【詩のような物語】夕焼けが照れている/シロクマ文芸部
「夕焼けは、空が今日もありがとう、って言ってるみたいだね」
私がそう言うと、ハルトが、くるっと顔を向けて聞いてきた。
「ねえ、おとうさん、なんで夕焼けはオレンジいろなの?」
私は声をすこし低くして、ちょっとだけカッコつけながら答えた。
「それはね──
空が、恥ずかしがってるからさ。
ハルトが今日、すっごくがんばったの見てたから、
つい顔が赤くなっちゃったんだよ」
ハルトは不思議そうに目をしばたいた。
「……オレンジは、はずかしいいろなの?」
「うん、たぶん。トマトも、にんじんも、はずかしがりやだろ?」
「えーっ!? トマトはにがてだから、あんまり見ないもん」
「じゃあ空も、見られると照れるんだよ。ほら、あんまりじーっと見ないで」
「わかった!じゃあ、ちょっとだけにしとく!」
でも、その後、ふたりでそのまま、ベンチでずーっと夕空を見ていた。
「ねえおとうさん、
あしたも夕焼け、オレンジになるかな」
「なるさ。ハルトが元気でいたら、もっとピカピカになるよ」
「じゃあ……あしたは、ママにおさら洗うとこ見せる!」
「証拠、大事だもんな」
ふたりはくすくす笑って、
オレンジ色の風のなかで、ソーダ味の時間をすこしだけのばした。
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