けない」という現象の正体を、できるだけわかりやすくお話しします。
「わかる」と「できる」のあいだにある深い溝
まず結論から言います。
「理解している」と「問題が解ける」は、まったく別のスキルです。
料理で例えるとわかりやすいかもしれません。
レシピを読んで「なるほど、こうやって作るのか」と理解することと、実際にキッチンに立って美味しい料理を作ることは、全く別の話ですよね。
レシピを読んだだけで料理が上手くなる人はいません。
何度も作って、失敗して、火加減を調整して、ようやく「自分の味」になっていく。
勉強もこれとまったく同じです。
授業を聞いて「わかった」と感じるのは、レシピを読んだ段階にすぎません。
テストで点を取るには、そこからさらに「自分の手で何度も繰り返す」というプロセスが必要なのです。
「塾に行っている」という安心感の落とし穴
もう一つ、よくあるパターンがあります。
「週に3回も塾に通っているのに、なぜ成績が上がらないのか」という疑問です。
ここで少し厳しいことを言わせてください。
塾の授業を受けること自体は、「インプット」にすぎません。
成績が上がるのは「アウトプット」——つまり、自分で問題を解き、間違いを分析し、もう一度やり直す——というプロセスを経たときです。
塾でたくさんの授業を受けても、家に帰ってからの「自分の時間」で咀嚼しないと、知識は定着しません。
イメージとしては、塾が「食材の仕入れ先」だとすると、家庭学習が「料理する時間」です。
どんなに良い食材を仕入れても、料理しなければ食べられないのと同じです。
「理解しているのに解けない」子の共通パターン
教員として何年も見てきた中で、このタイプのお子さんには3つの共通パターンがあると感じています。
1つ目は、「ノートをきれいに取ることが目的になっている」パターン。
板書をそのまま美しく写すことに全力を注いでいて、「なぜそうなるのか」を考える余裕がなくなっている。ノートがアートのように美しいのに、テストで解けないという子は、このケースが多いです。
2つ目は、「一回で完璧にしようとする」パターン。
復習を1回やって、「もうやった」と思ってしまう。でも、人間の記憶は一回では定着しません。エビングハウスの忘却曲線という有名な研究でも示されているように、一度覚えたことの約7割は翌日には忘れてしまうのです。
3つ目は、「間違えた問題を放置する」パターン。
丸つけをして、赤ペンで正解を書いて、それで終わり。なぜ間違えたのか、次にどうすれば解けるのか——その分析をしていない。テストの点数を上げる最短ルートは「間違えた問題のやり直し」ですが、多くの子がここを飛ばしてしまいます。
壁を越えるための具体的なアクション
では、実際にどうすればいいのか。家庭でもすぐにできる3つのアクションをご紹介します。
〈アクション1〉「人に説明させる」
お子さんに、その日に習った内容を説明してもらってください。
「今日の算数、どんなことやったか教えてくれない?」と軽い口調で。
人に説明しようとすると、「わかったつもりだったけど、実はここが曖昧だった」という部分が浮き彫りになります。これが、最も効率的な理解度チェックです。
〈アクション2〉「間違いノートを作る」
テストや宿題で間違えた問題だけを集めた「間違いノート」を一冊作ってみてください。
間違えた問題、なぜ間違えたか、正しい解き方の3点セットで記録する。
このノートは、お子さん専用の「弱点マップ」になります。
〈アクション3〉「3日後にもう一度解く」
間違えた問題は、3日後にもう一度解いてみる。
3日後に解ければ、その知識は定着したと言えます。
解けなければ、もう一度やり直す。それだけです。
地味ですが、このサイクルを回し続けた子は、ほぼ確実に壁を越えていきます。
おわりに
「理解しているのに解けない」は、才能の問題ではありません。
「わかる」から「できる」への変換プロセスが、まだ身についていないだけです。
そして、このプロセスは正しい方法さえ知れば、誰でも身につけることができます。
お子さんが「わかっているのに点が取れない」と悩んでいたら、「もっと勉強しなさい」と言う代わりに、「やり方を少し変えてみようか」と声をかけてあげてください。
量を増やすのではなく、質を変える。
それだけで、景色はがらりと変わります。
明日は「『怒りの奥にある本当の感情』に気づくと、子どもへの声かけが変わる」についてお話しします。
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