人間ドックがテーマパークだと気づいてめちゃくちゃ楽しくなった話
人間ドック、好きですか?
そんなこと考えたこともない、好きとか嫌いとか別にない、って人が大半でしょうか。
まだ人間ドックの対象年齢じゃない、って人もいるかもしれないですね。
私はね、人間ドック、好きです。
楽しみ方を見つけたんです。
人間ドックって、健康診断もそうなんですけど、たくさんの部屋を順に周りながら、いろんな検査をしますよね。
そうしていると、だんだんと、体験型テーマパークにいるみたいに思えてきませんか?
年1回だけ来ることができる、大人の遊園地、みたいな。
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カルテ型スコアカードに、なるべくいい数値を刻むのが、このテーマパークでのミッションです。
他人とは比べない、去年の自分よりも良いスコアを記す。少なくとも悪化させない。
いまの自分の実力を測るため、大人はみんな、年に1回ここにやって来るのです。
このテーマパークでは、事前準備が大事です。
病院という名のフィールドがいくつか用意されているので、その中からよさそうなところを選んで、Webか電話で予約をします。
人気のフィールドはすぐサーバーが埋まっちゃうから、3ヶ月前から申し込むこと。
当日は、受付ゲートを通るための必須アイテム(問診票、2日分の検便、朝イチの尿)を絶対に忘れないこと。
作画のいい受付美女に出迎えられて、アイテムを渡すと入場許可が下りるので、本日のスコアカードを受け取ります。
更衣室でこの世界の戦闘服(検査着)に着替えて、いざ、フィールドへと進みます。
まずは、チュートリアルとして身長と体重の測定から始めます。
ここ、難易度は低いんだけどスコアの関心度が高いので、対策が必要なアトラクションだったりします。
最初の部屋の前で少し待つと、「33番の方〜」と自分の番号が呼ばれました。
部屋に入ってスリッパを脱いで、身長と体重が同時に測れるアトラクションに乗ります。
1年間の不摂生を後悔しながら、悪あがきのように、「いい姿勢で立つ」と「体重から空気の重さを減らすために息を吐く」のベストを同時に尽くします。
そんな魂胆を見透かすかのように、上から降りてきたバーに、頭をコツンと叩かれました。
この世界のキャストである検査技師さんは、テーマパークの世界観に合わせてスクラブを着ています。
美人度が3割増し。いいですね。
キャストさんは、去年よりも悪化した体重スコアに落ち込む私を気づかいながら、丁寧にカルテに書き込んでくれます。
「お疲れさまでした。次は聴力検査なので、8番のお部屋の前でお待ちくださいね」と、きれいな声で案内してくれました。
聴力、視力、X線の検査を順調にクリアし、次は採血です。
採血は、キャストさんの技量によって満足度が変わるのが難点です。
ディズニーランドのジャングルクルーズの船長のように、みんな一定のおもしろさ基準をクリアしてくれてたらいいんだけど。
今回の採血キャストさんは "当たり" でした。
針を刺すのが上手い、よかった。
「採血、苦手ですか?緊張しますよね~」
と、血を抜かれている間にも、優しく声をかけてくれました。
「あと2本分取れたら終わりますからね~。健康状態をちゃんと知るために、採血って大事なんですよ。あ、今なら期間限定で、腸内フローラの検査もオトクに受けられるので、もしご興味あったら言ってくださいね~」
優しい声掛けから、流れるような営業トーク。すばらしい。
前世はきっと、生命保険販売レディだったのでしょう。
採血をクリアし、残るはバリウム検査です。
本当はバリウムじゃなくて、鎮静剤つきの胃カメラ検査ができるフィールドを選んで、寝ている間に終わらせたかった。
初動が遅れてしまい、バリウムフィールドしか予約できなかったのです。反省。
でも実は、バリウム検査が一番アクティブなアトラクションで、メインイベントだったりします。
バリウム検査を楽しめるかどうかで、人間ドックというテーマパークにハマれるかが決まります。
大丈夫、いける。このために朝ごはん抜いてきたんだから。
14番の部屋に入り、人体をぐるぐる回す機械の上に乗ります。
「この発泡剤の粉を、こっちのお水で飲んでくださいね。飲んだら苦しくてもゲップしないように~」
バリウム担当キャストさんの声掛けに、はい、と返事をします。
発泡剤をごくんと飲んですぐに「ぐふ、」と空気が抜けました。
ばれるとまずいので、「大丈夫です、ゲップなんて出ていません」って顔をしておきます。
このアトラクションは、演技力も加算対象です。
「では次は、バリウムを飲みましょうね~」
と、真っ白でどろっとした、無味の液体が渡されました。
言われるがままに飲み干します。
この間もゲップは我慢したまま。
「OK!機械を倒しますね~」
「では、そのまま寝転がりながら、右周りに3回転しましょう~」
右周りってどっちだっけ、と思いながら、ぐるぐると寝返りを打ちます。
寝返りを打つのって、結構体力使うんだな。
「では、右斜め45度に身体をかたむけましょう。撮りますよ~」
と、いろんな角度で胃が映るようにポーズを決めたり、機械が倒れたり起きたり逆さになったりするのを耐えながら、機械に乗り続けます。
ゲップを我慢させられ、よくわからない液体を飲まされ、機械のうえでぐるぐる動かされる。
なんだか、「マッドサイエンティストの実験材料になる」というアトラクションに乗ったかのように感じられてきます。
「いいですね~順調!めっちゃ早く進んでます!」
マッドサイエンティスト、ではなく善良なキャストさんが、私の気分をアゲる声掛けをしてくれます。ちょっといい気分。
「はい、お疲れ様でした!ゲップしても大丈夫ですよ~」
やっと許可が下りました。「ぐふ~~」と溜まっていた空気が抜けていきます。
キャストさんは、バリウムクリア報酬の下剤とお水を渡してくれながら、
「いや~~とっても順調に進んで助かりました!今日イチのスピードだったかもしれないです!!」
と、本日のハイスコアであることを明かしてくれました。
こんなところで褒められると思ってなかったな。
今度から「特技:バリウム検査を早く終わらせること」って書こうかな。
すべての検査を終え、項目を埋め切ったスコアカードを、作画のいい受付美女に渡します。
フィールド全クリ報酬として、近くのレストランのランチ割引券がもらえました。
正式な結果が届くのは3週間後とのこと。
更衣室で戦闘服を脱ぎ、テーマパークの外の日常に帰ります。
はぁ、来年の人間ドックはもっといいスコアが出せるように、健康的な生活をしなくちゃ。
まぁでも次は1年後だし、明日から頑張ればいいよね。
その「明日頑張る」が1年間果たされないことを薄々予感しながら、ランチ券を使うために、ちょっとリッチな中華料理屋に向かうのでした。
読んでくれてありがとうございました!
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