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ゆうれいなおとうちゃん

ねぇ、おとうちゃんはゆうれいなの?

そう、おとうちゃんはゆうれいなんだ

おとうちゃんはいつもどこにいるの?
まいにちはあえないの?まいにちまってるんだよ

空のずっと遠く… ほら、あのお月さまの
もっともっとむこうにいるんだ

おとうちゃんはひとりぼっちでさみしくないの?
たいくつじゃないの?

ちっともさみしくなんかないぞ
お月さまも お星さまも みーんな友達なんだ
それに、おまえやおかあちゃんのことを守るのにいつも大忙しだ

あっ、ながれぼしだよ!

あぁ、もうそろそろおとうちゃんは またお空に帰らなくちゃいけない

またあえる? またきてくれる?

もちろんさ、あんまりイタズラばかりして おかあちゃんをこまらせるんじゃないぞ
おとうちゃんはいつでも空から見てるんだからな

ながれぼしが またもうひとつながれると
おとうちゃんはきえたんだ


***


8月のお盆のころは、暑いし混むしで この時期に帰省することは避けていました
でもお盆がちょうど父の命日と重なって、以来 一泊でも日帰りでも なるべく帰るようになりました

けれども去年は「こっちから手を合わせるね」と母に告げて 帰省は見送ることになりました
ある時、家の中で 聞いたことのない着信音が鳴りました

はじめ何の音だかよくわからずに 、とりあえず携帯を見たけど違ってて
けれども着信音は部屋のどこかで鳴り続けています
これ何の音? どこで鳴ってるの?
耳をこらすようにして ぐるりと見回しました

家の電話の小さな液晶が光って、コッチ!コッチ!と告げていました
駆け寄って見てみると
液晶画面には『 内線3 』と表示されていて
ハヤクデテヨ!と鳴り続けます

でも子機もつなげていないし
内線なんて掛かるはずはない
こんなの初めてなんだけど……
なに なに なに?


とりあえず出てみると 無音でした
恐る恐る「もしもし」って言ってみたけど
やっぱり無音のままでした
しばらく受話器を当てたまま 耳を澄ませていたけれど
いつまでもシンとしていたので 切りました

内線・・・
なんやろ・・・

戸惑ったまま電話を見つめ 首を捻って
ハッとしました

お父さん……?
まさか…… ねぇ……
でも…… もしかしたら…… ね
そうかも…… ね

腑に落ちたというか 納得したというか
父のような気がしたのです
それは父の命日の前日でした


お父さん、
もしかして 連絡くれたん?
お盆やね、命日やね、
お父さん、帰ってくるんやもんね
大阪には 行けなくてね
ごめんね

そうか、と勝手にじんわりとして母に電話をかけました


「聞いたことない着信音やって、見たら“内線”ってなっててん… でも内線なんかないしな、どういうことやろうって…  出てみたら無言やってんけどな」

「なんや 気持ち悪いなぁ、なんか変なやつちゃうのん……いろいろ物騒やから気ぃつけなあかんよ」

「うーん……それ、お父さんちゃうかなて思ってん
お父さん わたしに連絡くれたんちゃうんかなって」

「・・・」

コノコ ナニイッテンノカ チョットワカラナイ……
母はそんな感じで沈黙してから わたしの言いたいことを飲み込んだようで

「あぁ、そういうこと〜? えぇ、お父さん……?
なんや お父さんかいな〜
お父さん…  きもちわるっ! ひゃはははー」

「・・・」


て、そんなことがありました
何だったのか、ほんとのところはよくわからなかったけど、不思議なことや説明のつかないことってたくさんあるし、その時は そういう気がしたのでした

なんか、“ 内線 ” ってところが またなんとなくそれらしいというか 何というか…… ねぇ……



今年の命日は 実家に帰って父を迎えることができました
大阪を真ん中にして 西と東に散らばっている家族全員が顔を合わせる なんとも珍しい一日となりました
父も喜んでくれたかな

あの時の着信音も、“内線”の表示も、あの一度きりです

父は無口で頑固な人でした
いいことも悪いことも あまり口に出さないので
母に「はっきり言わな なんもわからん!」ってしょっちゅう叱られてたっけな
そんなことも思い出しました

ゆうれいなおとうちゃん、
これからも見守っててよね

どうぞよい一日を、よい一週間を




#86.      『 精霊 』

⭐︎ 蜘蛛の巣に引っかかってる雨粒もここに生まれたことを証して

⭐︎ 音のなき受話器のむこうに話すれば声届くやも 父の命日

       ー ちる ー

わたしの肩にとまったコ
トンボって人懐っこいのね


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