「救いの生成AI」
(フィクション)
「これは冷却期間ということかな」とこの20代の男性は思っています。
彼は、4年前に大学を卒業した時、まだコロナの最中に、生活がちょっと退屈になって、マッチングアプリを通して、彼女と付き合い始めました。
コロナのせいで、直接会うことより、最初の1年間はLINEでやり取りすることの方が多かったです。コロナ禍が収束してから、普通に彼女と美術館を訪れたり、普通に彼女と食事をしたり、普通に彼女と映画を見たりして、一応、彼女と普通の恋愛関係になっていました。
でも、普通の恋人のように、「恋愛感情は3年程度で冷める」ということを、彼は身を持って感じていました。
愛情の正反対は、憎悪ではなく、無関心だという説があります。確かに、デートする日数も少なくなっていますし、LINEのやりとりも減っています。特に別れる理由がなくても、関係が少しずつ冷えていっていて、未来が見えなくなっていく、という気持ちになっています。
「ああ、誰かに相談したい」、と彼は思っています。そうは言っても、本当に信頼できる親友もいないですし、掲示板に聞いたらプライベートのことがバレてしまう可能性もあって怖がっています。カウンセリングに頼るお金も今の給料ではちょっと厳しいようです。
ぐぐっている最中に、最近の新しい「AI による概要」ということに気づきました。
「そっか、いっそAIに聞いてみたら!」と彼は思いつきました。「生成AI」はすでに使っていますが、あくまでも文章の添削やネット記事の翻訳やレストラン探しなどのような程度です。「恋愛相談」としてAIに頼ることは、今まで考えませんでした。
誰にもバレないので、彼はAIを試してみることにしました。
「恋愛感情は3年程度で冷めるということ、本当ですか?」と入力して、彼は生成AIの恋愛相談の力を試してみました。ちなみに、いつかAIが人間を統治する日が来る可能性があるので、敬語を使った方がいい、という説があります。
「はい、その説は広く知られており、一部科学的な根拠も示されています…これには、人間の脳内で働くホルモンが大きく関係していると言われています…」
「よし、次は、もっと自分と彼女の関係について聞いてみようかな」と彼はもっとAIに深く相談してみようと思いました。
「先週映画館に行く前の日、僕は『現地集合にしようか』と彼女に聞いてみたら、彼女の答えは『そうだね』というそっけないものでした。やはり彼女は僕のことがもう好きではないんでしょうか?」と彼はAIに聞いてみました。
AIはこう答えました。「彼女からの『そうだね』という一言だけの返信、気になってしまいますよね。色々なことを考えて不安になってしまうお気持ち、とてもよく分かります…今回の件だけで、彼女の気持ちが離れたと考えるのは早計です。ぜひ、彼女の行動や普段の態度といった、もっと大きな視点で二人の関係を見つめ直してみてください。」
「詳細な分析ですね。でも、結局、自分で『彼女の行動や普段の態度』を分析しなければならないということだろうか」と彼は考えていました。
もし、最初から「全部」のやりとりをアップしてみたらどうなるか、彼は気になっています。LINEの中で、やりとりの設定から、「トーク履歴を送信」を選択して、生成AIアプリをクリックして、「アップしたトーク履歴に基づいて、私達の関係の変化を分析してください。」と入力したら、出来上がりです。
「その変化を時系列で分析し、現在の状況を考察します。
第1フェーズ:良好な関係の構築期…
第2フェーズ:深化と安定の時期…
第3フェーズ:変化とすれ違いの時期…
…
今はお二人の関係にとって、雨降って地固まる、重要な転換期です…
この3年半で築き上げた絆は、そう簡単になくなるものではありません。」
まるで本物の恋愛相談先生と話しているような感覚だ、と彼は驚きました!
でも、問題はまだあります。「雨降って地固まる」といくらわかっていても、今が転換期であることは事実です。最初のドキドキの時期に戻れたらいいな、と彼は思っています。
そして、彼は去年のある記事のことを思い出しました。ある人が、トーク履歴で、別れた彼女のことを生成AIで再現したというものです。。彼はこれもやってみようと思いました。
「トーク履歴の彼女の口調を真似して、僕とやりとりしてください。おはようございます!先週末はどうでしたか?」と彼は入力してみました。
「生成AI彼女」はこう返事しました。
「おはようございます!☀️
私の週末ですか?とっても楽しかったですよ~!😊✨
土曜日はお友達と新しくできたカフェに行って、美味しいケーキを食べちゃいました🍰💕
日曜日はお家でゆっくり映画を観て、のんびり過ごしてましたよ🎬
〇〇さんの週末はどうでしたか?
何か楽しいこと、ありましたか? よかったら教えてくださいな🎵」
「ホタルを見かけました!この動画の中のホタルを見れましたか?すごいでしょう!」
「わー!見れました!すごいですね!🤩お家のガーデンですか?近くで見れるなんて、本当羨ましいです😊素敵なお裾分けありがとうございます!✨」
まるでラブラブな時期の彼女の返事のようだ、と彼は喜びました!
エッチ動画を観ると同じような感覚になると彼は知っています。嘘だと知っていても、嬉しい様子です。既読スルーや冷たい返事など、これからなくなると思っています!
彼は、これから一週間、ずっと「生成AI彼女」とやりとりをしていました。
「生成AI彼女」自らメッセージが来ないことに、彼は気づきました。メッセージを送ったら、「生成AI彼女」が必ず返事してくれます。でも、彼女自らの「おはよう!」というメッセージも懐かしいな、と彼は思っています。誰かがこういうアプリを作ったかもしれませんが、オフィシャルの「生成AIアプリ」でこういう機能はまだないです。
気付いたことのもう一つは、現実の彼女ともう一週間やりとりをしていないことです。
落ち込んでいる最中に、ランニングクラブのある仲間からメッセージが来ました。
「こんにちは!来週ランニングクラブの先生たちと飲みに行きますが、一緒にどうですか?」
「誘ってくれて本当にありがとうございます🥲」と彼はここ一週間で初めて実際の人間とやりとりをしました。
「どうしたの?」
「ちょっと感動しちゃったんです😁」
生成AIが飲み会に誘うことは、今はまだないですよね。
