あんぱんのことば
正義は逆転する
信じられないことだけど
正義は簡単にひっくり返ってしまうことがある
じゃあ、決してひっくり返らない正義って何だろう
おなかをすかせて困っている人がいれば
一切れのパンを届けてあげることだ…
(第1話 ドラマ冒頭)
この語りから スタートした、2025年度上半期のNHK朝ドラ『あんぱん』。
アンパンマンの作者である やなせたかしさんと、その奥さまをモデルに描かれた物語です。

時代は昭和初期。舞台は、やなせたかしさんの出身地である高知県。
嵩は、幼い時に父を病気で亡くします。
母に連れられ、高知県の御免与町で医院を営む伯父のもとを訪ねて引き取られます。
控えめでおとなしい性格の嵩は、幼い頃から絵を描くことが大好きでした。
転校先の小学校で、負けん気の強い快活な(土佐弁で “はちきん”)のぶと出会い、夢や生きる意味を探しながら、ふたりは幼馴染としてともに成長していきます。
これまでの物語の中に、心に残るセリフ、共感するセリフがいくつもありました。そのセリフの随所に、やなせたかしさんが生前残された言葉が散りばめられていました。
そして土佐弁もまた、このドラマの見どころのひとつです。方言っていいな。
*
嵩の伯父: 寛(竹野内豊)のセリフ
「嵩、こじゃんと絵を描け。
好きなものは、やればやるばぁ こじゃんと好きになる」
(3話より)
「わしはおまんらに、“あん時、ああしちょったらよかった” と 悔いてほしゅうないがじゃ。
何のために生まれて、何をしながら生きるのか、見つかるまでもがけ。必死でもがけ」
(18話より)
「泣いても笑ても陽はまた昇る。
絶望のとなりはにゃ…、希望じゃ」
(20話より)
「何のために生まれて、何のために生きるのか…
わしは思うがよ。 それは、人を喜ばせることや」
(25話より)
育ての親となった寛の言葉は、嵩の人生の糧となっていきます。
風来坊のパン職人: 矢村 (阿部サダヲ)のセリフ
「たった一人で生まれてきて、たった一人で死んでいく。人間ってそういうもんだ」
(5話より)
「どうせ一回こっきりの人生だ、自分のために生きろ」
(20話より)
やがて 戦争が始まると、人々の生活は一変し、あらゆるものを奪っていきました。
のぶ(今田美桜)のセリフ
「心に思うちゅうことを伝えんがは、思うちゃあせんのと同じことやき」
(29話より)
嵩の弟 千尋(中沢元紀)のセリフ
「この戦争さえなかったら、愛する国のために死ぬより、わしは愛する人のために生きたい」
(54話より)
嵩の亡父:清(二宮和也)のセリフ (嵩の夢の中)
「こんな 惨めでくだらない戦争を起こしたのも人間だ。でも人間は、美しいものもつくることができる。人は 人を助け、喜ばせることもできる。(中略)
みんなが喜べるものをつくるんだ。何十年掛かったっていい、諦めずにつくり続けるんだ…』
(59話より)
出征していた嵩は生還し、故郷へ戻ることができました。
嵩(北村匠海)のセリフ
「正義なんか信じちゃいけないんだ。そんなもの、簡単にひっくり返るんだから。でも もし、逆転しない正義があるとしたら… すべての人を喜ばせる正義…、ぼくはそれを見つけたい。
(中略)
何年掛かっても、何十年掛かっても、みんなを喜ばせたいんだ。そう思ったら 生きる希望が湧いた。絶望なんかしてられないって…。
だから 生きるんだ」
(63話より)
のぶの祖父 : 釜次(吉田鋼太郎)のセリフ
「 のぶ、おまんを待ちゆう人がおったら、そこに向こうて走れ。 間違うても 転んでもえい。それも全部 面白がって生きえ 」
(79話より)
長く苦しい戦争を終えました。
さまざまな出来事を乗り越えてきた嵩とのぶは再会します。
舞台は東京へ。
お互いがなくてはならない存在であることを確信し、素直な気持ちを伝え合い、ようやくふたりは結ばれました。

思いを伝えることは大事なこと。
ただ思っているだけでは相手に伝わりません。
“ あの時 実はそう思ってた… ” そう言われても、今となってはもうどうしようもないこともあるし、“ いつかそのうちに言おう… ” って、伝えられないままで終わってしまうこともあります。
“ あの時 ” はもう戻ってこないし、 “ いつか ”も もう永遠にやってこないかもしれなくて、後悔しか残らないこともあるのです。
“ 心に思っていることを伝えないのは、思っていないのと同じこと ”
のぶちゃんのセリフにもありました。
心から思っているのなら、本当に伝えたいのなら、伝わるようにまっすぐ相手に伝えたい。
でもそれには、ちょっぴり勇気が必要かもしれません。
この物語の中には、自分が受け取った言葉を、のちに大切な人へ伝えるというシーンがいくつも出てきて印象的です。
言葉も思いも巡るものなのだと改めて気付かされました。
さあ、嵩とのぶは夫婦となり、これから東京・中目黒の長屋で生活をスタートさせます。
嵩の漫画家への道もまだこれから。
この先にどんな展開が待っているのでしょう。
どんな思いが、どんな言葉になるのでしょう。
最後まで 楽しみたいと思います。

Mrs .GREEN APPLEのボーカル
大森元貴さんの出演が話題
*

戦後80年。
戦争を経て残ったもの。忘れてはいけないもの、失ってはいけないもの。
どう生かすのか、どう残すのか、どう繋げていくのか。
それは 戦争を経験していないわたしたちも、知らない、関係ないと、他人事みたいには済ませることはできなくて。 見つめることはとても辛くてしんどいことかもしれないけれど、知ること、感じること、考えることをやめてしまってはいけないのですね。
みんな平和を望んでいます。
わたしの父は1940年生まれ、母は1944年生まれ。母は広島で生まれました。
ふたりはこんな大変な時に生まれて育ったんだなと、ドラマ『あんぱん』をみながら、亡き両親のことを思います。
両親がいなければ、当然わたしは今ここにいなかったわけで、繋がれた命を、日々を、大切に生きなくてはいけないなと思います。
みんな大切なものを守りたいと思っています。
みんな大切な人の幸せを願っています。
穏やかな優しい世界になるようにと祈っています。
ドラマの大事な場面には、みんなを笑顔にするあんぱんが度々出てきました。
元気をもらう、勇気をもらう、生きる力をもらう… わたしも、やむおんちゃんのあんぱん、食べてみたいな。
ほいたらね。(土佐弁)
ほんならね。(大阪弁)
それでは。
どうぞ よい一日を、よい一週間を。
#224. 『 無題 』
⭐︎今はもう平和なんだと思ってた 令和の陰に残る焼け跡
⭐︎夏の夜の平和なはずの公園の花火のあとの焦げた残骸
ー ちる ー

第15週 『いざ!東京』より
