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【詩のような物語】朝の一滴/シロクマ文芸部

蛇口から
水がひとすじ、こぼれ落ちた

朝日が差しこむ台所
銀色の蛇口が、光を跳ね返している

昨日の寝不足
玄関で言えなかった「いってらっしゃい」
あの人から来なかった返信──
忘れようとしても、胸の奥にぬるく残っている

ぬるんとした空気を
すっきり洗い流したくて
私は蛇口をひねった

ぽたり、ぽたり
流れる水は、ただの水じゃない

砂ぼこりの舞うベランダで
一本の苗木をうるおし
部活帰りの子どもたちの喉を潤し
遠い海辺の少女の髪を飾る花となるかもしれない

世界はきっと、水でつながっている
たった一滴でも、祈りが届くこともある

だから今日も私は
蛇口をそっとひねる
静かな音とともに、夏が始まる



シロクマ文芸部に参加させていただいています。
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