ディセプション・フォーミュラ闘技場跡出土の旧世紀フィッシュヘッド遺構についての講演録

――フィッシュヘッド史を専門に研究しております、ポコ第八大学美少女学部准教授のソーサツ・チエカです。本日はディセプション・フォーミュラ闘技場跡で新たに発見されたフィッシュヘッド遺構「Fish 1」の特色について簡単に述べさせていただきます。(会場ざわめく)

ディセプション・フォーミュラ(以下F3879D)は旧世紀末期の建造物と推定され、主に戦車競走に使われた闘技場とみる見方が有力です。この競技はヒッキー都市同盟の守護神おこもりさまのための奉納試合に起源を持ち、闘技場には生贄に加え造形物が各地から奉献されました。「Fish 1」もその一つです。全体の造形としては、軽トラックに数々の奉献品を積んでF3879Dに参向してきた様がそのまま残されているようであり、F3879Dからも歓待されたようです。加えて、トラックの中には様々な奇抜な乗り物が隠されており、これを披露して観戦者を楽しませたことが伺えます。(会場からまばらな拍手)

図表1 Fish 1の外観

しかし、ヒッキー都市同盟と周辺の朝貢国の関係の中で、フィッシュヘッドの地位は決して安定していなかったようです。この時期の地層から発見されるフィッシュヘッド遺構は、分布を急速に拡大させた一方、明確な中心を持たなくなってきています。これは民族の離散を意味します。(会場静まり返る)

知られている最古のフィッシュヘッド集住地域である長芋村は、この時既に廃村になっています。アーグデーラや鮗高原への巡礼はまだ続いていた模様ですが、それ以上に居住地域の分散が著しい。西海岸のマンボウの海の化石に痕跡がみられるように、胴体を退化させた一派さえいた模様です。さらに注目すべきは、フィッシュヘッドの一部が研人界からの渡来者と混血し、定住していた証拠があることです。F3879Gでは「南オンゴリア共和国」銘の石柱が出ています。現在そのような国は知られていませんが、これがパラリアル大洗にあたることは明らかです。(何人か席を立って会場を出ていく)

図表2 グローリー・フォーミュラ(F3879G)出土の石柱

以上を踏まえれば、この時期のフィッシュヘッドは文明の爛熟を過ぎ、いわば民族放散の途にあったものではないでしょうか。その視点を持ってみれば、F3879Dの遺構の意味も変わってくる。ここでフィッシュヘッドが表現したものは、時代を走り去っていく自らの姿ではなかろうかと、私には思えるのです。小型の車で思い思いに行く者があり、その中心では我々にもお馴染みの、彼らの伝統的な造形の品々がまとめて運ばれていく。乗り物は皆どこかへ動いていくことの象徴ですが、彼らの場合、これは車の形をしていながら、本質的には船です。この時代・この場所という港を離れて去る、去れば帰らぬ、宝船。

ある意味でこれは、フィッシュヘッドが一つの民族と言えるまとまりをなしていた時代の最後の遺物でしょう。現に今そうであるように、これ以降彼らは姿を消し、あるいは他民族に吸収され、歴史の中のみに語られる存在となる。しかし私には、彼らがそのことを予見していたように思えてなりません。従来の、美少女シンギュラリティによる絶滅というシナリオも、改められる必要があるのではないでしょうか。姿を消した彼らが、今もどこかにいるのではないか。そう考えるとき、私はこの仮想世界の時間の急流の内に折り畳まれた、人の生き様の果てしない広がりを見る気持ちがするのです。(会場沈黙)

本発表は以上になります。ご清聴ありがとうございました。質疑等ありませんでしょうか。(会場沈黙)



【発表者紹介】
ソーサツ・チエカ
2022年、[JP] Tutorial World生まれ。ポコ第八大学大学院美少女学研究科仮想物理学専攻博士課程を単位取得退学後、論文「現代VR空間のオリエンタリズム―美少女文明はフィッシュヘッドと遭遇した」で博士(美少女)取得。美少女量子場研究センター上級研究員を経て、現在、ポコ第八大学美少女学部准教授。専門はフィッシュヘッド史、美少女場の量子論、灼眼のシャナ。近年では鮗高原の発掘調査をはじめ非美少女文明の考古研究を精力的に行う。著書に『智慧香抄』ほか。

ソーサツ・チエカ博士

〈以上〉

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