「採用…なのか? 64歳のおっさん、いきなり実技試験に放り込まれた日」 #104
仕事探し終了のホイッスルは鳴った…気がする。でも、下駄を履くまではまだ信じきれない。

今日は、約1か月半続いた仕事探しに、ようやく終了のホイッスルが鳴った…おそらく、たぶん、かもしれない。
前の職場で突然契約を打ち切られたことが、まだ頭のどこかにトラウマとして残っている。
だから今は「決まった!」というより、「下駄を履くまでは分からない」が正直な気持ちだ。
2日前に面接を受けたレストランの料理長から突然メッセージが届き、「明日、既存店に入ってほしい」と言われた。
面接を受けたのは、新しくオープンするレストラン。
来週末オープン予定と聞いていたので、今週は結果待ちくらいだと思っていた。
だから最初に頭に浮かんだのは、
「これ、実技試験やな…。」
まぁ、逃げる理由もない。
受けて立とうじゃないか。
向かった先は、島で一番大きなショッピングモールにある大型カフェレストラン。
朝、料理長と少し話をすると、不思議な共通点があった。
彼はチリ出身。
私の履歴書を見て驚いたらしい。
同じ時期にバルセロナで働き、しかも私が万博で働いていた地区でも仕事をしていたという。
「これも何かの縁ですね。」
お互い笑いながら仕事が始まった。
最初の仕事はタコの仕込み。
口と目を取り、頭を掃除し、吸盤の汚れを落としてオーブンでボイル。
8杯を無事終了。
第一関門突破。
続いて殻付きエビ1kg。
頭を外し、殻をむき、下処理完了。
第二関門突破。
次は牛肉のカット。
脂と筋を取り除き、約300gずつに切り分ける…はずが、計りが壊れていた。
料理長が笑いながら言った。
「Más o menos.」
スペイン名物、「だいたいこんな感じで」。
以前の記事にも書いた、あの"だいたい文化"だ。
料理長の見本を参考に切り分け、ここも無事クリア。
第三関門突破。
そして開店。
さっきまで静かだったキッチンが、一気に戦場へ変わった。
約80席ある大型店舗。
朝はボカディージョやサンドイッチ。
ちなみにボカディージョは、バゲットを豪快に半分に切り、具材とオリーブオイルだけで食べるスペインらしい一品。
シンプルだけど、パンが主役。
噛み応えも食べ応えも抜群だ。
私はオーダー担当ではなく、仕込みや食材の補充をしながら全体をサポート。
やがてランチタイム。
パスタ、ピザ、ハンバーガー、肉料理、魚料理…。
注文が一気に押し寄せる。
そのスピードと熱気に圧倒されながら、とにかく今できることを必死にこなした。
ようやく落ち着いた頃、料理長から感想を聞かれた。
私は正直に、
「こんな大きな店で働いたことがないので、雰囲気とスピードに圧倒されました。」
と答えた。
そして逆に聞いてみた。
「私の仕事ぶりはどうでしたか?」
料理長はこう言った。
「新しくオープンする店は、こことはまったく違います。規模も小さいし、もっと創作的な料理を出します。今日のことは気にしなくて大丈夫。」
まぁ、私の仕事には満足してくれたようだった。
…たぶん。
…おそらく。
…かもしれない。
最終的にはオーナーとの話し合いで決まるらしい。
オープンは来週土曜日。
その数日前から本格的に動き出す予定だという。
さて、本当に仕事のオファーは来るのか。
64歳のおっさんは、期待と不安をごちゃ混ぜにしながら、その連絡を待つことになりました。

2026/7/17 カナリア諸島より
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