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特別なケーキは優しさでできています

クリスマスイブになると、毎年思い出すことがある。

それは、もう10年以上前のこと。

就職してまだ数年の頃。

今日みたいな、ど平日のクリスマスイブだった。

普通にオフィスに出勤して、普通に仕事して。

クリスマスイブだけど特に予定もなく、
仕事が終わってオフィスを出ると、すっかり暗くて寒くて。

急いで帰宅しようと、駅に向かった。

いつもの駅に着くと、なんだか雰囲気がいつもと違う。

いつもより多い人、何かしら言っているアナウンス。

トラブルで、電車が完全に止まっていることがわかった。

そして私は、途方に暮れた。

全盲の私。

この駅までは一人で行き来できるけれど、
それ以外の駅には一人で行ける自信がない……。

電車が復旧するのを待つしかないか……。

そんなふうに考えていると、一人の年配の女性が声をかけてくださった。

「ここは今、電車が止まっているけど、近くの別の駅なら動いてるから、
よかったら一緒に行きましょう?」

寒くて暗いところに差し込んだ、一筋の光。

お言葉に甘えて、私は女性に手引きしていただきながら、別の駅に移動することができた。

そして、無事に帰宅することができたのだ。

そのときの私にできる限りの、心からの感謝を伝えて別れ際、

「これ、よかったら食べてね」

と、女性が小さな箱を手渡してくれた。

それは、ケーキの箱だった……。

そういえば、さっき駅まで歩いている途中、女性は路面に出ていたお店に立ち寄っていた。

家族のために何か買っているのかな?

と思っていたそれが、今、私に手渡してくれたケーキだったのだ……。

ピンチを助けてくれただけでなく、
さらにそんな心遣いまでいただくなんて、想像を超えていた。

その日あったこと、
帰宅してから一人で食べたケーキのことは、
たっぷりと時を超えた今でも鮮明に思い出し、
今でも温かい気配として私を暖めてくれている。

彼女の優しさと心遣いが、
当時の冷え込んだ私を、そっと掬い上げてくれた。

名前も知らない、あの人……。

けれど、多分一生忘れない彼女。

今日、またクリスマスイブに思い出し、
どこかで幸せな一日を過ごしていることをそっと祈っている。

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