音楽ニュース:バイロイト・ワーグナー祭、監督カタリーナ・ワーグナーの長期療養
3月中旬からドイツのオペラ劇場やコンサート・ホールは新型コロナ・ウィルスの感染拡大を受けて閉鎖しています。4月にはほとんどの劇場やホールが来シーズンからの再開を決定しました。ちなみにドイツのクラシック音楽シーズンは秋に始まり夏前に終わります。
夏には多くのフェスティヴァルが開催されますが、それもほとんどが中止になりました。なかでも『バイロイト祭』の決定は大きな注目を集めていましたが、3月下旬には今年の開催中止を発表しました。
世界中に数多くのフェスティバルがあります。しかし『バイロイト祭』はひどく異彩を放つ、ほかに比べるもののないフェスティヴァルです。
バイロイト祭は毎年7月25日に開幕、5週間にわたりワーグナー作品のみ、それも≪さまよえるオランダ人≫、≪タンホイザー≫、≪ローエングリン≫、≪ニーベルンゲンの指環≫(≪ラインの黄金≫、≪ワルキューレ≫、≪ジークフリート≫、≪神々のたそがれ≫)、≪トリスタンとイゾルデ≫、≪ニュルンベルクのマイスタージンガー≫、≪パルジファル≫を上演します。
場所はドイツ・バイエルン州北部フランケン地方のバイロイト市(人口約7万5千人)の『緑の丘(grüner Hügel)』に立つ『フェストシュピールハウス(Festspielhaus)』です。
バイロイト祭はオペラ界だけではなく社会的にも大きな出来事で、開幕初日はドイツのメディアのほとんどがとりあげます。メルケル首相はじめ政治家、経済界の重鎮や著名人、外国からの賓客も多数来場します。テロ対策もあり、警備は非常に厳しくなっています。
【下の写真は2019年7月25日、開幕プレミエ≪タンホイザー≫公演終了直後です。要人の車がフェストシュピールハウス前に多数とまっています。警官が警備しています。】

以前、バイロイト祭のチケットを入手するには10年待ちと言われましたが、近年はチケットもインターネットで買えるようになり、幾分緩和されました。しかし入手は相変わらずの狭き門です。
フェストシュピールハウスはワーグナーがオットー・ブリュックヴァルトと共に設計しました。特殊な設計で、その音響は唯一無二です。客席は狭く快適ではありません。最近では温暖化の影響もあり、外気温が40度近くなる日も珍しくありません。でも・・・
フェストシュピールハウスには冷房がありません!
『音響のために冷房を入れない』のです。「とにかく暑い!暑すぎる!」。気が遠くなりそうです。
【フェストシュピールハウス内部】

さて、バイロイト祭監督はワーグナー家メンバーが務めてきました。
作曲家リヒャルト(1876~82)→ リヒャルトの妻コジマ(83~1906)→ 2人の息子ジークフリート(08~30)→ その妻ヴィ二フレート(31~44)→ 2人の息子ヴィーラントとウォルフガング(51~66)→ ウォルフガング(67~2008)→ ウォルフガングの娘2人(異母姉妹)エファとカタリーナ(09~15)→ カタリーナ(16~)です。
とはいえ、現在のバイロイト祭はワーグナー家の持ちものではありません。公が大きな援助をしており、劇場、リハーサル室などは1973年からバイロイト・リヒャルト・ワーグナー財団が所持、財団内の持分は現在、ドイツ連邦共和国とバイエルン州とバイロイト友の会(1949年設立、会員数5300人)がそれぞれ29%ずつ、バイロイト市が13%です。
2019年の総予算は約32億円(1€=120円、補修・改修費を含まず)、この内、公的補助は、連邦(国)とバイエルン州がそれぞれ約3億5千万円ずつ、バイロイト市が約1億6千万円、オーバーフランケン地方が約5千万円で、この公的補助は総予算の約28%にのぼります。加えて、バイロイト友の会が約3億5千万円を拠出しています。(参考資料:バイロイト祭HP、https://www.bayreuther-festspiele.de/)
さて、昨日4月27日夕方、ショックなニュースが駆け巡りました。
現監督カタリーナ・ワーグナー(41歳)が病気のため長期療養に入る、臨時の代理は以前、同祭の経営部門責任者だったハインツ=ディーター・ゼンゼが務めるという発表です。期間と病名は公表されていません。
カタリーナ・ワーグナーは昨年11月、2025年まで契約延長したばかりでした。
Foto : ©Kishi
