【勝手に読書感想部】俺ではない炎上:浅倉秋成
[作品紹介]
あるTwitterアカウントに殺人を想起させるつぶやきが写真付きでポストされる。この「たいすけ@taisuke0701」のアカウント主と思われる山縣泰介の実名や顔写真、職場や住所はすぐに特定され、一斉に拡散され、大炎上。
泰介はそれまでアカウントの存在すら知らず、事実無根を訴えるも誰にも信じてもらえず、逃亡に至る。
2025年秋に映画化、阿部寛さん主演で公開予定。
[感想]
元々無実の人が、言われなき罪を着せられるようなストーリーは、フィクションでもリアルでも本当に苦手なんです。
おまけにそこにSNSによる不特定多数の悪意無き悪が絡むと本当に怖くて、ざわざわして、なんともいえないたまらない気持ちになります。
想像通り、主人公の泰介はあからさまな悪意を持ってSNS上で罪を着せられ、煽るように安全圏にいるネット民から集中攻撃を受ける。
これまで積み重ねてきたものや大切にしていたものが一瞬にして崩壊し、泰介という1人の人間とその家族やコミニティーの一切を殺してしまう。
以前読んだ「白ゆき姫殺人事件」とも繋がるものがありました
上場企業の管理職で、家族も円満、おまけにイケメンで高身長。誰からも尊敬され慕われるナイスミドル・・・という前提の人物像が塩見の登場により崩壊した時は少しだけホッとしました。
こんな辛い仕打ちを受ける太輔が、せめて、同情の余地がないくらいに最低のクソ野郎であってほしいと願わずにはいられませんでしたので。笑
*以下ネタバレ含みますので、まだ読まれていな方はご注意ください
やりきれない気持ちを早く終わらせたいのと、単純にストーリー展開が面白すぎて読み進めるスピードがいつになくすごく早かったです。
そう、胸くその悪さや怒りの感情はたくさん湧いてきたけど、やっぱりすごく面白かったんですよね。
終盤、たたみかけるようにどんでん返しをやられて、えーー!?って、なりました。
思わずこれまでのページを読み返して納得、信じられないような鮮やかな伏線回収はもはや芸術レベルですよね。
50代の泰介のひとり娘が小学5年生だったこと。
ウォークマンでSNSを更新していたこと。
謎の女性サクラがなぜか泰介のアカウントを管理していたこと。
そのほか、読みながら感じていたけど、見過ごしていた小さな違和感が全て伏線だったことに気づいた時の衝撃ときたら・・・。
読了後のドキドキが止まりません。
以前、浅倉秋成先生の「6人の嘘つきな大学生」を読んだ時もそうでしたが、素晴らしい読書体験を楽しませてもらえて感謝の気持ちでいっぱいです。
「自分は悪くない」
この作品に出てくる登場人物は口を揃えて、そう主張していました。
この作品の一つのキーワードだったようにも思います。
果たして本当にそうなのか。自分のこれまでの行いを振り返り、反省して改めていくことによって初めて人は前に進めるんだと感じさせられました。
これまで高圧的な態度で周りを不快にさせて人望を失っていた泰介。
夫と真剣に向き合おうとして来なかった芙由子。
無責任な投稿をして炎上を助長してしまった初羽馬。
別人の名義のアカウントで事件のきっかけを作ってしまったサクラ。
彼らは皆最終的に「自分は悪くない」の鎧を脱いで、自身の非を認め、行動を改めることで前に進んでいくことができていました。
一方で、無責任なネット民たちは事件の全貌が明らかになると、手のひらを返したように、マスコミや警察、無責任な拡散をさせた自分以外の人間を非難するだけで、一貫して「自分は悪くない」の姿勢を崩しませんでした。そんな彼らは一切成長しないしそれ以上の前進はない。
そんなふうに両者を対象的に描かれていることも印象的でしたね。
