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短編小説|夜に降る灯(ひ)/シロクマ文芸部/詩のような物語

夜に降る。
雨の匂いが胸の奥を刺す。
冷たいのに、懐かしい。
あの夜も、こんな雨だった。

足元の水たまりに街灯が揺れ、
傘の縁から落ちる雫が頬を撫でる。
まるで、誰かの指先みたいに。

坂を上る。
滑る舗道、白い吐息、張り付く髪。

それでも止まれなかった。

――あの灯りの下で、私たちは笑っていた。
あなたはコンビニの袋から缶コーヒーを取り出して言った。
「ここで飲むと、街が少し近く感じるんだ」
ベンチの上で肩を寄せ、
オレンジ色の光に包まれながら、
夜風の中で未来の話をした。

その灯りが、今もそこにある。
雨の粒を抱いて、静かに揺れている。
そして私は、
あなたが灯してくれた光を、今も辿ってここまで来た。

息を整え、顔を上げる。
頬を伝う雫が涙なのか分からない。
唇がわずかに震えて、言葉を探す。

――「帰ってきたよ」

灯りがひときわ強く瞬いた。
風が雨をさらい、音がやさしく変わる。
私は泣きながら笑った。

夜に降る雨は、
悲しみを消すためじゃなく、
愛を忘れずに生きるために降るのだ。



シロクマ文芸部に参加させていただいています。
小牧部長さま、いつもありがとうございます!
今回のお題
「夜に降る」から始まる文芸作品です。



最後までお読みいただきありがとうございました。
もしあなたの心にも、なにか言葉が灯ったなら…よければそっと教えてくださいね🌿
もしかしたら、そのひとことから「詩のような物語」が生まれるかもしれません。


【詩のような物語】という、小さな物語たちを紡いでいます。
もし、今日の物語が、あなたの心にふれていたら
──それだけで、うれしいです。ありがとうございます。
これからも、日々の光や影を、そっと言葉にしていきます。
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