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『エリザベート』観劇感想|明日海りお×古川雄大、そして“闇が広がる”

私の初エリザベートは
宝塚歌劇団花組公演の
明日海りおトート、望海ルキーニの円盤でした。

なので、卵から孵ったばかりのヒナが懐くように、

このお二人姿はは脳内に"私のスタンダード"として刷り込まれているのです。

そのお二人が、まさか揃って『エリザベート』のシシィを演じるなんて——!

行かないわけにはいかないじゃないですかっっ。

と、いうことで。

10月某日、渋谷・東急シアターオーブにて、
ミュージカル『エリザベート』を観てきました。

古川雄大トート×明日海りおシシィです。


一歩足を踏み入れると……

宝塚版は何度も観てきました。でも、東宝版の扉を開くのは、これが初めて。

劇場に一歩足を踏み入れた瞬間、天井の高さと照明の陰影、不気味なセットが静かに並び、そこに立つだけで異界への入口に立ったような気がしました。

幕が上がると、音と光と息遣いが一体となり、
まるで生命を持つように私を包み込む——そんな舞台でした。
観るというより、吸い込まれていく感覚。
この夜、私は“美しさに沈む”という意味を知った気がします。

声が生む、命の震え

宝塚と東宝の圧倒的な違い。
それは“声の重み”。
男性の声量加わると、これほど劇場全体を震わせるものだとは思いませんでした。
(他のミュージカルではここまで強く感じなかったので、余計に印象的でした。)


その生々しさに圧倒され、音が物語を超えて心臓に届く。
舞台が“生”の力で満ちている、そんな感覚になりました。

“ミルク”や独立運動の場面で響く歌声の波に包まれ、ああ、人間の身体そのものが楽器なんだと感じるほど、全身が打ち震えました。

明日海りおシシィ

さぞお美しいだろうと思っていましたが……想像を超えておりました。

ポスターでは決して伝わらない、あの透明なオーラ。
光をまとうように舞台に立っていた彼女は、美貌を誇った“エリザベート”そのものでした。

特に鏡の間で微笑んだとき——
彼女は少女でもあり、女王でもあり、
老いさえも美しさに変える“永遠”そのものだった。

友人(明日海りおさんのファン)は「高音、大丈夫かなぁ」と心配していましたが、
どの曲も、聞きほれるほど美しかった。
100点が期待値だったとしたら、150点のすばらしいシシィでした。

古川雄大トート

こちらも、本当に美しくて、まず最初にうっとりと見惚れてしまうトートでした。
古川トートは、あやしくも蒼い、相手の心を映し出すような透明感と妖気をまとう“死”。

それは、覗き込んではならない、"死"という禁断の鏡のようで……

長い指先の動きひとつ、視線の揺らぎひとつに、観客全体が息を呑む。
その存在だけで、空気の密度が変わるようでした。

だからこそ、明日海シシィと古川トートの歌声が重なり合う瞬間——
劇場全体が陶酔に沈んでいった。
それは、目にも耳にも至福の二重奏。
私はその美に、完全にノックアウトされてしまいました。

圧巻の「闇はひろがる」

トートとルドルフの「闇が広がる」は、もう——なんというか、圧巻でした!!
(ほんと、語彙力どこ行った!って感じです。)

この曲は、オーストリア皇太子ルドルフ(中桐聖弥さん)とトートのデュエット。
愛に飢え、政治的にも孤立したルドルフが、絶望の淵に立つ。
そこへ、幼い頃から彼を魅了し続けてきた“死”——トートが現れ、
彼を静かに、そして甘美に死へと誘う。
『エリザベート』の中でも、屈指の名場面です。

ちなみに私、この曲をカラオケで歌ってドン引きされたことがあります(笑)。
あの静かな誘惑から始まる旋律を、
カラオケの個室で全力で歌うと……まあ、空気が変わりますよね。

「闇が広がる」は、囁くようなトートの誘いから始まり、
やがてルドルフの抑えきれない激情——「我慢できない!」という叫びへと突き進む。
抑圧された魂が、死にすら救いを求めるまでの軌跡を、音が描き出していくのです。

古川トートと中桐ルドルフのデュエットは、動と静のせめぎ合い。
駆け引きのようであり、祈りのようでもありました。
トートの低く響く歌声が胸に突き刺さり、
ルドルフの震えるような声が、まるで助けを求める祈りのように劇場を満たす。

二人の声がぶつかり、やがて溶け合う瞬間——
そのあとに訪れる悲劇を知っていても、希望は音の粒となって消えていく。
胸がしめつけられて、目を離すことができませんでした。

まるで、ルドルフの魂が“影の中へと吸い込まれていく音”を聴いているようでした。

夜のボート

ですが。
私の一番好きな曲は、「夜のボート」なんです。

「闇が広がる」が"動"の魅力(情熱、破滅、誘惑)を持つ楽曲だとすれば、

「夜のボート」は"静"の魅力(諦念、孤独、すれ違い)を持つ楽曲

だと思います。

激しく愛し合ったシシィとフランツ(田代万里生さん)が、長い年月と数々の悲劇を経て、いかに修復不可能なほど冷え切ってしまったか、その悲痛さをなんであんな美しい曲に綴じめられるのだろうと、何度聴いても、涙があふれます。

フランツの「後悔」とエリザベートの「拒絶」。

夜の海に浮かぶ
二隻のボートのような私たち
近づくけれどもすれ違うだけで
それぞれのゴール目指す

夜のボート

ああ、ほんと、素敵でした……(ここでも語彙力!)

ちょっとびっくりしたこと

宝塚版と東宝版、いくつか違うところがあって驚きました。
東宝版のほうが、少し“大人向け”なのかな……と。
(詳しく書くとネタバレになるので、ここでは控えますね。)

チビ版ルドルフさんが、とても歌が上手でした。
歌っていたのは谷慶人さん。
(谷慶人"くん"と書こうかとおもいましたが、あんな素晴らしいパフォーマンスを見せてくださった方に"くん"づけは失礼極まりないのでやめました)

声がよく伸びていて、澄んだ響きが劇場の空気を満たすよう。
幼いルドルフの孤独と痛みを、のびやかに、そして見事に歌い上げていました。
(宝塚ではチビルドルフは子役さんじゃないので)

そしてもう一つ。
お客さんの女性率がとにかく高い!

その結果——休憩25分のトイレタイムが凄まじかったです。
列の最後尾を探すだけで5分。
ようやく見つけても、そこからまた長蛇の列。

もしこれから観に行く方がいたら、
一度外に出て(半券があれば再入場できます)
他の階のトイレを利用するのがオススメです。

観劇の余韻も、トイレの列も、どちらも長かった……(笑)

みなさん、後半間に合ったのかしら……

また、新しい夜へ

11月。
今度は井上芳雄さんと望海風斗さんの『エリザベート』を観に行きます。

同じ物語なのに、まったく違う風が吹くはずです。
トートの“影”とシシィの“光”——
そのあわいを、もう一度感じたい。

そして何よりの楽しみは、
望海風斗さんの「最後のボート」。

きっとまた、
あの静かな夜の海で、
二隻のボートがすれ違う瞬間に、
心を奪われるのだと思います。


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