思いつかない|アマノ文筆クラブ作品
男は全財産をはたき、未来の「創作支援AI」を購入した。
脳波を読み取り、瞬時に歴代の文学賞を凌駕する作品を生み出すという触れ込みだ。
男はさっそく頭に電極を貼り付け、機械の起動ボタンを押した。
「SF小説の、素晴らしいどんでん返しのアイデアを頼む」
機械は静かに電子音を響かせ、思考を開始した。
しかし、数分経っても、数時間経っても、画面にはただ一言、こう表示されるだけだった。
『思いつかない』
「バカな! 不良品め!」
男は怒り狂い、メーカーに猛抗議の電話をかけた。
対応した技術者は、男の識別番号を確認すると、ひどく怯えた声でこう言った。
「いえ、その機械は正常です。未来予知の演算であらゆる可能性を計算した結果、出力しているのです」
「じゃあ、なぜ何も出てこないんだ!」
「……お気の毒ですが、演算の結果、お客様の未来に、もう売れる物語が存在しません」
(了)
こちらの企画に参加させて頂きました。
