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ストーカーは、自分を犯罪者だと思わない

 ある企業の代表者が、十九、二十歳前後の若い女性スタッフに異様な関心を示していた。

 気に入った女性を細かく観察し、その様子を筆者のスマホへ逐一メールで送ってくる。報告のつもりなのか、自慢のつもりなのかは分からない。しかし、内容を読む限り、経営者の業務報告とは到底言えない。どう見ても、ストーカーまがいの異常な執着であった。

 以下は、その人物から送られてきたメールの要旨である。

1)あの子は、最初に会った時の挨拶が一番美しかった。
2)あの子の着物姿が素敵だったので、通路で撮りました。送ります。
3)あの子の私服は、今の薄給では買えないのではないか。
4)あの子の後ろに、誰かついているのではないか。
5)あの子が体調不良なので、事務職へ移そうかと思う。
6)あの子が頭痛、腹痛、吐き気を訴えたので、一週間ほど休ませた。
7)病欠にすると診断書が必要なので、公休扱いにした。
8)あの子が辞職すると言っている。
9)会社を辞めた後、あるパーティーに来て、ビールを飲んでいた。
10)私は、十九、二十歳の生娘に騙された。

 経営トップでありながら、メールの中身は経営ではなく、若い女性スタッフへの執着ばかりである。企業を預かる者の言動として、あまりに幼稚で、あまりに危うい。

 特に看過できないのは、5)から7)の流れである。体調不良、頭痛、腹痛、吐き気、一週間の休み、そして病欠ではなく公休扱い。もちろん、確証のないことを断定するつもりはない。しかし、通常の労務管理として見れば、不自然さは拭えない。

 社員が急病で休むのであれば、病欠として処理し、必要に応じて後日診断書を提出させれば済む話である。それをあえて一週間公休扱いにした理由は何だったのか。何かを表に出したくなかったのではないか。そう疑われても仕方がない対応である。

 問題は、この人物一人の異常性だけではない。役員たちがその挙動を知りながら黙認していたとすれば、組織そのものが腐っていたことになる。公私混同を止める者がいない。若い女性スタッフを守る者もいない。そこにあるのは、経営ではなく、私物化された閉鎖空間である。

 ストーカー気質の人物ほど、自分の行為を犯罪だとは思っていない。むしろ、相手を気にかけている、守っている、好意を示しているだけだと都合よく解釈する。しかし、相手の意思を無視した観察、撮影、詮索、追跡、干渉は、好意ではない。支配である。

 その後、この経営者は実質的に解任されたようである。筆者はすでに絶縁していたため、詳しい消息は知らない。ただ、ある人の話によれば、随分とやつれ、他県の小さな会社に再就職したという。山頂に立っていたつもりが、自らの愚行によって雪崩のように麓まで転げ落ちたのである。まさに自業自得である。

 過去にもパワハラ事件で降格処分を受けた履歴があったと聞く。そう考えると、これは一時の過ちではなく、人格と職業倫理の欠落が長年にわたり露呈し続けた結果なのだろう。

 経営者に必要なのは、若い社員への執着ではない。社員を守る理性であり、組織を律する倫理であり、自分の欲望を制御する品性である。

 それを失った者は、いずれ会社からも、人からも、社会からも見放される。追放されるのである。

 最後に思うことは、なぜ周囲は止めなかったのかということだ。


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