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安さという武器を奪っておいて、「味で勝負」と言われても──10月の酒税一本化の話

今年の10月から、ビール系飲料の酒税が一律になる。

ビール、発泡酒、いわゆる第三のビール。これまでバラバラだった税率が、350ml缶あたり54.25円に揃う。ビールは約9円の減税。発泡酒系は約7円の増税。ついでにチューハイも28円から35円に上がる。

財務省いわく、「似た飲み物なのに税率が違うのは不公平だから、揃えます」とのこと。

税収全体は変えない建て付けらしい。つまり、誰かの減税は誰かの増税で相殺される。全体としてはプラマイゼロ。ただし、税額が変わったからって小売価格がそのまま動くとは限らない。原材料費とか物流費とかもあるから、実際にいくらになるかは各社の発表待ち。


で、ここからが引っかかるところ。

そもそも発泡酒って、ビールの税率が高すぎたから生まれたものらしい。

ビールは昔から「贅沢品」扱いで、やたら高い税率がかけられていた。メーカーはそれを避けるために、麦芽の比率を下げて「ビールじゃないけどビールっぽい飲み物」を作った。それが発泡酒。さらにそこからも税率を下げようとして、麦芽の代わりに大豆やエンドウ豆を使った第三のビールが出てきた。

どっちもバブル崩壊後の不況の中で、「家計の味方」として広まった。

つまり、「税率が高すぎるから安い方法を考えました」というのが発泡酒の出発点。で、今回の改正は、その工夫を制度側から潰しにかかっている。

「公平にする」と言えば聞こえはいい。でも、安さで選ぶっていうのも競争の手法の1つでしょう。

なんでわざわざそれを封じるんだ、という話。

「味で勝負できるようになる」とか「品質で選べる時代になる」とか、前向きな見立ては確かに多い。メーカーも大手がこぞって「ビール回帰」を打ち出している。サントリーの金麦もキリンの本麒麟も、10月以降はビールとして生まれ変わるそうだ。

でもそれって、「安さという選択肢が消えた結果、ビールに寄せるしかなくなった」とも読める。

もし明確な違いと基準があって、その違いに応じた税率だったなら、一律にする方がむしろ不公平だ。発泡酒には発泡酒の由来がある。安さで差別化するために生まれたものを、「公平じゃないから」と一律に揃えて、差別化自体を封じる。それを「公平の回復」と呼ぶのは、ちょっと都合が良すぎないか。


もうひとつ、個人的に思うことがある。

自分はそもそもビールの味がダメだ。

ビールって、ビールがダメだったら全部ダメなんだよね。原料がだいたい同じだから、味に大きな差がつきにくい。高いのと安いの、重いのと軽いの、いろいろあるらしい。でも根っこの部分は同じ。好みで選ぶと言っても、そのバリエーションの幅はそこまで広くない。

チューハイとかワインだったら話は別で、味も度数もバリエーションが段違い。自分の好みに合うものを探す余地がちゃんとある。

「味で選べる時代になります」と言われても、ビールの味がダメな人間にとっては、その勝負のテーブル自体に乗れない。

で、その「味で勝負」の世界に全部が寄っていくわけだ。安さで選ぶ動線は細くなる。チューハイはまだ税率が安いけど、それだって今回7円上がった。

結局、制度が「こう選びなさい」を設計しにきている。

公平って、見る角度で全然違う。似た飲み物なら同じ税率が公平、という整理はわかる。でも、安く飲める選択肢を残すことだって、ある種の公平だったんじゃないか。

安さっていう武器を奪っておいて、「さあ、味で勝負だ」って言われても。

そもそもその武器、あんたたちが高すぎる税率をかけたから生まれたんでしょ、という気持ちが、どうにも消えない。



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