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【詩のような物語】灯影をたどる夜/シロクマ文芸部

祈ることは、声を出さずに、名前を呼ぶことだった。
もう届かない、大切な人の名。

あるいは、まだ見ぬ未来の「わたし」への小さな誓い。

カーテンの隙間から差し込む朝日が、机の上のコップを透かすとき。
水の中に揺れる光が、ふっと返事をくれた──そんな錯覚を抱く。

「ちゃんと、見てるよ」

そのひとことを受け取っただけで、少しだけ、今日が歩きやすくなる。

涙が出そうな日。理由もわからず焦りが胸を締めつけ、
深呼吸さえうまくできなくなる夜。

冷たい風が玄関の隙間から忍び込み、
「誰も、わかってくれない」その思いが、音もなく膨らんでいく。

それでも祈ることは、心に小さな灯りをともすことだった。

誰にも見えない、小さな灯台。

その光は、かすかで、弱くて、けれど不思議なくらいあたたかい。

孤独に凍えるわたしに、「ここにいるよ」と微笑むように光ってくれる。

そして──ほんの一瞬だけ、灯台の光は闇をかき分ける。

雲間を裂く稲妻のように、暗い海を真白に染め、
波の向こうに浮かぶ岸辺を照らし出す。

そこには、忘れかけていた道標が、確かに立っている。

その一閃のあと、海はまた静けさを取り戻す。

けれど、心の奥に小さな地図が残る。
さっきまで見えなかった岸への道筋が、淡く光っている。

泣いてもいい。立ち止まってもいい。
祈ることは、明日への小さな一歩。

明日を信じる力なんて、ほんのひと粒の祈りがあれば、きっと足りる。



シロクマ文芸部に参加させていただいています。
小牧部長さま、いつもありがとうございます!




最後までお読みいただきありがとうございました。
もしあなたの心にも、なにか言葉が灯ったなら…よければそっと教えてくださいね🌿
もしかしたら、そのひとことから「詩のような物語」が生まれるかもしれません。


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