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目覚めの途中 第3話「小さな記憶の断片」

列車の窓から差し込む光が、ふと揺れた。
まるで誰かが、カーテンの隙間からそっと覗いていたかのように。

私は、その気配に目を向けた。
けれど、そこには何もなかった。
ただ静かに、光の粒がゆらいでいるだけだった。

さっきの声――「やっと、会えたね」
あれは夢の残り香だろうか、それとも……

ゆっくりと、列車は森を抜け、低い丘のふもとにさしかかる。
その景色の中に、小さな花畑が広がっていた。

ブルースター。
星のようなその花が、朝の風にそっと揺れている。

なぜか、胸の奥がきゅっとなった。
この景色を、私は知っている。
見たことがある、というより――
誰かと一緒に、ここに立っていた気がする。

でも、思い出せない。
誰と、いつ、どんなふうに。

ぼんやりとした記憶の輪郭だけが、心に浮かんでは消えていく。

車内には、変わらず誰の姿もない。
けれど、どこかで誰かがこちらを見ているような、あたたかい気配があった。

私は、座席の端に座ったまま、
そのブルースターの花畑をずっと目で追っていた。

列車が通り過ぎても、
その青は、心の奥に静かに残っていた。

あの場所には、何かが眠っている気がする。
忘れてしまった、大事なもの。

それを確かめるために、私はこの旅を続けているのかもしれない。
夢か現実かも、もうあまり気にならなくなっていた。

ただ、確かに感じる。
あの声と、あの景色は――
どこかで、私のなかとつながっている。

列車はふたたび、小さな揺れとともに走り続ける。
朝の光が少しずつ強くなり、
窓辺に咲いた花の影が、そっと私の手の上に落ちた。




静かな列車の中、少しずつ過去の記憶がふわりと浮かびあがってきました。
ブルースターの花のように、淡く、優しく。

物語はまだ始まったばかり。
小さな断片をたどりながら、「わたし」はどこへ向かっているのでしょうか。

感想や感じたことがあれば、そっとコメントで聞かせてください。
次回、第4話もゆっくりと綴っていきますね。

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