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短編小説|午前三時の順番待ち/シロクマ文芸部/詩のような物語

眠れない、から夜がほどけていく。
時計の針は午前三時をさしている。

誰にも見られていないのに、
律儀に同じ速さで進んでいる。

取り残されているのは、
きっと時間じゃなくて、わたしのほうだ。

布団の中で、今日の言葉たちが何度も並び替えられる。
言わなかったこと、言いすぎたこと、うまく笑えなかった瞬間。

どれももう戻らないのに、やけに鮮明で、
まるでまだ選び直せるみたいに、胸の奥で順番待ちをしている。

目を閉じるたびに、静けさが少しずつ音を持ち始める。
冷蔵庫の低い唸り、遠くの車、誰かの足音、カーテンがわずかに揺れる音。
どれも、思考の輪郭をなぞるように、静かにそばにいる。

世界はちゃんと続いているのに、
わたしだけが、夜に引っかかっているみたいだ。

それでも、不思議と怖くはない。

眠れない夜は、
わたしがわたしに追いつくための、
少しだけ長い時間なのかもしれない。

焦らなくていい、と誰かが言う。
たぶんそれは、今日のわたしの声だ。

やがて、思考の輪郭がぼやけて、
言葉たちは淡くなっていく。

眠れない、と思っていた夜の端で、
いつのまにか、
わたしは、静かに眠りに落ちている。


シロクマ文芸部に参加させていただいています。
小牧部長さま、いつもありがとうございます!
今回のお題

「眠れない」から始まる文芸作品です。


【詩のような物語】という、小さな物語たちを紡いでいます。
もし、今日の物語が、あなたの心にふれていたら
──それだけで、うれしいです。ありがとうございます。
これからも、日々の光や影を、そっと言葉にしていきます。
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