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繁体中文版『VTuber學』の感想

2024年9月に発売された書籍『VTuber学』(岡本健、山野弘樹、吉川慧編著)の繁体中国語版(葉門訳)が、2026年7月9日に台湾で出版されました。本記事はその一部を紹介するものです。台湾の動向の把握、中国語圏への発信、中国語の学習などのお役に立てば幸いです。

原書『VTuber学』についての私の感想は以下の記事にあります。

本記事中の漢字の字体については、繁体中文のフォントを正確に反映していないものがあります。ご了承ください。

なお、中国語学習者の方におかれましては、以下のサイトで漢字の語句や文章を入力すると、発音(ピンイン・四声)を文章単位で調べることができます。


繁体中文版の冒頭には、日本語版編著の岡本健さんの繁体中文版に寄せたコメント、國立清華大學台灣文學所副教授(准教授に相当)の王威智さんの解説、バーチャルカルチャーを扱うメディアのVchavchaによる推薦文、台湾のVTuberの悠白さんによる推薦文が収録されています。

それ以降の内容は基本的に日本語版と同じですので、ここでは私の特に関心のある話題、すなわち人と美少女が取り結ぶ関係の実情、すなわちバ美肉、すなわち第4章(バーチャル美少女ねむさん)・第7章(リュドミラ・ブレディキナさん)・第8章(池山草馬さん)に限定して、その中でも諸概念がどう中国語に訳されているかを中心に紹介したいと思います。

ただし、巻末の索引にはVTuberや団体の名前について、繁体中文訳と日本語が併記されていますので、これを見るだけでも楽しいです。

他の部分についてのご要望がもしあれば、引用箇所が大量でない限りはこの記事に追記する形で紹介できるかと思いますので、私までご連絡ください。



那個えーっと――,うーん――看得到我嗎見えてますかぁ
うーん――,大家聽得到嗎聞こえるかなぁ
初次見面はじめまして!我的名字是絆愛私の名前はキズナアイです
請多多指教どうぞよろしくお願いします
覺得「怎麼和一般YouTuber不一樣?」的你「普通のYouTuberと違うぞ?」と思ったそこのあなたっ
你很敏鋭喔なかなかするどい

『VTuber學』p.003、キズナアイさんの自己紹介より引用、日本語訳は『VTuber学』による

繁體版序(岡本健)

原書の『VTuber学』が2024年に日本で出版されてからの出来事に触れています。すなわち、キズナアイさんの復活、VTuber市場の拡大、個人勢の増加、クリエイター経済の伸長、岡本さんが2025年に京大文学部で担当されたVTuberの講義、儒烏風亭らでんさん(多くの箇所で「儒風亭」と綴られていますが)が2026年に台湾のOU-EN CAFEと国立海洋科技博物館とコラボされたこと、岡本さんが2026年に台湾の研究会のACGCT2025でVTuberの研究を発表されて本書の推薦者の一人の王威智さんと知り合ったこと、が述べられています。

導讀 皮與魂之間:閲讀《VTuber學》(王威智)

「解説 ガワと魂の間:《VTuber學》を読む」とでも訳すべきものです。VTuberは中国語圏でも既によく観られているものの、学術的な議論はまだほとんどなされていないと述べた後で、各章の内容を要約して紹介しています。

その後、一般の読者にとって身近な切り口であるアイデンティティとジェンダーについて述べている章(ねむさん・ミラさん・関根さん・草野さん)をまとめて紹介し、第3部の理論編を概観してから、本書が「VTuberとはこういうものだ」と断言する性格のものではないこと、およびVTuber文化の記録としても機能していることを評価しています。なお、ここでは「他」と「她」が私たちから見て正しく使い分けられています。

最後に、日本の状況を扱った学術書が中国語圏の読者にとって持つ意義について述べています。本書で挙げられている事例(にじさんじ、ホロライブ、バ美肉、VRChat)は日本のものでも、研究の方法論と哲学的分析は普遍的であり、台湾のような他の地域のVTuber文化を研究するための出発点としてふさわしい、と主張しています。本書がカバーしていない台湾独自の事情として、転生や卒業が話題になりやすいこと(本書の篠崎さんや本間さんの論考はこの問題を論じきれていない、と評しています)、(日本の?)VTuberの模倣、そして台湾ローカルのVTuberやプラットフォームを挙げています。

推薦序 歡迎來到無所不在的VTuber超人氣時代!(Vchavcha)

直訳すると「推薦者によるまえがき 至るところでVTuberが超人気な時代へようこそ!」となるでしょうか。

台湾でもVTuberが人気であり、本書が多角的な視点からVTuberに光を当てていることを述べて、VTuber文化を「日本のインターネット文化の総結節点」と呼んでいます。また、本書がメタバースにかなりの紙幅を割いていることに注目し、誰もがアバターを通して自分の考えや才能を表現できる世界を「『超時空輝耀姫!超かぐや姫!』のような美しい世界」と呼んでもいます。

そして、Vchavchaがバーチャルエンターテインメントのセルフメディア(個人メディアというくらいの意味?)としてVTuber市場に注目しており、設立から二年で大手企業の海外進出、業界を跨いだコラボレーション、ビジネスモデルの革新、個人勢や小規模スタジオによる制作、卒業、企業の解散などを見てきたと語ります。最後に、ガルシア・マルケスの『百年の孤独』を引いて、VTuberの世界も同じだと述べています。

この世界はあまりに新しく、多くのものがまだ名前を持たず、代わりに指差さねばならなかった。

『VTuber學』p.019、『百年の孤独』より引用、日本語訳は繁体中文をもとにソーサツ・チエカによる

推薦序 VTuber通識課本格派概論書(悠白)

「推薦者によるまえがき VTuberの一般教養課程のための本格派概論書」です。本書第1部を歴史編とみなし、特に第2章(吉川さん)をVTuber団体の運営者に向けて、第4章(ねむさん)を「自分の心境や考え方が色々な面で変わってきたように感じるが、これはおかしなことだろうか?」「自分の思ったような道を歩けているだろうか?」と悩むVTuberに向けて薦めています。分人主義に寄せて、悠白さん自身の実感として、「このバーチャル世界では一つ一つの側面が全て自分であり、それぞれ異なる顔をファンは愛してくれている」という実感があると述べています。

第2部の研究編では、特に第5章(岡本さん)と第6章(関根さん)に共感し、ジェンダー論の観点からの批判のような問題を提起するものとして高く評価しているようです。

第3部の理論編については、「身体と魂」モデルがバーチャルカルチャーにも適用できること、物語アイデンティティがバーチャルカルチャーの興味深い側面であることを述べています。

第4章 當全部都成為VすべてがVになる 解放人類靈魂的VTuber現象VTuber現象が人類の魂を解き放つ虛擬美少女Nemバーチャル美少女ねむ

以降は、繁体中文訳に伴って現れた面白い言い回しや原書からのニュアンスのずれを紹介することにします。ルビは特に断りのない限り日本語版原文の当該箇所からの引用です。

台湾の通販書店である博客來ボーカーライの商品紹介文では、第4章のタイトルと著者名は「一切都往虛擬前進すべてがバーチャルへと向かっている——現役VTuber的現場觀察現役VTuberが見た現場虛擬美少女バーチャル美少女涅姆ねむ」となっています。中文訳が確定する前の暫定的な情報がそのまま掲載されているのかもしれません。名前の「涅」は個人の解体と解釈すればねむさんの活動に合わなくもないですが、「姆」は少し落ち着きがありすぎるような気もします。

本書全体を通じて、日本語の書籍やwebサイトを出典として参照している箇所では、その出典の日本語タイトル(『メタバース進化論』など)が中国語訳されずそのまま表記されています。日本語版(電子版)では章の最後にまとめられている註は、繁体中文版では各註のついたページの下に配置されています。

1 現實終結,V甦醒現実(リアル)が終わる,Vが目覚める

你是誰……?お前は誰だ……

虛擬化身アバター顕示在我眼前螢幕上的私の目の前にあるディスプレイに表示されているのは是一名動畫風格的黑髮年幼美少女アニメキャラクター調の,黒髪の幼い美少女の姿だ

變聲器ボイスチェンジャー音高ピッチ共振峰フォルマント

我是……Nem……私は…… ねむ……

2 確立「虛擬創作者」概念的代表人物キズナアイが確立した「VTuber」の概念

この節タイトルは直訳すると「『バーチャルクリエイター』の概念を確立した代表的な人物」です。

VTuber的三項定義VTuberの定義3要件

  1. 虛擬化身活動アバター活動利用虛擬化身技術アバター技術を利用して以虛擬角色バーチャルキャラクターとして進行影片,直播或圖片等内容發布動画配信・ライブ配信・静止画配信などで情報発信活動をすること。(如後文所述,我認為没有必要將活動平台限定在YouTube來進行討論後述するように、活動するプラットフォームをYouTubeに限定して語る意味はないと私は考えている

  2. 互動性インタラクティブ性透過直播或社群平台ライブ配信やSNS多是透過X〔舊稱推特〕X(旧Twitter)が使われることが多い等以虛擬化身身分與觀眾進行雙向交流等を通じてキャラクターとして視聴者と双方向にコミュニケーションをとること

  3. 自我同一性自己同一性以統一的角色設定和名稱持續活動キャラクター設定として統一された個性と名前を持って継続的に活動し並非以中之人(聲優)中の人(声優)としてではなく而是以虛擬角色如同真實存在般運作「生きた」バーチャルキャラクターが実際に存在するかのように振る舞うこと

このVTuber3要件は少し長いですが、単なる実在の人間にかぶせるガワではない日本の(バーチャル美少女派の)VTuber観が中国語圏に輸出された記念すべき瞬間ですので紹介します。

3 世界上最早的個人勢VTuber眼中的世界最古の個人系VTuberが見たVTuber熱潮VTuberブーム

虛擬YouTuber精選合集バーチャルYouTuberよくばりセット

虛擬YouTuber界的最終頭目バーチャルYouTuber界のラスボス

虛擬口癖蘿莉狐YouTuber大叔バーチャルのじゃロリ狐娘YouTuberおじさん(「のじゃ」の表現は無理でしたか……)

這世道太艱難了啊世知辛いのじゃ――!」

被掐住脖子的哈姆太郎首絞めハム太郎Strong Zero擬人化見るストロングゼロ巴恰魯ばあちゃる

hololiveホロライブ彩虹社にじさんじ

この節で引用されている、圖表図表4.2の「草創期的虛擬VTuber人氣排行榜発足時のバーチャルYouTuber人気ランキング」の画像の中の日本語は全て中国語訳されずに原書のまま掲載されています。

4 「VTuber」這個詞的確立「VTuber」という言葉の確立が使V走向普及化Vを普遍化する

太初有道初めに言葉があった道與神同在言葉は神と共にあった道就是神言葉は神であった

これは「中文標準譯本」版の新約聖書の約翰福音ヨハネによる福音書の冒頭からの引用です。ギリシャ語のλόγος、ラテン語のVerbumを、日本の新共同訳では「ことば」と訳していますが、この中文標準譯本では「道」と訳しています。日本でも中国語版の影響を受けて「道」と訳されていた時期があり、より古くは「カシコキモノ」と訳されていたようです。ここでの「道」は、道教のタオではなく今日一般に言う意味での「道理」を擬人化したものと解釈するのがより適切だと思います。

(参考: https://nagoya.repo.nii.ac.jp/record/2008248/files/nagujj_76_144.pdf )

さはなさはなみゅみゅみゅみゅ(Nemだけは英語にするように申し入れたのでしょうか?)

世界最古老的個人系虛擬YouTuber世界最古の個人系バーチャルYouTuber

5 雙頭普羅透斯效應双頭のプロテウス

6 「元宇宙メタバース」,V們所居住的世界それはVたちが住まう世界

可以度過人生的虛擬空間人生を送ることのできる仮想空間也就是各位所生活みなさんの住む受物理法則支配的既有現實世界物理法則に支配された従来の現実世界

圖表図表4.3 元宇宙定義七要件メタバースの定義7要件

  1. 空間性空間性具有三次元延展性的世界三次元の空間の広がりのある世界

  2. 自我同一性自己同一性能以投射自身認同自分のアイデンティティを投影した獨一無二且自由的化身姿態存在的世界唯一無二の自由なアバターの姿で存在できる世界

  3. 大規模同時連線性大規模同時接続性大量使用者能够即時聚集於同一場所的世界大量のユーザーがリアルタイムに同じ場所に集まることのできる世界

  4. 創造性創造性不僅由平台提供内容プラットフォームによりコンテンツが提供されるだけでなく使用者也能自由帯入或創造内容的世界ユーザー自身が自由にコンテンツを持ち込んだり創造できる世界

  5. 經濟性経済性使用者之間可以交換内容,服務與金錢ユーザー同士でコンテンツ・サービス・お金を交換でき並能如同現實一般進行經濟活動並維持生活的世界現実と同じように経済活動をして暮らしていける世界

  6. 存取性アクセス性可依目的選擇智慧型手機、電脳、AR/VR等最適合的存取方式スマートフォン・PC・AR/VRなど、目的に応じて最適なアクセス手段を選ぶことができ使物理現實與虛擬現實無縫連結的世界物理現実と仮想現実が垣根なくつながる世界

  7. 沉浸性没入性提供AR/VR等沉浸手段アクセス手段の一つとしてAR/VRなどの没入手段が用意されており使人能够獲得彷彿實際身處該世界般的沉浸感與充實體驗まるで実際にその世界にいるかのような没入感のある充実した体験ができる世界

このメタバース7要件も、日本美少女界隈が東アジアのバーチャル文化のイニシアチブをとるにあたり記念すべき一歩ですので全文を紹介しました。個人的にはその次の図表、「圖表図表4.4 以多樣化身度過人生的VTuber與元宇宙居民多様なアバターで人生を送るVTuberやメタバースの住人たち――VRChat」も、よく見る方たちが一挙に台湾にお出しされた瞬間で感慨深いです。

バーチャルキャストバーチャルキャストVR頭盔VRゴーグル

7 元宇宙居民的身分認同メタバース住人のアイデンティティ――根據≪社交VR生活型態調査≫「ソーシャルVRライフスタイル調査」から

この節で紹介されているソーシャルVRライフスタイル調査2023の集計結果の図表は、図中の日本語が全て中国語に翻訳されています。

幻覺感知Nemファントムセンスねむ帆立優希ホタテユウキ麥納爾マイナル

無論男女多是使用女性型虛擬化身男性も女性も女性型アバターを使う

亞人類亜人間雙聲類両声類

8 將身分認同「角色扮演化」アイデンティティを「コスプレ」する

以理想中的自己活下去なりたい自分として生きていく想成為的自己なりたい自分

分人:我,究竟是什麼「私」とは何か――「個人」から「分人」へ

9 來自新世界新世界より

この節ではありませんが、巻末の執筆者紹介によれば、虛擬美少女奇點仮想美少女シンギュラリティ元宇宙進化論メタバース進化論です。

第7章 傾聽當事者的聲音当事者の声をとらえる 針對「八美肉」實踐者的「バ美肉」実践者への問巻及訪談調査アンケート・インタビュー調査柳徳米拉リュドミラ布列季基納ブレディキナ

まず目を引くのは「八美肉バ美肉」でしょう。スラングとして短縮された形を維持した上で、「バーチャル」部分は意味よりも音と字面を再現することを優先し、「美肉」は字面で意味が伝わると期待しての、よいバランスだと思います。

1 「八美肉バ美肉的研究の研究

八美肉バ美肉虛擬表演背後的事物バーチャルパフォーマンスの背後にあるもの――透過科技與日本戲劇對性別規範的對抗テクノロジーと日本演劇を通じたジェンダー規範への対抗

反串異性装(日本語通り「異性装」表記の箇所も)

2 線上社群的調査方法オンラインコミュニティの調査方法

受訪者インフォーマント

想成為美少女美少女になりたい的欲望という欲望

厚實描述厚い記述

3 預備性田野調査予備的なフィールドワーク

4 倫理考量的必要性倫理的配慮の必要性

渉及敏感議題センシティブな問題を扱う

知情同意インフォームド・コンセント暱稱ニックネーム

5 進行問巻調査アンケート調査を実施する

顕示八美肉實踐者並非正面對抗性別規範バ美肉実践者が現実社会に漂うジェンダー規範に対して積極的に正面からぶつかるのではなく而是以某種方式暫時「巧妙回避」社會所期待的覇權男性氣質社会から期待されるヘゲモニックな男性性を一時的にでも「うまく逸らす」方法を示すことができた

この文の後半は直訳すると、「ある種の方法によって~うまく避けることを示すことができた」になると思います。

滾雪球抽樣法スノーボール法

この節の最後の文の「質問項目に問題がないか、調査のプロセスが上手くいっているかに気を配りながら」の部分はほぼ中国語に訳出されていません。

6 後續訪談フォローアップインタビュー

半結構化訪談半構造化インタビュー

例如たとえば筆者相當希望能針對試圖完全體現虛擬美少女角色的個人進行提問筆者は,仮想の美少女キャラクターを完全に体現しようとする個人に対して質問することに関心を持った

7 問巻調査與訪談調査的功能アンケート調査とインタビュー調査の機能

關於元宇宙中的騒擾調査メタバースにおけるハラスメント調査

元宇宙原生世代メタバースネイティブ

成為虛擬小可愛バーチャルキューティーになる――日本的數位異性装日本におけるデジタル異性装

「バーチャルキューティー」は私たちからすると違和感のある言葉ですが、これは英語の論文の原題が「Becoming a Virtual Cutie」なので、やむを得ません。

李克特量表リッカート尺度

我無法將自己作為虛擬美少女的一面告訴家人或朋友私は自身のバーチャル美少女としての一面について家族や友人に話すことができません

由此このように我們得以従量化角度證明「成為美少女能帯來個人満足感」這一假設私たちは美少女になることが個人的な満足感をもたらすという仮説を量的に証明することができた。(改めて読むとパワーワードですね……)

成為虛擬美少女如何影響自我認知バーチャル美少女になることが自己認識に「どのように」貢献するのか

成為美少女美少女になることは同時也可能是一種逃避社會對男性期待義務的理由期待される男性としての義務を放棄する口実でもある

8 結語おわりに

筆者研究八美肉的特點筆者のバ美肉に関する研究の特異性は、在於其西方人、女性,以及採取女性主義觀點筆者が西洋人であり、女性であり、フェミニスト的な観点を取り入れていることにある此外さらに筆者亦為喜女性萌系角色與中世男性角色的御宅族筆者は女性の萌えキャラクターや中性的な男性キャラクターの「推し」を持つオタクでもある

二番目の文は直訳すると「女性の~中性的な~を愛好するオタクでもある」となるでしょう。台湾では2025年に『推活讓世界更寬廣世界が広がる推し活!』という語学本が出ているので、「推し」の概念がないわけではないと思うのですが……。

高度女性化的辣妹風格ハイパーフェミニンなギャルのスタイル(個人的に本記事最大のパワーワード)

筆者對VTuber與八美肉的看方VTuberやバ美肉に対する筆者の考えは與部分強烈批判的女性主義者不同彼らを痛烈に批判する一部のフェミニストのそれとは異なる

第8章 交織重疊的虛擬化身們重なり合うアバターたち VRChat中的VRChatにおける虛擬分身/使用者關係之面向アバター/ユーザー関係の諸相(池山草馬)

1 前言はじめに

甲賀流忍者甲賀流忍者ぽんぽこ與ぽんぽこと花生君所打造的ピーナッツくんによるPokoPeaLandぽこピーランド

野良貓のらきゃっと(じゃあ、「ノラネコP」はどう表記するの……?)(別の箇所では「野貓」)

2 虛擬世界的定義與發展歴程仮想世界の定義と発展経緯

哈比塔特Habitat子午線59Meridian 59網路創世記Ultima Online魔獸世界World of Warcraft模擬市民線上版The Sims Online第二人生Second LifeROBLOXROBLOX要塞英雄フォートナイトRec RoomRec Room

3 虛擬世界與虛擬化身的先行研究仮想世界とアバターに関する先行研究

在社交VR研究中,關於化身的討論ソーシャルVRにおけるアバター研究が往往過度集中於透過化身進行的自我表達與自我建構とりわけアバターを通じた自己表現、自己構築に議論が集中しがちであり同時也容易落入技術決定論的框架またしばしば技術決定論になりがちである

可能將人們在各個虛擬世界中生活與實踐所形性的多樣經驗人々が生き、そしてその実践によって形づくられていく個々の仮想世界における経験の多様性を簡化並還原為技術或系統設計問題技術や仮想世界のデザインの問題に還元してしまう危険性がある

這些研究皆指出これらの研究はいずれも試圖將透過角色或媒介進行互動的主體キャラクターやメディアを通したやりとりの主体を還原為「人」來理解的傾向,具有危險性「人間」に還元して理解しようとする傾向の危険性を指摘している

なお、この註13で言及されている松浦(2022)の二次元セクシュアリティ研究は台湾大学のオタク研究会を通して既に台湾に紹介されています。

https://medium.com/@otastusy/%E4%BD%9C%E7%82%BA%E9%9A%B1%E5%96%BB%E7%9A%84%E7%BE%8E%E5%B0%91%E5%A5%B3-4f694f291b17

https://www.researchgate.net/publication/392064577_zengbufikutosekushuaruxuanyantaiwanniokeruanimeshonnokuiazhengzhi

4 VRChatVRChat推特TwitterDiscord中的參與觀察與訪談Discordでの参与観察とインタビュー

5 VRChat中的虛擬化身經驗樣貌VRChatにおけるアバター経験の諸相

虛擬實境感覺VR感覚幻肢感ファントムセンス

化身本身似乎擁有與使用者分離的自身名稱アバターたちは、ユーザーとは切り離された自分自身の名前を持っていたのである

龍膽竜胆薄荷醤薄荷ちゃん

當彼此尚未熟識まだ気心が知れていない也就是不清楚可以談到多深入的情況下つまりどこまで踏み込んでいいかわからない與對方之間最「安全」的話題相手との最も「無難」な話題は往往就是關於化身的内容アバターについてのものであった。(「清楚」の正しい使い方)

這個化身好可愛呢そのアバターかわいいね

化身聚會アバター集会

この節で紹介されている、「圖表図表8.1 性格很差的薄荷醤性格悪い薄荷ちゃん 第④話④話」の画像中の台詞は日本語のままです。

香草市集バニラマーケット

量産型野貓量産型のらきゃっと通稱通称量産貓ますきゃっと」)

經過自己改造的「量産貓」自身で改変したますきゃっとが是他使用時間最長一番使う時間も長く也最有熟悉感的化身馴染みのあるアバターである

網路迷因ネットミーム生命光輝集會いのちの輝き集会

多邊形數量ポリゴン数Quest相容性Quest対応嵌合型虛擬化身キメラアバター

圖表図表8.3 VRChat中虛擬形象透過與多元行動者連結VRChatにおいて、様々なアクターと結びつきながら變形並跨越平台所構成之「生命週期」流程変形し、プラットフォームを横断していくアバターの「一生」のフロー」の画像中のテキストは全て繁体中文に翻訳されています。

6 虛擬化身與使用者的關係アバターとユーザーの関係性

也就是説つまり虛擬化身對使用者而言,一方面是作為自我與身體的延伸アバターはそれを操作するユーザーにとっての自己や身体であると同時に同時又是不可被完全還原為自我的創作物そこに還元されない創作物であり並且也是在集體互動中逐漸被賦与人格的角色また集合的に人格が付与されていくキャラクターでもある

但若仍可能形成類似「另一個自我」般的身分建構「もうひとりの自分」とでも言うべきアイデンティティ構築が可能になっているのだとすれば那麼這樣的生成究竟依賴何種條件それはいかなる条件によるものなのか

感想

本記事で見た範囲では、対応する概念が中国語圏にないなどの理由で訳せなかったり、詳細な追加説明を必要としたりする箇所はないようでした。参考文献や固有名詞が原語そのままになっている箇所も多く、必要とあらば外来の言葉を漢字化せずそのまま受け入れることはできるのだと思います(これは必ずしも柔軟性を意味しないのですが)。ただし、第1章では「ゆっくりボイス」を説明するのを諦めて「扁平緩慢的合成音」としている箇所があります。

細かい点ですが、本書に一貫して現れる「虛擬」という言葉、これの字義は「にせ」ではなく「虚構+模擬」なのですが、日本語でいう「バーチャル」と「仮想」の両方にこれが使われています。「virtualは『仮想』か『実質』か?」という論争も、外来の技術としての「バーチャル」と自国に取り込んだ思考様式としての「仮想」(そして、さらに新しい世代の地生えの文化としての「V」)の使い分けも、中国語圏では起きていないのかもしれません。

訳しづらい箇所を本当に探したいと思うなら、むしろ第3部(理論編)で挙げられているような実験的事例の記述の訳し方を見るべきでしょう。また、論証の流れを見ることで、バーチャルカルチャーに留まらない言語の構造や思考の流れの違いを推し量ることもできるかもしれません。

次は、これらの議論が中国語圏の一般の読者にどう受け止められるかを調べる番だと思います。本の奥付には新台湾元と共に香港ドルの価格も書かれており、香港でも販売されている可能性があります。

私の印象では、台湾では「美少女にでもならなければやってられない」という感覚は日本ほど切実なものとして広まっておらず、特にボイスチェンジャーの使用者を見かけたことはありません(ただし男の娘にあたる「偽娘」の概念はあります)。これには住宅事情やプライバシーの感覚の違いも関わっているかもしれません。Twitterがあまり普及していないため、「現場の声」は主にBBSで交わされているようで、正確な状況を知るのが難しいところです。同じ理由により本の宣伝も日本のようにはいかないでしょう。

とはいえ、岡本さんから渡りがついて出版にこぎつけたのは喜ばしいことだと思います。それ以前にねむさんが出版社に打診しなかったはずはないのですが、結局は地道に現地と交流していくのが突破口になるのでしょう。これを足掛かりに日本的美少女観を、コンテンツだけでなくそこに込められた心も併せて輸出していきたいと私は思っています。


〈以上〉

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