見出し画像

足りなかった10円~『なかよし』が買えなくて~

あれは小学校一年生の時の話。

当時、私の家族は週末になると、サティというショッピングモールへ出かける習慣があった。

買い物に出かけると、基本的に単独行動をとる。
家族みんながそれぞれ好きな店へ行き、一時間後に待ち合わせ場所へ集まる。
それから外食をして帰宅、というルーティーンであった。

その日もサティで単独行動していた私は、本屋でマンガを物色していた。
当時夢中になって読んでいた、少女マンガ雑誌『なかよし』を手に取り、レジへ向かった。

当時の『なかよし』の値段は、390円。
レジカウンターの上に、財布の中の小銭を全部出す。



小銭は、全部で、380円しかなかった。


…足りない。


10円、足りない。



どうしよう。
目の前に、大好きな『なかよし』があるのに。

レジのお姉さんに向かって、
「お金…足りない…」
ボソッとつぶやいた。


「買えない…」



一瞬焦ったけれど、大丈夫。
今日、私は一人じゃないから。

「お母さん…探してくるから。またあとで買うから!」
そう言うと、お姉さんはニコニコ笑顔で、
「大丈夫だよ。じゃあ、置いておくからね」
と声をかけてくれた。

380円の小銭と『なかよし』をレジカウンターの端のほうに置いて、待ってくれると言う。



急いで母を探しに行った。
母は、すぐには見つからなかった。

フードコートや洋服売り場をぐるぐる回ってみたけれど、なかなか見つからない。
当時は連絡を取る手段もなかったので、気持ちばかりが焦る。


20分ほど経った頃、本屋で雑誌を読んでいる母を見つけた。
お金が足りなかったことを話すと、すぐに足りない分を渡してくれた。


レジに戻ると、お姉さんはまた優しく、微笑んで対応してくれた。


やっと買えたあ…。

ほっと胸をなでおろした。


安堵の気持ちとうれしさで、胸がいっぱいになった。
無事に買えた『なかよし』を、ぎゅっと抱きしめた。

表紙のセーラームーンが、こちらを見て微笑んでいる。
「良かったね!」と言っているように見えた。


この日ほど、10円の重みを感じたことはなかった。
たった10円。

だけど、その10円があったからこそ、私は大好きな『なかよし』を手に入れることができたんだ。



生まれて初めて、お金のありがたみを感じた日。



ずっとずっと昔の話だけど、きっとこれからも忘れない。
お姉さん、優しくしてくれてありがとう。



この記事は、noteコンテスト参加作品です。
テーマは「はじめてのお金」。

幼少期のお金の思い出を振り返って、書いてみました。
テーマに沿って記事を書くのは、初挑戦でした。
楽しかったです!
素敵な企画をありがとうございました😊✨

いいなと思ったら応援しよう!