仕事で人生をすり減らされないために/『整えるだけでうまくいく! すごい仕事術』を読んで
『整えるだけでうまくいく! すごい仕事術』を読んだ。
読んだだけで
かつての私のように、限界まで頑張りすぎてしまっている人にこそ読んでほしいと心から思えた。
読んで、最も心に残ったのは、「余白がなければ、良い仕事はできない」という考え方だった。
本書では、木を切りたいなら、切り続けるだけではなく、斧を磨く時間をつくる必要があると述べられている。詰め込みすぎた脳では、良いパフォーマンスを発揮できないという説明にも、なるほどと思った。
忙しいときほど、少しでも多くの仕事をこなそうとしてしまう。
しかし、本当に良い仕事をするためには、手を止め、休み、自分を整えることも必要なのだ。
斧を磨く時間は、仕事をしていない時間ではない。
より良い仕事をするための、大切な準備の時間なのである。
この本には、読んですぐに実践できる気づきが多かった。
単に「前向きに考えよう」「もっと努力しよう」と呼びかけるだけの精神論では終わらない点が、本書の大きな魅力だと思う。
エネルギー、つまり体調の管理から、ストレスマネジメント、仕事の仕組みづくり、さらにチームマネジメントまで、実際の仕事や生活に取り入れられる形で整理されている。
自分一人の働き方だけでなく、人間関係や組織のあり方まで含めて考えられているため、多くのビジネスパーソンに新しい気づきを与えるはずである。
私自身、本書を読んで、自分の仕事を普段から観察することの大切さにも気づいた。
一つの仕事にどのくらいの時間がかかっているのか、どのようなときに調子が上がり、どのようなときに下がるのか。それを知ることが、自分を整える第一歩なのだと思う。
これまでは、仕事は与えられたものをこなすことが中心で、自分の状態を細かく観察することはあまり考えてこなかった。
しかし、自分が力を発揮しやすい時間帯や、集中力が落ちる原因を知ることができれば、無理に頑張り続けなくても、より良い成果を出せるのではないかと思った。
私の場合、飲み会などによって生活リズムが崩れると、翌日の仕事にも影響が出る。睡眠時間がずれたり、疲れが残ったりすると、集中力が落ち、いつもなら短い時間で終わる仕事にも長くかかってしまう。
これまでは、調子が上がらない日があると、自分の意志や努力が足りないのではないかと考えることもあった。
しかし、自分を責める前に、睡眠や予定の入れ方を見直し、良い状態で働ける生活をつくることが大切なのだと分かった。
整える生活を送るためには、仕事のやり方だけを変えるのでは不十分である。
普段の生活そのものを見つめ直し、自分にとって無理のないリズムを知る必要がある。仕事と生活は別々に存在しているのではなく、互いに大きく影響し合っているのだと思う。
余談だが、西洋の言葉や考え方の背景では、労働が苦役や罰と結びつけられてきたという話があり、だからこそ、仕事を定時で終わらせ、自分の時間に戻ることを重視する考え方がある。
もちろん、海外の人がすべて同じ考え方をしているわけではない。
それでも、仕事を終えたら自分の人生に戻るという発想は、仕事が生活の中心になりがちな私たちに、働くことの意味を考え直させてくれる。
本書には、仕事によって「自分の人生の大切な何かがすり減っている」と感じる人や、「仕事とは何なのだろう」と疑問に思っている人への問いかけがある。
その部分を読んだとき、私は昔の自分を思い出し、胸が苦しくなった。
当時の私は、徹夜をすることも当たり前だった。
仕事を終えて家に帰れば、今度は主婦として、母としての役目が待っていた。
家族はとても積極的に手伝ってくれた。それでも、私の身も心も少しずつすり減っていった。
毎日を何とか乗り切ることに必死で、自分の疲れや苦しさに向き合う余裕さえなかったのだと思う。
そしてついには、心身ともに限界を迎え、一年半、仕事を休むことになった。
休職してからの三か月ほどは、暇さえあれば、こんこんと眠っていた。
自分でも驚くほど眠り続けた。
今振り返ると、あの眠りは、それまで無理を重ねて失っていた自分を取り戻すために、どうしても必要な時間だったのだと思う。
長い間、私は斧を磨くことなく、切れ味の落ちた斧で木を切り続けていたのかもしれない。
疲れていても手を止めず、休むより頑張ることを優先していた。
しかし、それでは良い仕事ができないだけでなく、自分自身まで壊してしまう。
仕事に復帰してからは、自分を大切にすること、そして家族を優先することを最優先にしてきた。
以前のように、自分の健康や家族との時間を犠牲にしてまで働かないと決めた。本書を読んで、その選択は間違っていなかったのだと改めて思えた。
「整える」とは、単に効率よく仕事をするための技術ではない。
自分の健康や家族との時間、そして自分自身の人生を守るための行動でもある。
余白は、すべての仕事を終えた後に、たまたま残る時間ではない。
私たちが健康に生き、落ち着いて考え、良い仕事を続けるために、最初から確保しておかなければならない時間なのだ。
本書が伝えているのは、「もっと頑張る」ことではなく、「もっと整える」ことの大切さである。
これまで、成果を出すためには努力の量を増やすしかないと思いがちだった。
しかし、体調を整え、ストレスを減らし、仕事の仕組みを見直すことで、無理に頑張り続けなくても成果を上げられる可能性がある。
このシンプルな発想の転換は、仕事のやり方だけでなく、人生そのものを変えてくれるかもしれない。
自分の状態を観察し、必要なときには休み、大切なものを守りながら働く。
その積み重ねが、結果として良い仕事にもつながっていくのだと思う。
私はこの本を、仕事のために自分の人生の大切な何かがすり減っていると感じる人や、仕事とは何のためにするものなのかと疑問を抱いている人にすすめたい。
また、毎日忙しく働いているのに成果を感じられない人、自分の体調や生活を後回しにしてしまう人、部下やチームの働き方を改善したいと考えている人にも、多くの気づきを与えてくれるはずである。
仕事は人生の一部ではあっても、人生のすべてではない。
仕事によって、人生や健康をむしばまれてはいけない。
自分を整え、守ることを後回しにしないこと。
家族や健康、自分らしく生きるための時間を大切にすること。
それが、長く働き続けるためにも、良い仕事をするためにも必要なのだと、この本から学んだ。
「もっと頑張る」のではなく、「もっと整える」。
その言葉は、過去の自分への励ましであると同時に、これからの自分が大切にしていきたい生き方でもある。
仕事だけでなく、人生まで変えてくれる可能性を感じさせる良書だった。
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