204.廃校を壊さず、クラフトビールをつくる。AFTER SCHOOL BREWERYに学んだ“地域を元気にする発想”
元々、国内も海外も旅行することが好きです。
知らない土地を歩いて、その地域ならではの空気に触れて、おいしいものを食べる。
とても好きな時間の過ごし方です。
ただ、社会人になるとまとまった時間を確保することが難しい方も多いのではないでしょうか。
そんな中、先日訪れたのが「AFTER SCHOOL BREWERY」。
廃校をリノベーションしてつくられたクラフトビール醸造所です。

訪れてみると、そこには普通のブルワリーとはまったく違う空気が流れていました。
まず、校舎自体が懐かしい!
そして、足を踏み入れた瞬間に「あ、こんな空間だったな」と、どこか学生時代を取り戻す感覚。
そして、その懐かしさの中で「クラフトビール」を楽しむという非日常。
不思議なことに、遠くへ旅行したわけではないのに、旅行先で新しい場所を見つけたような高揚感がありました。
そして帰宅後、「なぜこんな場所が生まれたのだろう」と気になり、その背景を調べてみることにしました。
するとそこには、単なるリノベーション施設ではなく、地域への想いから生まれた物語がありました。
なぜ人は「廃校ブルワリー」に惹かれるのか
日本では少子化の影響もあり、全国各地で学校の統廃合が進んでいます。
役目を終えた校舎は解体されることもありますが、一方で地域の記憶が詰まった場所でもあります。
AFTER SCHOOL BREWERYは、そんな廃校を新しい価値へと生まれ変わらせた場所です。

校舎という空間には、多くの人の思い出があります。
ドキドキしながら迎えた入学式。
寂しさと期待を感じた卒業式の日のこと。
何気ない話をしながら友人と過ごした休み時間。
その日に向かって一緒に作り上げた運動会や文化祭。
誰もが何かしらの学校の記憶を持っています。
そして、学生時代って、友達というコミュニティがあることの面白さを知ったり、気になる人に会うために学校似通ってみたり、友人関係・恋愛・部活動・勉強を通じて、感情が揺さぶられ、感性が育まれる時期でもあると感じます。
だからこそ、廃校に足を踏み入れると自然と感情が動くのでしょう。
そこにクラフトビールという「大人になった今だから楽しめる体験」が加わる。

懐かしさと新しさ。
日常と非日常。
その両方を味わえることが、この場所の魅力なのだと思います。
私自身、校舎の中を歩きながら「なんだか落ち着くな」と感じました。
きっとそれは建物が素敵だからだけではありません。
自分自身の記憶と重なる場所だったからです。
最近はSNS映えする施設や最新設備を備えた施設もたくさんあります。
もちろんそれらも魅力的ですが、AFTER SCHOOL BREWERYにはそれとは違う価値がありました。
それは“物語があること”。
建物そのものがコンテンツになっているのです。
廃校をビール醸造所に変えた人たちは何を残したかったのか
調べていて印象的だったのは、この場所が単なるビール醸造所としてつくられたわけではないことです。
背景には地域資源を活かしたいという想いがあります。地方では人口減少や高齢化によって、使われなくなった建物や施設が増えています。
その一方で、新しい施設をゼロからつくるには多くのコストがかかります。
そこで注目されているのが「今あるものを活かす」という考え方です。
廃校を壊して更地にするのではなく、新たな役割を与える。
地域の記憶を残しながら、新しい人の流れをつくる。
AFTER SCHOOL BREWERYは、その実践例のひとつだと感じました。
クラフトビールもまた、地域との相性が良い存在です。

大手メーカーの商品が全国で同じ品質を提供するのに対し、クラフトビールは地域性やストーリーを大切にします。
その土地ならではの魅力を発信し、人を呼び込む力があります。
だからこそ、廃校とクラフトビールの組み合わせはとても理にかなっているのかもしれません。
訪れた人はビールを飲むだけではありません。
その地域の歴史や文化にも触れることになります。
結果として地域への関心が生まれ、人とのつながりが生まれていく。
そんな循環を感じました。
地域を元気にする方法は、新しいものを作ることだけではない
今回訪れて、個人的に大きな学びがありました。
私は両親の出身地である岩手県や福島県に対して、いつか何らかの形で地域に貢献できたらと思っています。
ただ、地域活性化というと、大きな商業施設をつくったり、新しい観光資源を開発したりするイメージを持っていました。
ですが、今回AFTER SCHOOL BREWERYを見て、その考え方が少し変わりました。
地域を元気にする方法は、新しいものを生み出すことだけではない。すでにそこにある価値を見つけ直し、編集し直すことでも地域は輝く。
廃校という誰もが知っている場所が、クラフトビールを通じて新たな交流拠点になる。
その発想に大きな可能性を感じました。
そして改めて思ったのは、世の中のサービスは「想い」から生まれているということです。
ただ利益を生むためだけなら、別の方法もあったかもしれません。それでも廃校を活用したのは、その場所に価値を感じる人がいたから。
地域の未来を考える人がいたから。
人を動かすのは建物ではなく、その場所に込められた想いなのだと思います。
AFTER SCHOOL BREWERYは、おいしいクラフトビールを楽しめる場所でした。
でも私にとってはそれ以上に、「地域を元気にする発想」を学ばせてもらった場所でもありました。
いつか岩手や福島に関わるとき、この体験がヒントになる気がしています。
