カスタムGPTsやGemsはレガシーになったのか――プロンプト中心からAgent・Skills中心へ
生成AIの使い方は、この半年でかなり変わった。少し前までは、AIをどう動かすかを決める主役はプロンプトだった。長い指示文を書き、参照ファイルを与え、特定の役割を持たせる。その延長線上にあったのが、ChatGPTのカスタムGPTsやGeminiのGemsだった。
カスタムGPTsやGemsは「プロンプト時代」に必要だった
当時は非常に合理的な仕組みだったと思う。「介護制度に詳しいAI」「文章校正に特化したAI」「社内マニュアルに答えるAI」のように、用途ごとにプロンプトと知識をまとめておけば、毎回同じ指示を書く必要がない。
つまり、プロンプトでAIを動かしていた時代には、カスタムGPTsやGemsは必要なツールだった。
ただ、2026年現在の生成AIは、その段階からかなり先へ進んでいる。
Agent・Skills・MCPでAIの構造が変わった
今、中心になりつつあるのはAgent、Skills、Tools、MCPといった仕組みだ。AIは単に「決められたプロンプトに従って答える存在」ではなくなり、必要な能力を呼び出し、外部ツールを使い、データを取得し、複数の処理を組み合わせて仕事を進める方向へ移っている。
構造で見ると違いは分かりやすい。
以前は「Prompt → Custom GPT / Gem → 回答」だった。
現在は「Agent → Skills → Tools / MCP → 外部サービス → 実行」という構造へ変わりつつある。
ここで大きく変わったのは、AIに何を「覚えさせるか」ではなく、AIにどんな「能力を持たせるか」が重要になったことだ。
「どう答えるか」から「何ができるか」へ
カスタムGPTsやGemsは、基本的には「このAIはどう振る舞うのか」を定義する仕組みだった。
一方、Skillsは「このAIは何ができるのか」を定義する。さらにMCPやToolsを組み合わせれば、外部システムへのアクセスや業務処理まで扱える。
例えば、障がい福祉の運営指導に対応するAIを作る場合、以前なら「運営指導に詳しいカスタムGPT」を作る発想になりやすかった。長いシステムプロンプトを書き、制度資料をアップロードし、質問に回答させる形だ。
現在なら、制度を確認するSkill、文書をチェックするSkill、最新情報を検索するSkill、施設内データへアクセスするMCP、処理全体を統括するAgentという形で、それぞれの責務を分けられる。
この方が更新しやすく、再利用もしやすい。
AIそのものではなく「能力」が資産になる
カスタムGPTsやGemsでは、AIそのものが一つの完成品だった。
しかしSkills中心の設計では、能力が部品になる。同じSkillを複数のAgentで使えるし、必要に応じて組み替えることもできる。
さらにAgent Pluginsのような仕組みが広がれば、SkillsやTools、MCPをまとめた能力セット自体をパッケージとして扱えるようになる。
特定のAIサービス専用に作るのではなく、異なる環境でも再利用できる方向へ進んでいる。
ここまで来ると、カスタムGPTsやGemsは少し違って見えてくる。
カスタムGPTsやGemsは「失敗」ではなくレガシー化している
個人的には、これらは失敗したツールではないと思う。
その時代には必要だった。
ただし、プロンプト中心だった生成AIの時代を象徴する仕組みになりつつある。つまり、「レガシーツール化してきた」という表現が近い。
もちろん、カスタムGPTsやGemsが完全に不要になるわけではない。社内FAQ、文章作成、簡単な相談AI、特定文書への質問といった用途なら、今でも十分便利だ。
Agentを構築するほどでもない用途なら、むしろシンプルで使いやすい。
ただ、業務システムや専門プロダクトを作るときに「まずカスタムGPTを作る」という発想は、少し古くなってきたように感じる。
プロンプトは「製品」から「内部実装」へ
以前は、「このプロンプトを使えば、この専門AIができます」ということ自体に価値があった。
現在は違う。
「そのAIは何を実行できるのか」「どの業務と接続できるのか」「どのデータへアクセスできるのか」「どこまで処理を任せられるのか」の方が重要になっている。
言い換えると、プロンプトは製品そのものではなく、内部実装の一部になりつつある。
今は「どんなプロンプトを書くか」よりも、「どんなSkillに分解するか」「どのToolを使わせるか」「どのデータへ接続するか」「どこまでAgentに任せるか」を考えた方が、設計として自然になってきた。
Prompt-centric AIからCapability-centric AIへ
この変化を整理すると、カスタムGPTsやGemsは「Prompt-centric AI」、つまりプロンプト中心のAI時代のアプリケーション形態だったと考えられる。
一方、Agent、Skills、Plugins、MCPは「Capability-centric AI」、能力中心のAI時代のアプリケーション形態だ。
数年後、「カスタムGPTを作りました」という言葉は、現在の「プロンプト集を作りました」に近い位置づけになる可能性もある。
逆に、今後価値が残りやすいのはSkillsではないかと思う。
AIモデルは変わる。ChatGPTを使うこともあれば、GeminiやClaudeを使うこともある。そのとき、特定モデル専用のカスタムAIではなく、再利用可能な能力として設計しておけば、利用するモデルや環境が変わっても資産を残しやすい。
これからは「AIを作る」より「能力を設計する」
生成AIの競争は、モデル性能だけの競争から、「どんな能力を組み合わせられるか」という競争へ移り始めている。
そう考えると、カスタムGPTsやGemsがレガシー化して見えるのは自然な流れだと思う。
これから重要になるのは、「AIをどう設定するか」ではなく、「AIにどんな能力を持たせ、何と接続し、どこまで実行させるか」だ。
プロンプト中心の時代から、AgentとSkills中心の時代へ。
生成AIの設計思想そのものが、大きく切り替わり始めている。
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